玉梓2 化け狸
霧の外にただ一人先行している犬神は吸血鬼に囲まれている。
犬神はルナが血まみれになったのを確認すると退魔の笛を咥えた。
神速ブレスで高音を発生させる。
死に物狂いで襲い掛かる吸血鬼達の聴覚を貫通して脳を破壊した。
バタバタと倒れた吸血鬼達に続いて犬神はゆっくりと正座する。
武術の型ですらない穏やかなたたずまい。
突然の笛の音は試合終了のホイッスルのように戦場の動きを止め、
その審判も前進を止めた。
犬神は令和の剣を使わなくても義の男だった。
■
タルナーダの血を飲んだルナが河童と鬼と天狗の力を直感的に理解した。
背中の皮膚を硬質化し剛腕で十字架を軋ませると、
杭が発射された。
その勢いで十字架だけが壊れる。
範囲攻撃を警戒して一瞬静かになった戦場で吸血鬼達は、
守るべき者が解放された瞬間を目撃する。
そしてルナが竜の落とし子を吐いた。
ルナのそばに無数のコウモリが集まってタルナーダに戻る。
タルナーダ「玉梓は何処か知っているか?」
ルナ「ここは玉梓の腹の中だ。
あの化け狸はみんなここに封印するつもりなのだ。」
タルナーダ「出入口なら上の方にあったぞ。
それにみんなコウモリ化しなくても飛べるようになったはず。」
■
玉梓の策は犬士を汚すことは出来なかった。
だがまだ負けた訳ではない。
玉梓は富士山頂の魔界出入口を封じるよう一反木綿を向かわせていた。
魔界出入口、そこには穴を塞ぐように犬士のステルスUFOが止まっている。
一反木綿は透明なUFOに巻き付いて浮上を始めた。
UFOの中には枕返しが待機していて浮上に抵抗する。
まるで奇妙な布が富士山上空ではためいる様に見えた。
同時に魔界出入口の岩がひとりでに閉じて行く。
だが、
犬影は免許皆伝以来だれにも見つかったことは無い。
炎を纏った犬影UFOが流れ星の様に落ちて、
静止する一反木綿UFOに着火した。
黒焦げた布に混じって落ちる「影」が魔界出入口に間一髪で侵入し、
魔界は封印された。
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