[バレンタイン企画]甘すぎるバレンタイン


 2月14日、バレンタインデー。


 世の中の男たちが、妙にそわそわする日、学校にいけばさりげなく下駄箱の中を確認したり机の中を確認したり。

 会社にいけば普段は厳しい上司がやたらと優しかったりと。



 そんな何となく世間が浮かれている日でも、我が家は平常運転だ。


 ……ちーん


 すぽーん


 珍しく早く起きた(といっても昼はすぎている)彼女といつものようにトースターの戦いを繰り広げる。結果惨敗。


「冴草ちゃん、砂糖はいくつ?それと服着ような?」

「・・・・・・」


 トーストをかじりながら指で「5」。


「相変わらず砂糖入れすぎじゃないか?」


 と言いながらも角砂糖を入れてやる。


「・・・・・♪」


 ご機嫌でコーヒーを、ふぅ〜ふぅ〜してる全裸な姿に癒される。動かなかったら絶世の美少女なんだけどなあ。


 朝食を食べ終わると、彼女はキッチンに走っていき、フォンデュセットとチョコレート、マシュマロ、パンの耳を持って戻ってくる。


「〜♪〜♪〜〜♪」


 楽しそうにフォンデュセットにチョコレートを流し始め、パンの耳とマシュマロをくぐらしていく。


「・・・・・・」


 竹串に刺したそれを俺の口元にさしだす。


「バレンタインだからか?」

「・・・・・♪」


 こくこくと笑顔で頷く彼女。


 ぱく。


「うん、美味しい。ありがと、冴草ちゃん」

「・・・・・♪」


 うんうんと頷いたあと、何かを思い出したのか、またキッチンに走っていく。

 戻ってきた彼女は大福とどら焼きを持っていた。


「おいっ!?まさか……それもいく気か?」

「・・・・・・」


 真剣な表情で大福をチョコレートにくぐらす彼女。


 ぱくっ。


「・・・・・?」


 思った感じじゃなかったらしい。


 続いてどら焼きをくぐらす。

 ぱくっぱく。


「・・・・・?」


 こちらもどうやら違うらしい。

 四つん這いになって崩れ落ちる冴草ちゃん。(全裸)


「〜〜〜〜〜〜」


 何故か逆ギレして俺に飛びついてくる。


「はいはい、普通に食べればいいだろ?」


 俺は指にチョコレートをつけて口元にあてる。

 ぱくっ。


「・・・・・♪」

 これはお気に召したらしい。


 自分の指をチョコレートにくぐらしてぱくぱく食べる彼女。


「・・・・・・」


 すると何かを思いついたように俺を見つめる。

 口元のチョコレートをペロリと舐める表情が蠱惑的になる。

 ひょいとチョコレートに手をつきさすと身体にチョコレートを塗りたくりだした。


 ぺたぺたぺたぺた


「・・・・・♪」


 綺麗なデコルテに凹凸の少ない胸と、くびれた腰、すらりとした真っ白な足。にチョコレートがポタポタと滴る。


 彼女は幼い外見からは想像出来ないような妖艶な笑みを浮かべ、両手を広げて俺を招く。


「……いただきます」


 俺は彼女に近づきそっと舌を這わせる。デコルテラインから胸へ、なだらかな腰から下へと。


「・・・・・!」

 彼女が甘い吐息をもらして座りこむ。


 そして……



 出来上がったのはチョコレートまみれの絨毯。


 ……誰が掃除するんだ、これ?




 そんな甘い甘いバレンタインデー。








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