犬士編4 たちあい
剣士犬塚は村雨に魅入られている。
遠征用飛行機手配の空き時間、犬神に手合わせを願い出た。
地下大阪城内の道場にて剣道用防具を着ける。
そしてお互いに木製の武器を構えた。
犬神は木製なぎなたで対村雨を想定する。
犬塚の木刀を受けることは出来ないし、こちらの攻撃を受けられても終わりだ。
無理ゲー。
しかしまずは、なぎなたで狙うべきはスネだろう。
犬神はなぎなたの端を持ち、最大の間合いを取る。
しかし犬塚もスネを想定しているのか下段に構えている。
お互いの想定が的を得ていた。
犬神が上段に構えなおす。
その隙に犬塚が間合いを詰めた。
一歩も下がる事が出来ない間合い、次の動作が全てを決する間合い。
練習なのだから逃げ続けても意味はない。
退路を絶たれたなら相打ち有るのみ、が犬神の道場の教えである。
犬神は面を打ち込む。
そのなぎなたは犬塚にはじかれた。
実戦なら以降はなぎなたの刃を切られた想定となるはず、
が木刀では切れないので、
単なる太刀となぎなたでの攻防をそのまま続行する。
犬神は打ち込んだ勢いのまま間合いをさらに詰める。
鍔迫り合いに持ち込む動き、木刀を抑えつつ途中なぎなたを捨てた。
犬神が犬塚の足を踏み、腕を掴んだ。金的はしない。
結局犬塚の体勢を崩しきることが出来ず、木刀の刃が犬神を撫でた。
手合わせはこの一回のみ、犬神の敗北で終わった。
達人同士では一回で十分だった。
■
終わって後、途中いくつか実戦とは違う場面があった事をお互いに想定していた。
まず、はじかれたなぎなたは実戦では切られている。
犬神は先の短くなったなぎなたで突き込む攻撃を想定していた。
対村雨でしか起こりえない事態だが、あえて武器を簡単に切らせておいて、
そのまま神速突きに変化する相打ち戦法。
そして鍔迫り合い。
金的もそうだが、パイルバンカーが有れば、相打ちに持ち込めたかもしれない。
対する犬塚は初めから霧でどうとでも出来ただろう。
毒霧は対人では無敵だ。
神速には霧レーダーで初手の補足は可能ではある。
しかし面までは追い付けるが、
突き神速に変化されては体さばきが追い付けないだろう。
ゆえになぎなたの打ち込みをあえて切らず、はじいて裏をかく。
いかに神速でもはしかかれば変化出来ず、
さらに間合いを詰めれば長物は不利となる。
所詮お互い脳までは神速にはついていけないのだ。
掴まれれば小太刀二刀流の金剛力で応戦するまで。
たった一回の立ち合いが二人の想定を膨らませた。
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