12 パソコン室



 とくに参加する事のない僕は、いつも通りにパソコン室に向かっていた。


「ま、僕が関われる範囲じゃもうなくなっちゃったみたいだし」


 扉を開けて中に入ると、誰もいない。


 物語の序章はもうすでに始まっている。

 役割を持たない駒が舞台に上がる事が無いように、勇気啓区もまたシナリオに干渉する事はないのだ。


 いつも使っているパソコンの前までやってきて、椅子に座った。


 機械関係のスキルはそれなりに持っているから、パソコンの扱いはそれなりにできる。

 とりあえず自作のカメロボットを制作するくらいの腕はあった。


 小学生の日常生活で、そんなスキルが必要になるかどうかと言われたら別に、なくても困らないのだが、時間を潰す場所がたまたまパソコン室だったので、暇つぶしに色々やってる内に自然と身についてしまったのだ。


 電源を付けて、立ち上げると校内の監視カメラの映像が、画面に出現。


「ふむふむ、みんな健闘してるっぽい」


 画面の中では雪菜先生が、長い廊下を駆け抜けている所だが、途中のクラスから飛び出した選と緑花のコンビが活躍して、足止めしている最中だった。


 磨きに磨かれたケンカスキルを駆使する選を、緑花が的確にサポートしている。

 そうこうしている内に、クラスメイト達が追いつき、現場は混戦状態になっていく。


「たのしそー」


 あそ部が始まった当初は、誰もが困惑していたのだが、一週間も知ればなれたものだ。


 巧みにチームワークをくししながら、目標人物ターゲットである教師を追い詰めていく。


 だが、それでも雪菜先生の方が一歩・二歩・三歩も上手だったらしく、騒ぎを聞きつけてやってきた他の教師、吹雪先生に注意されつつも、その人を囮にして状況を切り抜けていった。可哀想。


「吹雪先生も大変だな。毎回毎回、雪菜先生に振り回されて」


 僕達の担任とは真逆である吹雪は、名前は似ているものの、至極真面目な先生であった。


 だが、ちょっと頭が固くて融通が利かない所があるためか、雪菜先生に良いように遊ばれている事が多いのだ。


「そういう所が放っておけないっていうファンも多いようだけど」


 ニッチな層に需要がある苦労性の教師は、とりあえず横に置いといて、他の場所をチェック。


 すぐに姫乃が見つかったが、まだ見当違いの方向をさまよっていたらしい。


 周囲をキョロキョロしながら首を傾げている。


 近くにクラスメイトがいたら、アドバイスしてくれたのだろうが、どうやらまったく別の方向へ進んでしまったらしい。


「あー、どうしよう?」


 どうにもできないと分かっているけれど、つい声に出てしまった。


 だが、心配は無用だったらしい。


 例のツンデレフリル少女が姫乃に話しかけているところだった。

 そして、校内の見取り図を渡している。


 音声までは聞こえないので残念だたが、「別に親切する為に渡したんじゃないんだからね」とかいうツンケンした態度だったので、流れは何となく分かった。


 それから姫乃は、見取り図を渡してくれたクラスメイトにお礼を言って、目撃情報を頼りに行く先を修正していった。


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