たまには仕事をしよう
「うん、こんなもんかな」
ひと段落し俺はコーヒーをすする。
いつも遊んでばかりじゃあ駄目だからな。たまには仕事もしないと。
俺はコーヒーを飲みながら再度パソコンの画面に目を向ける。
「よしっと、あとは送信っと」
俺の基本的な職はシステムエンジニアだ。在宅で出来る職場を選んだし何より俺には若干の才能のようなものがあったらしい。
出社するのは週に1回あるかないかだ。
俺はコーヒーを飲み干してリビングに戻った。
「あれ?いない」
いつもはリビングのソファーで寝転がっている彼女が珍しくいなかった。
「冴草ちゃんもたまには仕事か?」
彼女の部屋には【はたらいてます❤︎】のプレートがかかっている。
彼女ー冴草ちゃんーの職業はジュエリーデザイナー兼製作者。結構な評判らしく月に2、3日働いて悠々自適らしい。
これは夕方まで、出てこないな。
俺はベランダにでて洗濯物を取り込み、晩御飯の仕込みにとりかかる。
「あ〜、しまったなぁ、コーヒー豆がなくなりそうだ」
うちのコーヒーは彼女のこだわりで、コーヒーミルで挽いてサイフォンで淹れている。
いつもなら彼女行きつけの喫茶店で買ってくれのだが・・・
「今日の分はもちそうだな、明日買いに行くか・・」
9時半をまわったくらいに彼女が部屋から出てくる。
「おつかれさん。いいのできたか?」
「・・・・・・」
彼女はニマッと笑い俺の膝の上に座る。
「そっか、そりゃ良かった。でもな、とりあえず何か着ような?」
「・・・・・?」
いやいや、なんで?って顔しないでくれよ。
「まぁいいか。晩御飯の準備するな」
彼女をひょいと持ち上げてソファーに転がす。
ころんころんと転げていく彼女。
「・・・・・♪」
「冴草ちゃん?コーヒー豆があんまり無いから明日、朝から買いにいこうな?」
「・・・・・!」
俺が一言そう言うと猛ダッシュでキッチンにやってきてコーヒー豆のガラス瓶をじっと見つめる。
「・・・・・・」
うんうんと頷いてなにごともなかった様にリビングへ戻っていく彼女。
多分、今日の晩の分があったからセーフなんだろうな。
夕食後、彼女はいつも通りご満悦でコーヒーを楽しみ、コンビニで買ってきたプリンに更にカラメルをかけて食べている。
どうやら満足したらしく、また俺の膝の上に戻ってくる。
「・・・・♪♪」
上目遣いでこちらを見上げて、小さな手で俺の頬を撫でる。
俺も彼女を抱きしめて薄く紅を引いた小さな唇にキスをする。
「・・・・・!」
ぎゅっと俺の背中に手を回し爪を立てて。
愛するコーヒーと甘いもの。食後のデザートは、俺なわけね。
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