二人組の行き先は?

さかした

第1話

駅前の人だかり。

ここにはスマートフォンをいじりちらす姿が数多く垣間見える。

その中に一人、立派な金髪ブロンドを背中に垂らし、碧眼で顔の整った女性がいた。メアリー・スーだ。もうかれこれ十分以上もそこを離れていなかった。

どこかじりじりとした様子だ。意を決したかのようにスマホを操作すると、

誰かに向かって電話をした。男が出た。

「ああいけない、今行くからちょっと待っていてください!」

開口一番、男はそう言った。

「いえ、ダイジョウブです。駅に着いてすぐ、改札口出たところにいますので

ヨロシクお願いします。」

どこか事務的なやりとりが交わされた後、一転して何かに思いを馳せるように

スマートフォンを見つめる。もうすぐ会える。

しばらくして、彼が電話口で告げた時間にさしかかって来た。

ロータリーにはバスと、ときどき乗用車の往来があるだけだ。

そこへ突如として、軽トラックが入ってきた。

こんな駅前ロータリーに珍しい、と眺めていると、中の人が手を振っている。

え?ワタシ!?

呼ばれるままにその軽トラックに近づくと、その人こそが電話の彼であった。

「失礼シマス。」

その彼は、軽トラックにはとうてい似つかわしくない

短身丸顔の、やや痩せこけた男だった。

「あ、あまり都心では、軽トラックで送り迎えする人、見かけないと思うのですが

まあその、仕事で使うのでして…。」

「とりあえず駅に着いたらその…、あのそば屋に行きますか?どこか観光するに

しても、腹ごしらえも必要でしょうし。」

と言った直後、何を思ったのか「空腹でもあるでしょうから。」と言い直した。

あのそば屋のことは、電話口でも話し合っていた。この近辺ではだいぶ有名どころのようだ。大通りに出てだいぶ直進した後、

途切れ途切れにつながっていた会話もようやく終わるときが来た。

駐車場に入り、こちらです、と案内されてそば屋に入る。

ガタガタっと言う音とともに自動ドアが開くと、中からは久しぶりだね!

と言って抱擁される。思わず、目が見開かれた。父だった。同じ金髪、長身であるその身は、和を印象づける七分袖の紺の衣服で、きちんと整えられていた。

「もう、いきなり和食の料理するって言って急に外国に行っちゃって!」

啜り上げたその顔を眺めてみると、目に涙が溜まっていた。



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二人組の行き先は? さかした @monokaki36

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