カルト「鼻クソ教団」ができるまで ── 鼻クソ量産史(4)
鼻クソは不健康なときほどよく溜まる。たとえば
鼻腔にかさぶたが生じると違和感をおぼえる。洟をかみたくなる。我慢できずにブビーッとやってしまえば、せっかく患部を覆っていた鼻クソ状のかさぶたがはがれる。薄く平べったい鼻クソである。いちど排出しても数時間後も経たないうちに違和感をおぼえる。洟をかめば鼻くそ状のかさぶたが手に入る。
鼻クソは生体細胞を含んでいる。すなわち広義のナマモノであるから腐敗するおそれがあった。鼻クソを平気で食うくせに根が常識人にできてる紀大は、小瓶の三分の一に達した段階で「腐敗防止」についての措置を講じた。ほじりたての鼻クソをその場で食するのであれば鮮度バツグンであるから食中毒のおそれはきわめて少ない。今回は1週間分の鼻クソを小瓶に詰めて他人に売り渡そうというのだから、万が一のことを考えて紀大は保存料をつかうことにした。食塩である。もともと鼻クソというのはあっさり塩味がするので、塩漬けにするのであれば鼻クソという素材の風味を殺さずに保存できる(のちに教団化したとき、鼻クソ貯蔵技術のさらなる品質向上をはかるために数百万円の予算を組んで研究がおこなわれたが、塩蔵よりも優れた鼻クソ長期保存にうってつけの方法を見つけることができなかった)。
もうひとつ。後年のはなしだが──派生製品としては、紫蘇と梅酢を組み合わせた梅風味の鼻クソ漬けが好評を得た。のちに、破防法適用によって教団が機動隊ならびに公安警察による強制捜査を受けたときに梅風味の鼻クソが押収されているはずで、現在も警視当局の押収品倉庫にて熟成を続けているはずだ。一般市場には出回っていないが、鼻クソ教団が解散したあとに元信者によって設立された二次組織内にて、現在も製造がおこなわれているのではないかとの見方が強い。
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