第38話 暗闇

「……行きましたかね」

「ええ。行っちゃったわね」


 エリーザとキュリアが、ギルドを飛び出した少し後。

 ギルド内のどんちゃん騒ぎは収まるどころか、テレッタ=コーズという団長討伐のチャンスが到来したのをきっかけに、さらにボルテージが上昇していた。

 その片隅で、2人の男女がひそひそ話をしている。


「たいした時間、稼げませんでしたね」

「大丈夫よ。ミルタ君も良い妨害だったわ。それに、シアノ君なら上手くやるわよ」

「そうだといいんですが……」


 2人を飲み会に再び引き込もうとした女性冒険者ハンターの1人。そして、エリーザと衝突した1人の男の子。

 その正体はどちらも『スコーク』のメンバーである、エリジェント=ヴィールとミルタ=ケールスだったのだ。


「それより、私たちも抜け出さないといけないわね。厄介な男もいるし……」


 エリジェントがなおも盛り上がり続けるどんちゃん騒ぎの方を向いて、ため息まじりに呟いた。

 その方向には、大量の冒険者ハンターたちにしつこく絡まれ悲鳴を上げているトロア=ガネッシュの姿がある。


「見つかったら面倒よ。さっさと行きましょう」

「はい……では、さっそく———」

「何こそこそ楽しんでんだ混ぜろォ!」

「「げ」」


 その時、こそこそと話す2人がドワーフの冒険者ハンターに見つかってしまう。いうまでもなく、厄介ごとの種である。


「おねショタの現場を発見しましたァーーー!」

「何ィ!?」

「放っておけねえなそれはァ!」

「乱入される覚悟はあるかァーー!」

「「「「「貴様ら止まれぃ!」」」」」

「誰だお前らは!」

「おねショタ警備団だ! 『尊さ』を邪魔する奴は排除する!」

「ただの過激派だ! 殺せえ!」

「「「「「うおおおおお!!!」」」」」

2人尊さを守りきれぇ!」

「「「「「やあああああ!!!」」」」」


 2人はすでに、その場にはいなかった。


「……ん? あの人、どっかで見た気がしたんスけど……気のせいッスかね」



   ▼



 私たちが初めてこの白色町を訪れた時、テレッタに注意されたことがある。

 多くの冒険者ハンターが生活している白色町とはいえ、あくまでもここは迷宮ダンジョン密集地帯である白の大地スカル・メイズの一角。夜中に出歩けば、未知のモンスターに襲われる可能性は十二分にある。もし勝手に出歩いて死んじまっても知らねーぞ、と。

 そして、現在時刻はまさに夜中。本当は外には出ていけない時間帯だ。


(もしや、釣られたか…?)


 逃げるデーモンの男を追いかけながら考える。テレッタは私たちの様子から状況を察してくれたようではあるが、あの男の———『スコーク』の考えが読めない。

 なぜ、今になって私たちの前に姿を現した? さらにあの男は、私たち全員が顔を知っている唯一の人物だ。なぜわざわざあの男を配置した?


 決まっている。『スコーク』は、私たちに何か用があるということだ。

 だから、私たち3人にしか分からないサインを出したのだ。


(このまま、あの男を追ってもいいのか……?)


 キュリアの表情を横目でみる。真剣そのもの、といった感じだ。純粋無垢な眼差しで、しっかりと標的を見つめている。罠の可能性を、排除してしまっている。

 というより、もし彼女に止まるよう言っても聞かないだろう。キュリアと少年の仲は、それほどまでに良いものになっていたらしい。

 とはいえ、私とてそれは同じ。わざわざ向こうから、特大の手がかりを投げ渡してくれたんだ。みすみす見逃す道理もない。


———私たち『スコーク』は、この仕事から完全に手を引く。


 ファーザーと名乗る謎の男はこう話していた。

 仮にも『スコーク』のリーダーを名乗った人物だ、あの言葉が嘘でないなら罠など仕掛けていないはず。逆にいえば、罠があれば嘘だったという事になる。

 ひょっとしたら、『スコーク』を信用できるかどうかを見極めるチャンスになるかもしれない。


 そういうことなら、なおのこと追跡をやめる必要はなくなった。

 デーモンの男は私たちと一定の距離を保って走っている。もともと私たちエルフは筋肉が発達しない。そして以前、あの男を捕獲した時に調べた限りでは、私たちの走りで追いつける男でもないことは分かっている。


 いいだろう、素直に釣られてやるとしよう。

 男は時折、小道に入りながら私たちを撒くフリをする。そして最終的には大通りにまで追いかけてしまっていた。男の逃走先は、この白色町の出口。

 このまま白色街の外にまで行ってしまうとするならば、流石にマズい事になるのかもしれない。このまま追いかけるべきか、それとも出直すべきか。


 その時だった。

 突如として、。男が物陰に入ったとか、いつかの機械人形アンドロイドのようにゆらりと消えたわけではない。当然、パッと消えたのだ。


(ッ!?)


 当然、私たちはブレーキをかけて立ち止まる。

 私はてっきり、このまま白色町の外まで行ってしまうものだと思っていた。だというのに、それを待たずしての消滅。

 しかもそれだけではない。周りの風景に謎の違和感を感じる。まるで、とてもよく似た別の空間に飛ばされたような感覚だ。

 何がどうなって———


「隊長後ろっ!」

「!」


 キュリアに言われて慌てて振り向く。

 そこあったのは、町の景観を全て覆い尽くすほどの光。馬鹿でかいレーザーが、もう1秒も経たずして私たちに直撃しそうなほど迫っていた。


「【堅氷壁ハード:アイスウォール】!!」「【魔壁】!!」


 キュリアが魔杖ロッドを赤く光らせて生成した厚い氷壁に、私の魔力でコーティングし強度を上げる。瞬時に判断して対処したにしては、かなり強固な壁を貼ることができたと思う。キュリアが独自に素早い魔法発現の方法を編み出していなかったら、おそらくは直撃していたことだろう。

 ただ、ここまでしたというのに氷壁にはヒビが走り始めている。光線はまだ消滅する様子も見えない。このままでは押し切られるのも時間の問題だろう。


(なんてパワーだ……!)


 氷にヒビが入ったところから重点的に魔力を直接コーティングし、氷壁の高度の底上げをする。キュリアは氷壁の維持に精一杯の様子だ、このままでは…!


 そう思った矢先、唐突にフッと光が消える。短い間とはいえ強烈な光を浴び続けていたせいか、レーザーが消えた後はギルドを飛び出した直後よりも、よりいっそう白色町が暗く見えた。

 そして聞こえる、1組の男女の声。


「うおおっ!? マジかよ耐えやがったぞ!?」

「ゴルド……うるさい……」

「いやあ、おっかしいなあ。オイラの作品なのになあ」

「慢心……」


 身長は、どちらも私と比べて少しだけ低いくらいだろう。むしろ、男性の方が身長は女性よりも低いようだ。

 その2人が私たちに攻撃を仕掛けた張本人であることは明白だった。


「誰だお前たちは。もしや、スコークの人間か!」


 キュリアが声を張り上げる。

 彼らと私たちの距離は大体10mくらい。お互いの声は十分に届いている。


「その通り! オイラたちはお前たちに用がある!」

「うるさい……」

「仕方ないだろ! 微妙に遠いんだからよお!」


 先ほどから大声を張り上げている男性は……もしかして、ドワーフだろうか?

 ドワーフといえば、体毛が多種族より濃く、創作活動が得意な種族だ。

 その特殊技能は魔法道具創造クリエイター。読んで字の如く、魔道具アーティファクトを作るのが一番うまい種族だ。その腕前は、世界中からドワーフが作った魔道具アーティファクトを求められるほど。そういう意味では、貿易が最も盛んな種族であると言えるだろう。

 作務衣のような格好をしているが、ずいぶん小柄のようだ。それに体毛もかなり薄い。子供なのだろうか? それとも……


 そして、その隣いる女性はビーストだろう。耳の形から察するに、ネコ型か。口元を黒い布で覆っている上に静かに喋るから、よく聞こえない。

 ネコ型のビーストは聴覚に優れているが、実はそれだけではない。身体能力や柔軟性でもビースト1の実力を誇っている。一番厄介な身体能力特化スペルブーストかもしれない。

 とても動きやすそうな、特殊な衣装を着ている。色も黒を基調として作られているようで伸縮性がとても良さそうだ。ただ、露出も比較的多めだ。あの服装、何処かで見たことがある気がするが……。


(魔道具に、身体能力……)


 なんにせよ、厄介なペアだ。ドワーフ印の魔道具アーティファクトをビーストに持たせれば、その脅威は相当なものになる。今まで出会ったスコークの連中とは違い、真正面から戦いを挑むペアとみてもいいだろう。

 ともかく今は情報だ。私は彼らに尋ねることにした。


「それで! 目的を話せ!」

「おーっとその前に! まずはオイラたちの自己紹介だ!」

「じ、自己紹介…?」

「おうよ! オイラはゴルド=コレーラでい!」

「コレーラって……あの!?」

「知ってるんですか、隊長」


 私は驚愕する。

 コレーラ一家といえば、ドワーフの中でもトップクラスの魔道具アーティファクト作家だ。その威力は、全ての魔道具アーティファクトの中でも桁違い。

 なるほど。どおりであの光線、あんなにも強かったわけだ。むしろ、耐えられたのは奇跡だろう。


「お! 知ってんのか! まあどうでもいいけど!」

「だから……うるさい……!」

「あ痛ーッ!? ちょ、刺すなって!」


 ……なんだか、既視感を感じる二人組だ。正確には、私の部下の2人。

 だが、彼女がゴルドに突き立てた武器を私は知っていた。持ち手は輪のようになっていて、そこに白いものが巻かれた棒状のものが付いている。その先には、刺す斬る掘るなどの汎用性の高い刃物があった。

 あの武器の名は、『クナイ』だ。


「まさか、そのビーストは———」

「お、さっすが隊長様だ! そう、フウカちゃんはビーストでも珍しい『シノビ』の才能を持った娘なのさ!」

「馬鹿……バラしてどうする……」

「いいじゃん別に!」


 シノビというのは、私たちエルフで言うところの精霊術者に近い存在だろう。しかし、シノビがどのような能力を持っているのかは定かではない。

 いくつかの事例はあるものの、彼らの扱う特別な力。通称『忍術』には底が見えないほどの可能性を秘めているという。ひょっとすると、彼らシノビにも、その力の限界を知らないのかもしれない。


「…それで! 用件というのはなんだ!」


 このまま放っておくと、なかなか話が進みそうにない。というより、もう既にネタの香りがしてきた。それは今はいらないので、私は声を荒げる。

 じゃれあっていた2人も、我に帰ったように話の続きを再開させてくれた。


「メッセージ……伝えにきた……」

「メッセージ?」

「んじゃ言うぞ! 『明日頃に大きな敵が攻めてくるはずだ。戦闘準備を固めておいて欲しい』! 親っさんからだ、確かに伝えたからな!」


 大きな敵? 何を言っているのだろうか。

 それだけではなんの事かわからない。私は聞き返した。


「なんの事だ、敵とは誰のことだ!」

「オイラも詳しくは知らねーんだって! 明日になれば分かるっしょ!」

「は…?」

「んじゃ、もう1つ! こっちがメインだ!」


 私たちの話を聞かずに一方的に話し続けるゴルド。

 一通り話し終わらないと、まともに会話をしてくれなさそうだ。何か言いたげなキュリアを手で制しながら、ひとまずは話を聞くことに———


「決闘しようぜ! ビバ、殺し合い!」

「「ちょっと待てッ!!!」」


 我慢できなかった。そりゃそうだ、いきなり「殺し合いしようぜ」なんて言われたら誰だったそうする。

 彼らの目的はなんとなく分かった。間違いなく、ファーザーからの伝言がメインだったはずだ。なぜなら、殺し合い云々の時にフウカ———あのビーストの名前だ———が驚いていたからだ。


「どういうことだ!? なぜ戦わなきゃならない!」

「だってオイラ、お前たちのこと知らんもん! よーするに、力試しをしときたいの!」

「私……手伝わないからね……」

「頼むよフウカちゃん!」


 フウカがゴルドの元を離れようとして背を向ける。だが、ゴルドは彼女の服を掴み説得を始めてしまった。

 こちらとしても、決闘を受ける理由はない。それはキュリアも同じだったようで、はっきりと断る。


「ふざけるな、貴様らと闘う気などさらさら無い!」

「えー! だって戦いたくって、こんなものまで使ったんだよ!?」


 そう言って、ゴルドは懐からあるものを取り出す。

 遠目でもはっきりわかる大きさだ。それは壊れた懐中時計のようで、そこらのものと比べてかなり大きい。

 当然、それが普通のものであるはずがない。そして私は、先ほどの奇妙な現象の正体に感づいた。


「そうか、それは……魔道具アーティファクトか」

「ぴんぽ〜ん! これはね、5秒間だけ任意の対象の時間をとめる作品さ! まあ燃費が悪すぎて、もう明日まで使えないけどね!」


 先ほどは、私たちの時間だけを5秒間止めたということか。どおりで周囲の風景に違和感を感じたわけだ。

 だが、それが闘う理由になるわけがない。


「知るか! それより、エクリアはどこだ! 無事なんだろうな!」

「大丈夫……ちゃんと無事……」


 最初から無事だと分かってはいたが、それを聞いて私はほんのちょっぴりだけ安心する。

 だが、それで満足する私やキュリアではない。


「エクリアは何処だと聞いている! 答えろ!」

「えーっとね……あ」


 ゴルドがとてもいやらしい笑みを浮かべる。その表情は、悪戯を思いついたトロアとそっくりだ。とてつもなく嫌な予感がする。

 そして、その予感はまたもや当たってしまう。


「じゃあ、オイラたちに勝てたら教えてあげる!」

「貴様…ふざけてるのか?」

「大マジよ! ねー、フウカちゃん!」

「だから……手伝わないって……」

「そこをなんとか! マシュマロいっぱい買ったげるから!」

「………今回だけ……ね」


 フウカも乗り気になってしまったようだ。マシュマロで簡単に釣られてしまって、それでシノビが務まるのだろうか。

 しかし、困った。私たちが欲しいのは少年の情報だ。そのために危険地帯である白の大地スカル・メイズまでやってきている。


(………………………………………………………仕方ない)


 こうなったら、受けてやるしかない。

 それしか少年の情報を得る方法がないというのなら乗ってやる。こんなことなら、トロアも連れてくるべきだったか。


「キュリア、ここは受けるぞ。情報のためだ」

「……分かりました」

「やったあ! それじゃあ始めよっか!」

「ノリノリなの……あんただけ……」

「聞こえない! ルールは簡単だよ、背を地面についたら脱落! 全滅したら負け! オーケイ?」

「……いいだろう。やるならさっさと始めるぞ」


 その時、とこかで大きな破裂音がする。

 まるでこの試合のゴングを鳴らすかのように。


「おっしゃ行くぞー!!」


 こうして、なんとも迷惑な戦いは幕を開けたのだった。

 2対2の市街地戦。こんな戦いは、これが最初で最後になることを祈りつつ。



   ▼



「はあ、はあ………ま、ここまでくりゃいいだろ」


 オレは白色町にある民家の間、小道でようやく足を止める。

 リーフに追われるなんて体験は初めてだ。もう2度とないことを心から願う。


「にしても、ゴルドのやつ。『戦いたいなあ』って言ってたが……まさか本当に戦ってんじゃねえだろうな」


 ゴルドは少々、戦闘狂バトルジャンキーなところがある。なのにその相棒はスコークの中でも大人しいフウカだ。1番ミスマッチだと思う。


(相性最高なのに相性最悪とは……やっぱ面白えわ)


 まあ、元々フウカはアイツのパートナーだった。フウカも成り行きなら仕方ないと割り切ってくれちゃいるが、いつまで耐えられるか見ものだな。

 確か、シュウはジジイんとこで修行してんだったか。オレもその場所に向かうため、小道を抜け大通りに出る。その時だった。


「シアノ=スタッカー……やったな。確か。」

「!?」


 背後から、知らない男の声。

 オレは反射的に振り返りつつ距離を取っていた。

 こんなこと、前にもなかったか?


「始めましてやな。シアノはん」

「……アンタ、誰だ?」


 そこにいたのは、特徴的な服装をした男だった。

 皮か何かでできているのか、テカテカとした黄色いジャンパーに無駄に装飾の多い白シャツ。そして黒い長ズボンには、武器のようなものが左右に1つずつ装着されているのが見えた。

 髪の毛が黄色に染められているやつなんて白色町にはいないし、明らかに冒険者ハンターって感じの服装でもない。よそ者だ。


「ええやん、そんなんは。それより、ワシの用件の方が気になるんとちゃいますの」

「それもそうだな。もしかして、聞かせてくれんのか?」

「ええで〜。減るもんやないしな」

「ほー、お優しいな」


 聞かなくたって分かる。

 この男は、


(先手を打つ……)


 俺は幸運にも《毒》の特異魔法を発現させている。真正面からの暗殺にぴったりだ。気付かれないように、無色透明の毒を放出する。

 そして、それと同時に相手をよく観察するのも忘れない。敵の種族によって対処法を変えるのは基本中の基本だ。

 そして……気付いてしまう。


「オマエまさか———」

「ヒヒッ」


 そして、男は武器を引き抜きオレに向かって走り出した。

 武器は小型だ。だが、形状を見るに切るだとかのものじゃない。何かを発射するものだろう。

 その武器のことを、前にジジイから聞かせてもらったことがある。


 だが、無駄だ。オレにたどり着く前に、この男は動けなくなるだろう。オレの周りに散らばっている神経毒によって。

 この毒魔法の強力さは、リーフの連中を見ても明らかだ。


「甘いで!」


 男はその武器から、炎を放出する。それを見たオレは、思わず舌打ちしてしまった。

 火は毒にとって邪魔だ。このままでは、男に接近を許してしまう。


(やはりそう上手くはいかないか!)


 こうなったら直接当てるしかない。

 正面きっての戦闘は苦手だが、こうなっちゃしょうがねえ。


「【毒針グリーンスパイク】!」


 魔力を一点放出し、男を直接突き刺す作戦にシフトする。オレ唯一の技らしい技だ。

 まさか炎を自由自在に動かせるわけじゃないだろう。だから、その隙間を縫うようにオレの毒針グリーンスパイクは伸ばしていった。

 これをまともに食らえば、生きていられるかの保証はない。オレが即座に毒魔法を抜けば問題はないが。


「ヒヒッ。だから甘えのよ、シアノはんは」

「なっ…!?」


 背筋が凍った。

 炎がゆらりと蠢き、まるで自分の意思があるかのように動き始める。

 そして、オレの毒針グリーンスパイクを相殺させてしまう。馬鹿な、そんなことがあるわけがない。こいつらにそんな力があるわけがない。

 感覚が引き延ばされる。時間が静止する。

 そして、オレの脳は一つの答えを導き出してしまっていた。


(まさかっ! ———)

「さいならや。シノアはん」


 男は武器をオレに向ける。その距離、わずか20cm。

 耳をつんざくような衝撃音。

 目の前いっぱいに広がる花火。


 そして———暗闇。

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