第39話 偽物の天才

 ドワーフという種族は、この世界において決して珍しい種族ではない。

 ただ他の種族と異なる点で言えば、その性格は極めて友好的。多種族との交流が貿易か戦争くらいのものしかないこの世界で、そういったのは本当に珍しい。

 ドワーフの特殊技能とされる魔法道具創造クリエイターも、実際のところは『特殊技能』というべきか怪しかったりもする。もともと手先が器用というか、材料を調達する能力というか、とにかく何かを作ることに特化した種族だ。魔道具アーティファクトだけでなく、あらゆる物を作らせても早くて高品質。人によってはたったの一晩で聖剣をも創り上げるだろうし、数時間あれば簡単な作りの家だって建てられる。

 職人種族。そう呼ばれているほどに、ドワーフという種族はモノ作りに特化した種族なのだ。


 そして、『シノビ』についても説明しておこう。

 シノビとは読んで字の如く忍ぶこと、つまりは隠密術などに長けた能力を持つビースト特有ののことだ。

 何が特異かというと、それは彼らが使う隠密術———通称『忍術』の力の源である『忍力』だ。これは魔力のように物体ではなく、精霊のように生物でもない、なんとも名状しがたいエネルギーのようなもの。そしてこの力には、できる事やできない事があやふやな所が多い。まずビーストがシノビの情報を完全に秘密していることも、その大きな原因だろう。

 ともかく、このシノビの力とビーストの特殊技能である身体能力特化スペルブーストの相性は最高に良いことだけは確かだ。


 この世界に存在する種族は、本当に数多くの種類が存在する。

 エルフ、ヒューマン、デーモン、ドッペル、ヴァンプ、ドラグーン、オーガ、ビースト、コロコナ、ドワーフ———。

 まだまだ種族は存在する。

 だが、あなたたちには今まで登場した種族や、個性豊かな登場人物たちをよく覚えておいていただきたい。


 なぜなら、この物語は急速に佳境へと突入しようとしているのだから。



   ▼



 『スコーク』は不思議な組織だと、前段階の準備の時に思い知らされた。

 調べれば調べるほどに闇に消えていく実態。調査の末、最終的に行き着いたのは『何も分からない』という事実だった。


「ノリノリなの……あんただけ……」

「聞こえない! ルールは簡単だよ、背を地面についたら脱落! 全滅したら負け! オーケイ?」


 そして今、私は理解しかけた『スコーク』の実態がまた分からなくなっていた。原因は、これから始まる戦闘が楽しみでしょうがないとノリノリになっているドワーフの男、ゴルド=コレーラだ。


 戦闘する理由はただ1つ。私たちのことを知りたいから。ただそれだけである。

 面倒くさい事この上ない。本来この勝負を受けるワケがないのだが、受けないと情報は与えないと言うのだから仕方ない。

 ああもう、本当に面倒くさい。


「……いいだろう。やるならさっさと始めるぞ」


 だからもう、さっさと終わらせるとしよう。私とキュリアで対処しきれなかった状況など、ただのひとつもない。

 

(さて、整理しよう……)


 ルールは至ってシンプル。地面に背中をついてしまったら脱落。先に2人とも脱落させた方の勝利。

 フィールドは白色町全体。だがおそらくはギルドを除くだろう。『スコーク』だって大きく目立ちたくはないはずだ。そのために人通りが特に少なくなる夜に、デーモンの男が現れたとも考えられる。

 となると、取れる戦法や相手が取るであろう戦法は———


「おっしゃ行くぞー!!」


 敵はもう待ちきれないようだ。

 まだ対策はたてきれていないが、このまま始めるしかなさそうだ。さて、敵はどうくるか。

 片やドワーフ、片やビーストでさらにはシノビだ。厄介極まりないコンビだが、付け入る隙は必ずあるはず。おそらくは、ゴルドが後方支援でフウカが特攻を仕掛けるだろう。

 だが、次の瞬間。私の当然だと考えてた予測はあっさりと覆された。


「よし行けフウカちゃん!」

「……ん」


 フウカがとんでもないスピードで、白色町の街並みに飛び込んでいく。私たちから距離を取るように、だ。

 つまりこれは……!


「しまったっ!」

「キュリアはゴルドの相手を! 私が追う!」


 すかさず私はフウカの後を追う。

 この勝負のルールは背を地面につけたら負けである事。そしてである事だ。


 フウカはビースト、さらにシノビだ。実際に見たことはないが、昔リベリアさんに教えてもらった情報によると、シノビという存在は身を隠す能力———隠遁術いんとんじゅつに長けている。

 一度見失ったが最後、ゴルドに負けることはないにしろ勝負がつくことはほぼ無い。


(いきなり敵のペースか!)


 ネコ型のビーストらしい身軽さで屋根伝いに家から家へと移動していくフウカ。このまま地上から追うのでは埒が明かない。私も魔力の床を作って大きく飛び上がり、屋根の上から彼女を追う。

 フウカはまだ私の視界に捉えてはいる。だがいつ振り切られるかは時間の問題だろう。さすがシノビといった所なのか、彼女は私よりもスピードが早い。うまく先回りをしようにも、うまく回避されてしまっている。


 私とフウカの鬼ごっこの結果で、この勝負は大きく変わるだろう。

 絶対に捕まえてみせると言う覚悟を胸に、私は夜の町を走り抜けていた。



   ▼



「さてと、あんたとオイラだけになったなあ」

「……みたいですね」


 脱兎の如く———いや、この場合は脱猫の如く、かな?———フウカちゃんは街の中へと消えていった。それを追いかけて団長さんもいなくなり、この場にはオイラと目の前にいるキュリア=シルバートだけになる。


(シルバートっていやあ、オイラのお家くらい有名な魔法学者の家系だったか)


 そんなすごい存在と今から戦えるなんて、心がざわざわする。やっぱりこういう、戦闘が始まる直前の一触即発の空気は大好きだ。自然に口角が上がってしまう。

 みんなはオイラのことを戦闘狂バトルジャンキーなんて呼ぶけど、それは全然違う。オイラの家系であるコレーラ一家は確かに有名な魔道具アーティファクト職人だ。幼い頃にありとあらゆる職人の知識を叩き込まれたっけ。


 でもある時、オイラは見てしまった。恐ろしい魔物に勇敢に立ち向かう、冒険者ハンターの姿を。傷だらけになりながらも、剣を振り、盾で受け、魔法を使い、敵を倒す。

 その姿には、無駄なものは一切なくて。一連の動きには、どこか美しさがあって。どんな状況でも、お互いに油断は微塵みじんもなくて。

 その光景は幼いオイラの瞳に、鮮烈に焼き付くようだった。


———かっこいい。


 惚れた。それはもう、ベロベロに惚れ込んだ。心酔していたと言ってもいい。

 “戦い”って、こんなにかっこいいものだったんだと。オイラの周りでよく起こるただの“喧嘩”とは比べ物にならないほど、キラキラと輝いて見えていた。


 そう見えちゃったなら、戦闘が大好きになって当然だろうが!


「じゃあ、オイラたちも始めよっか!」

「…っ」


 キュリアが持っている魔杖ロッドを構え直す。やっとやる気になってくれたみたいでよかった。そうじゃなきゃ、オイラも不完全燃焼になるかもしれない。それだけは御免だ。


 オイラは先ほどぶっ放した『光撃銃レーザーガン』をふところにしまう。この魔道具アーティファクトは威力が桁外れに強い代わりに、ぶっ放せるのは1日に1回だけだ。

 オイラの作品のほとんどが自然発生した魔力が必要。いわゆる自動充魔チャージ機能付き……と胸を張りたいが、実際のところは自然発生した魔力以外の魔力じゃ充魔チャージできないだけだ。


「なぜその銃をしまう。それで戦うんじゃないのか?」


 おっと、早速食いついてきてしまった。さすがはエルフトップクラスの魔法使いだ、とんでもなく警戒されているみたいで隙がない。

 だけどまあ、それくらいは教えてあげてもいいかな。また別の魔道具アーティファクトを取り出しながら、オイラは大声をあげる。


「まあ、さっきの時計とおんなじ! じゃあ次はこれ!」


 キュリアは天才だ。間違いなく。

 少しでも変な動きをすれば、すぐに目をつけられ見破られてしまうだろう。こっちが必死になって考えたなんて、彼女の前では無計画に等しい。


 オイラが取り出した次の武器は、もっと単純なものだ。さっきまでの1日1発の大技ものじゃない。長い時間効果が続いてくれる持続型で、むしろオイラの本領発揮はこちらだ。

 予想通りキュリアは目を細め、オイラが持つ回旋剣ブーメランを凝視している。そんな事しなくても、ちゃんと教えるのに。


「こっからはこれを使うからね! 予め言っとくけど、これに触れない方がいいよ。動けなくなっちゃうから」

「……なるほど」

「あーでも、これだけじゃないんだなあ」


 オイラはもう一回、ポケットに手を突っ込む。ちなみにこのポケットも、空間を弄って見た目よりいっぱい物が入るようにしている。空間をどうこうするのには、これ以上なく苦労したけども。

 そして引っ張り出して……驚愕させた。それも当然だ、一気に同じ形状の武器をんだから。

 それだけじゃない。最初に出した回旋剣ブーメランは、青色をしていた。そしてさっきのオイラの発言でキュリアは何かを確信したはずだ。そしてそれは、おそらく正解。さすがはキュリア、すごい推理力だ。オイラじゃ無理。

 なら、の意味だって分かるだろう。


「赤に水色、緑に白……まさか、五属性の———」

「そう。だ!」


 オイラは赤色の———炎属性の回旋剣ブーメランを投げつける。そう、この『回旋魔剣マナブーメラン』シリーズは精霊術に似ている。投げつけたそれに触れれば、キュリアの体は大炎上する事だろう。

 当然、そんな事見破られているけど。


「こんな物で…!」


 もちろん、あっさりと避けられる。

 それにご存知の通り、回旋剣ブーメランというのは投げれば帰ってくるものだ。彼女も当然知っているから、これもまた簡単に避けられる。


(じゃあこれは、分かるかな!?)


 続いて、緑色の回旋魔剣マナブーメランを投げる。

 これを避けるか、それとも———


「【強旋風パワード:ウォエルウィンド】」


 キュリアは自身の周りに大きめな竜巻が発生する。なるほど、避けるのが面倒で叩き落としにきたか……てことは、やっぱ気付くかぁ。


 強旋風パワード:ウォエルウィンドによって、緑色の回旋魔剣マナブーメランの軌道は大きく外れ、あらぬ方向へと飛んでいく。

 ただし、回旋魔剣マナブーメランは必ずオイラのところに戻ってくるようになっている。


(……)


 予想外のところへ飛ばされた回旋魔剣マナブーメランは、最初に投げた回旋炎剣レッドブーメランと衝突。起動が大きく歪んだ2つの回旋魔剣マナブーメランが、帰り道でキュリアに衝突することはないだろう。

 誰だってそう思う。彼女だって例外じゃない。


 その瞬間、回旋炎剣レッドブーメランの軌道が大きく、不自然なほどに捻じ曲がり、キュリアにまっすぐ向かっていく。しかも後方からだ、基本的に回避不可能。

 これは緑色、回旋風剣グリーンブーメランの力のおかげだ。だけど、これも読まれていたみたいで。突然彼女の後方に現れた黒色の壁によって、回旋炎剣レッドブーメランは弾かれてしまった。


 …ちょっと待って。黒色の壁ってなんだ!?

 え!? 何ソレ何ソレ!?

 知らない知らない!

 えーっ!?!?!?!?


「ちょ、なんだよそれ!? 何魔法!?」

「何って……知らないのか?」

「知らないよ! 闇魔法とか!? 黒色だけに!」

「……敵に教える必要はない」

「ケチ!」


 しょうがない、もう一回させるしかないか。オイラは帰ってきた2つの回旋魔剣マナブーメランをキャッチして、どうやって攻めるかを考える。

 風魔法の力を使って回旋魔剣マナブーメランの軌道を変え、予想外の方向から攻撃を当てる。最初から見破られてたんじゃ仕方ない。やっぱりとんでもない人だ。


「なぜ、自分の手をバラした」

「……えーなんのことかぜんぜんわからないなー」

「ふざけるな。貴様が『触れないほうがいい』などと言わなければ、今の攻撃でも十分私にダメージを与えられたハズだ。なぜバラした」

「………」


 うわあ。もうやだ、この人怖い。

 なんでもかんでも見抜いてくるじゃん。


「……面白くないからだよ」

「面白くない…?」

「不意打ちしたとしても何も面白くない。それどころか、オイラにとってそれはオイラの理念に反するんだ」

「貴様に理念がありそうには見えないが」

「戦闘と喧嘩は違うんだ。戦闘は相手との読み合いだからね、そこから織り成す渾身の一撃が大好きなんだ。だから読み合いにするためにヒントを言っただけ」


 よし……話してる間に次の手は決まった。

 考えれば分かることだけども、オイラの5つの回旋魔剣マナブーメラン攻撃には、それらを自在に操ることができる回旋風剣グリーンブーメラン肝心かんじんかなめだ。

 それを取り上げられれば、敵に攻撃を当てることが難しくなる。


「じゃあお喋りはおしまいっ! じゃあ行くよ!」

「来い、ゴルド=コレーラ!」


 オイラは全ての回旋魔剣マナブーメランを一斉に投げつける。これがどういうことか、キュリアには分かるはず。

 彼女は確かに天才だ。オイラのような『偽物』とは全く違う、紛う事なき『本物』だ。だから分かるはず。


(……


 確かにキュリアは『本物の天才』だ。すっごい陳腐な台詞だけど、誰もが認める天才。それが彼女だ。

 だが、どんな天才にも大なり小なり『弱点』がある。彼女の弱点は、前もって聞いている情報から当たりはつけている。さすが魔法学のエキスパート、桁外れの注意力や分析力、そして推理力をお持ちだ。それはこの戦闘で十分に分かった。


「【重風切ブラストナイブズ】!」

「おっと!」


 だから、回旋風剣グリーンブーメランだけはオイラが自在に操っている事だってお見通しなわけだ。

 回旋風剣グリーンブーメランと魔力の糸で繋がっている右人差し指を下に降ろし、キュリアの魔法を回避する。オイラ自身が攻撃を避けるのも忘れない。


 彼女の弱点は、敵の思惑を絡めとり逆手にとって騙し勝つための方法を思いつく事に慣れていない。『作戦』を瞬時に立てられない事だ。

 もう彼女もなんとなく分かっただろう。

 そう、その通り。オイラたちの狙いはキュリアと団長さんを分断させ、協力し合わせないようにする事だ。そうして初めて、こちら側に勝機が芽生える。


「そぉれっ!」

「くっ…」


 回旋風剣グリーンブーメランを操作して、他の回旋魔剣マナブーメランと一緒に5方向から攻める。前後左右と上から複雑な軌道を描かせ強襲を仕掛けるなんて、オイラにとっては簡単な事だ。

 それに、上方向からくるのは回旋光剣ホワイトブーメラン。それを思いっきり光らせてキュリアの視界を一気に悪くする。

 さあ、オイラの【五点魔撃マジックピラミッド】をどう避けてくるか…?


 もちろん、『二手に分かれて戦力分断させよう作戦』は即興で考えた物じゃない。予め彼女たちと出会う前から考えていた作戦だ。

 本物であろうと偽物であろうと、天才はその才能ゆえ『完璧な予想外』に弱い。基本的になんでも分かってしまうからこそ、異次元からの刺激に弱いんだ。

 そんな光景を、オイラは何回も見てきた。だから分かる。


「【次元超越ディメンション】ッ!」

「なんと!?」


 いきなり地面から真っ黒な弓矢が出現し、次々とオイラの回旋魔剣マナブーメランを打ち落としていく。そんな事じゃ回旋魔剣マナブーメラン自体に影響はないが、九割九分当たる攻撃を軽くいなされてしまった。

 当然、オイラの目ん玉はひん剥くを通り越してぐるぐると宙をまわりそして逆に元の位置に収まった。


 ……ね? めっちゃ弱いでしょ?

 オイラは自分にツッコミつつ、帰ってきた回旋魔剣マナブーメランを手に収める。

 だけど、これでキュリアの謎の能力がようやく分かった。正直、自分で思いついておいて信じられないくらい馬鹿馬鹿しい答えだけども。もしこれが本当なら……これ以上、面白いことはない!


「何それ何それ! もしかして、その魔杖ロッドって書いたモンを具現化できるのっ!?」

「………」

「ああ言わなくていいぞ! 違ってても面白いし!」


 まあ、言われなくても当たりってことは分かるけども。キュリアさんはなんというか……素直すぎる。表情に出てるもの、バレたって言ってる。

 魔杖ロッド魔道具アーティファクトの合体作品かー、それに絵を具現化するなんて! やっぱり本物の天才は凄い。息をするように凡人の考えを飛び越えていく。

 きっと、何年もの歳月を捧げて作ったものに違いない。それとも、案外あっさり完成させちゃったのかも。


「……【強重光槍パワード:ブライトランズ】」

「くう、目が…!」


 キュリアの魔杖ロッドに備え付けられた魔石コアが赤く光る。そして、強すぎる光を放つ槍を何本も生成し、そして当然それらはオイラに光速で向かって来た。

 光魔法は物理ダメージがない。主に闇属性の魔物、例えば不死属性アンデッドにぶつけて初めてダメージがあるものだ。そして当然オイラは不死属性アンデッドなんかじゃない。だから避けなくたって問題は———


「———バ、【防御壁バリケード】っ!?」


 直感のような嫌な閃きがオイラの背中を駆け抜ける。オイラはとっさに全ての回旋魔剣マナブーメランを前面に展開し、回転させることで防御する。

 その瞬間、オイラは閃きの正体を見た。


(これは……雷っ!?)


 そして理解した。

 光で見えなかったが、雷属性の槍……言うなれば、【雷槍ボルトランス】が内蔵されていたというわけだ。

 でも、キュリアの行動に2種類の魔法を発現させるような仕草はなかった。つまりは———


「これ、オイラの戦法をヒントにしたってわけ?」

「成長させて貰った。『二属性魔法デュアルマジック』など初めてだが、なんとかなるものだな」

「……へへっ」


 二属性魔法デュアルマジックを使ったのが初めて? 馬鹿め、こちとらそんなの聞いたこともないんだぞ。それどころか、全世界のみんながそうだろう。

 たった1種類の魔法を発現させるのにも、それなりの集中力が必要なのに2種類の魔法を同時にするなんてまず無理だ。例えるなら、息を吸いながら息を吐けと言われているようなもの。

 それを、『やってみたらできた』だって?


(本当、笑わせてくれるよ……)


 これだから天才ってやつは。

 なんの前触れも、伏線も、努力も、エピソードもなく、ぐんぐん階段を何十段と飛ばして進んでいく。

 まったく……反吐が出るほど、憧れちゃうよね。


「いいよ……望む所だ」

「……? なんか言ったか?」

「いーやなんも! こっから本気で行くからね! 捌き切ってみせよ、オイラの連撃を!」


 オイラは『本物の天才』が、恋焦がれてしまうほどに………大嫌いだ。

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