アメコミ風 南総里見八犬伝説

ヒーロー9 のっぺら坊

犬神の目、鼻、口が有った所は単なる肌になっている。

そして背後からの一撃で一瞬気絶していた。

黒パーカーに治癒され気が付くが、何も見えない。

そして何より息が出来ない。

始めに道路に飛び出した通りすがりの犠牲者と、

同じく顔を失った犬神。

狛ちゃんと、狛ちゃんに体当たりされた謎の袈裟僧侶。

犬神に出来る事は少ない。

犬神は最初の犠牲者を掴み、その顔の位置を手探りで探した。

カラーン

愛用のなぎなたが周辺に落ちた音だ。

敵は頼れる狛ちゃんに任せるしかない。

呼吸を確保すべく落ちたなぎなたを手探りで拾い、

刃で旧口元を斬る。

しかし、せっかく斬った傷がすぐ治ってしまった。

ひと呼吸だけ出来たが、また斬るのかと思うと泣きそうだ。

目は無いが。

誰かも知らない犠牲者はさっきまで動いていた。

傍で窒息し、もがき苦しまれるのを見るのはつらい。

目は無いが。

動転して暴れられる前に慎重にその顔を探り、

口の辺りを斬って呼吸させる。

■

緊急事態コールが狛ちゃんから犬坂と里見に入り、

救急車は手配されただろう。

狛ちゃんは体当たりのついでに犬神になぎなたを届けたつもりだが、

参戦してこないので袈裟僧侶のっぺら坊をためらわず殺す事にした。

袈裟僧侶の武器は十文字鎌槍、長さ約３メートル。

リーチで勝ると判断したのっぺら坊が突きを放つ。

狛ちゃんは電動バイクに頭、四肢、尻尾を生やしただけの簡単な変形である。

足は走る機能よりジャンプを重視している。

収納された訳でも無いタイヤを高速回転させ、低い姿勢で待っていた。

前輪は後方回転、後輪は前転している。

のっぺら坊の突きに対して、人を超えた速度で反応、

前輪を地面に付けて後退する。

同時に牙で槍を咥えて勢いを受け流した。

間髪入れずに前進。

押し合いになる瞬間、首を切り離した。

同時に狛ちゃんの胸からハサミの様に二本のビームサーベルが伸びる。

のっぺら坊は避けきれず片腕を斬られた。

更に挟み斬りで追撃する狛ちゃん。

大ジャンプ宙返りしたのっぺら坊がそのまま深夜の空に消えた。