玉梓3 海の神

富士山地下の魔界に封印された犬士達。


犬影は富士山頂の出入口から落下しながら、

減速しようかと縦穴の壁に近寄っていく。


しかし縦穴はどんどん狭くなってきていた。

仕方なく通り抜けきってから、むささびの様に滑空した。



薄暗い魔界の天井で土がバラバラ降って来る元出入口。


下から吸血鬼や陽子天狗がやって来て、

上方向に穴を掘ってみるが掘った分だけ土が盛り下がって来る。


上方向に穴を掘るのは体力を使う。

疲れた陽子が珠転送で狛ちゃんの元へ戻ってきた。


陽子「疲れました。掘っても無駄みたい。」


乙姫『今、珠転送して来た?』


陽子「はい、でもネーバ星には転送できません。」


犬神「残りの珠なら狛ちゃんがまとめて持ってるよ」


乙姫『狛ちゃん、珠を出してみて。』


狛ちゃん『ありがとうございます乙姫』

謎の感謝と共に八つの珠を出した。


ネーバ星に残したタルナーダの信の珠を除いた仁義礼知忠「真」考悌の珠。

それを竜の落とし子が飲み込み始めた。


全ての珠を飲み込むと竜の落とし子が本来の乙姫に戻る。

乙姫は玉手箱を持っていた。


玉手箱を開けようとする。


犬神「それ開けたら爺にならない?」


乙姫「今ここに居る全員不老です」


玉手箱を開けると煙が出た後、水があふれ出てくる。

海のどこかにある竜宮城から海水が転送されて来ていた。


海水の出る勢いはどんどん増して、みんな流されかけている。


東犬は土俵結界で耐え、飛べる者は上空へ避難を始める。

狛ちゃんはショートしないようにシャットダウンを開始した。


飛べない犬神、犬塚、里見はタルナーダ、陽子でなんとか持ち上げた。


海水は無尽蔵に転送され水かさが増す。

それは玉梓という化け狸の体内を、海水が満たす事でもある。


ほぼ海となった魔界にまだまだ海水が送られてくる。

犬神「溺れないかな?」


亀姫「私に任せてください」


とうとう全て海に沈み河童に化けた陽子以外、

皆息を止める。


海中で耐えるみんなの下を亀姫が通ると大きな光る泡が無数に発生した。

泡はみんなに引き寄せられるように移動し呼吸を助けた。


犬影は最初、水遁術で呼吸していたが、

海水で満たされた時は天井に同化し、

浮いてきた気泡で息をしている。


海底の東犬は亀姫に案内され、狛ちゃんを担いで浮上し、

みんなと合流した。


満たされても送られてくる海水。

耐えられなくなった玉梓がとうとう出入口の縦穴を解放した。

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