レスラーとメイドたまにゴスロリ
「ふぁ〜〜」
11時を少し回った頃に、俺はいつも通り目を覚ます。
例によって俺の腰辺りに、彼女がしがみついて眠っている。
くせっ毛の金髪を優しく撫でて、そっとその頬にキスをして起こさないように丁寧にしがみつく腕をほどいていく。
右、左、右、左、右、ひだり・・・
「おいっ!寝たふりだよな?」
ほどく側から絡みつくその細くしなやかな手を取り顔を覗きこむ。
「・・・・・・」
瞼がピクピクと動いて、俺の胸に顔をうずめる。
「仕事もないし、もうちょっと寝るか・・・」
俺は、彼女を抱き寄せてもう一度夢を見ることにした。
夕方5時頃、彼女ー冴草ちゃんーが俺の手をとって出掛けてようとせがんでくる。
「うんうん、出かけるのはわかるけど、服は着ような?」
「・・・・・♪」
ててて〜と部屋に駆け込んでいく彼女。
しばらくして、メイド服で出てくる冴草ちゃん。
メイド服とゴスロリは彼女の通常装備だ。
身長145㎝の彼女が着るとその容姿も相まってまさに人形のようだ。
因みに俺は190㎝ある。学生時代はアメフトをしていたので体格はプロレスラー並、彼女と歩くと職質されることが非常に多い。
想像してみてほしい。プロレスラー並とメイド(もしくはゴスロリ)だぞ、犯罪以外の何者でもないだろう?
「・・・・・♪」
そんな俺を他所に彼女は俺の腕にぶら下がって遊んでいる。
やれやれ、今日も俺は職質を覚悟して出掛けるのだった。
やってきたのは、家の近くにあるアンティークショップ「ハンプティ」。
ショーウィンドウから覗く店内には、ティーカップやポット、皿やテーブルに絵画や西洋の甲冑なんてものある。
からんからん。
彼女は、嬉しそうに店内に入っていく。
「こんにちは〜」
俺も彼女に続いて店内に入る。
「あら。いらっしゃい、お嬢さんに誘拐犯。今日は職質されなかった?」
そう、話しかけてきたのはこの店のオーナーで
三揃のグレーのスーツに、オールバックにセットされた灰髪、顎髭をはやしたダンディなおじさんだ。
ただ、冴草ちゃんと並んでも変わらない身長とオネエ言葉が全部台無しにしている。
「おっさん、そうそう職質なんかされないぜ。今日は2回だけさ」
俺はおっさんに向けサムズアップする。
「あんたのマンションからうちまで歩いて5分じゃないの?そんだけ捕まれば大したものよ」
俺たちがそんな話をしている間、冴草ちゃんは店内を物色してる。
アンティークショップにメイド・・・
アンティークショップにゴスロリ・・・
いつもながら完璧なマッチメイク。
結局、この日、彼女はアマゾンの奥地に住んでそうな民族の仮面を買って、ご満悦に被って帰った。
プロレスラーみたいなのと意味不明な仮面のメイドって・・・
捕まらなくてよかった。
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