第6話 ほんとのゴブリン


 するとやはり、窓の下に茂るベリーの茂みに、小さくうずくまる影があった。


 あたしは迷わず火搔き棒を突きつけた。


「動くな!!」


「ヒイイイイイイッッッ!!」


 その影は、断末魔のような悲鳴をあげて、崩れ落ちた。

 え、まさか気絶したの?

 こんなことで?


 その悲鳴に、隣の窓が開く。


「ちょっと、なにごと!?」


 酒場で給仕をしているおばさんだ。

 彼女は朝番なので、とっくに寝ていたに違いない。


「あ、あたしです、すみません」


 あたしは慌てて言った。


「ちょっと涼んでたら、大泥蛙を踏みつぶしたみたいで……」


「なんだ……びっくりしたよ! もう皆寝てる時間だよ。静かにしておくれ!」


 怒られた。


「ごめんなさい」


 おばさんが窓とカーテンを閉めたのを確認してから、あたしは月明かりを頼りに、足元に倒れるを見た。



「!!」



 あたしは、魔法使いにゴブリンのようにされてしまったけど……


 あたしの足元に横たわっているのは、まぎれもなく、ゴブリンそのものだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る