第3話 嘘八百!
青年は、実は聖女を昔から知っていた、と言った。
聖女と呼ばれ始める前から。
「いつもおそばでお守りしていたのですが、今回こんなことになってしまい……」
青年は目を潤ませた。
「モンスターが出た時、僕は聖女様をお守りできませんでした。この身に代えても、お守りすべきだったのに……」
あたしはというと、同情の色を目に浮かべながら、本気でこの青年について興味を持ち始めた。
——こいつ、大嘘をついている。涙まで見せて……。あの時、こいつはいなかった。
「ああ、聖女様が苦しんでいらっしゃるかと思うと、本当にいてもたってもいられません!!」
そう言って両手で顔を覆った。
でも、指の隙間からあたしの反応をうかがっているのはお見通しよ。
同情して、何か言うとでも思ってんのね。
甘いわ。
あたしは心底同情した、という表情を作ったままで声をかける。
「まあ、かわいそうに……。本当に、何か知ってたら、ぜひ教えてあげたいんだけど……申し訳ないわねえ」
「……いいんです、どうかお気になさらず」
青年は洟をすするふりをしつつ、再び食べ始めた。
どうやら、あたしについては何も疑っていないようだ。
青年は皿の中のものをほぼ平らげ、銅貨を二枚置いて出て行った。
あたしはその銅貨を握りしめて考えた。
あいつは、もちろん聖女の護衛なんかじゃない。とはいえ、単なる冒険者にも思えない……
気をつけておいたほうがいいかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます