ヒーロー10 妖怪アベンジャー

妖怪の襲撃は確実に犬士の戦力を削り、しかも逃げ足が速い。


乙姫を失っただけで犬塚、タルナーダ、陽子の三人が宇宙の彼方に置き去り。

そして今夜、犬神が集中治療室行きとなった。


ぬりかべは無敵の存在で、配下の妖怪を転送して正に神出鬼没にする。

茨木童子は名刀髭切を持ち、目を合わせれば操られる。

のっぺら坊は宝蔵院流槍術の免許皆伝、同じく直視してはいけない。


討伐を逃れ続けて、

現代まで生き延びた妖怪はもはや雑魚妖怪ではない。

妖術を極めた妖怪を越えた存在、言うならば妖仙なのだ。



犬坂は土佐部屋の東犬親方に電話で襲撃を伝えた。

犬坂「お弟子さんを疎開させて、早急に大阪城に合流してもらえますか?」


東犬「わかった」


しかし東犬が大阪城に合流することは無かった。


電話での会話は、東犬にはこう聞こえていた。

「弟子から目を離さず、しばらく土佐部屋で襲撃に備えていて下さい。」


天邪鬼の結界がすでに土佐部屋を包んでいた。

これで犬士は残り三人。



その日の夜、大阪は原因不明の停電により、暗闇に包まれた。


地下大阪城には自家発電機があるが、

照明と空調だけにしても一晩しか持たない。


犬坂は大雨の護符でお堀の水を増やし、雷の護符も発動した。

籠城戦で迎え撃つ。


大阪中が停電で暗闇の中、

十五年前の天狗襲撃による火事から立て直し中の城だけが雷で浮かび上がる。


そこへ野良犬がどこからともなく城周辺に集まり出した。

大雨と雷で曇る空の一部だけを不自然に月明かりが引き裂く。

後に一反木綿を見たと言う噂が広がった。


赤い満月が覗く。

野良犬どもの興奮が頂点に達し、狼男に変身して次々に堀に飛び込んできた。


落雷が続くお堀、その底の出入口を臭いで見つける。

感電しながら到達した狼男が水中で吠えると大石が落ちてくる。


その石を使って浮力を押さえ、怪力で扉をこじ開けた。

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