琵琶湖編2 彦根城のしゃちほこ
琵琶湖方面での妖怪出現が最初に発覚したのは彦根城だった。
彦根城の城主、ぬゑは手始めに、
自身の尻尾の蛇を鬼に噛みつかせ、ドーピングを行った。
鬼の力は倍加し、肌の色が白くなった。まるでひこにゃカラー。
ぬゑはそのあと天守に登った。
まるでしゃちほこの様である。
警察相手に最初の攻防が始まる。
鬼の配置を試しつつ、
勇敢にパトカー突撃するような、ごり押し攻撃には落雷を落とした。
雷鳴が響き渡る中、警察は堀の外まで撤退させられる。
そこへ河童までもが堀を使って入城する。
警察では突破できない堅牢な守りが完成した。
そこへ自衛隊が到着した。
人々は現代兵器の火力に期待したが、最悪の事態が発覚する。
ぬゑは逃げ遅れた人々を人質に取っていたのだ。
火力どころか攻撃が封じられた。
■
その彦根城攻略を任されたのは村雨剣士犬塚信乃。
犬塚は夜を待って、霧を辺りに漂わせる。
やがて霧は立派な堀の水を伝って風上の琵琶湖へ流れ込む。
視界3mほどの更に濃い霧が発生し、風下の城内を包み込んだ。
ぬゑはこの異常事態に、堀にかかる橋目掛けて闇雲に落雷を落とし始めた。
犬塚は懐から手拭いを取り出して細かく千切り耳栓とした。
さらに村雨を天に掲げて腕で耳を塞ぎ橋を渡る。
時折落雷は村雨に命中するが、その電力は刀身と霧に吸収された。
橋を渡りきった所には白鬼と河童の一団が焚火をして待ち構えている。
霧に紛れた犬塚が焚火を避け、集団に切りかかる。
断続的に続く落雷も夜の闇を一時的に照らしたが光量が足りない。
最初の鬼の首を切り飛ばす。
敵襲に気付いた一団が武器を持って犬塚の方向に殺到する。
しかし夜の暗闇と霧が犬塚の姿を隠してしまう。
全力で走るのをためらう程の視界。
妖怪にとっては、どこに何人居るか分からないが近くに敵がいる。
犬塚にとっては、村雨の霧の効果でたとえ目をつぶっても、視界は良好だ。
端から一人ずつ相手出来る。
村雨のあらゆる効果が犬塚のテンションを上げる。
全員を倒す必要はないと分かっていても、
背後を取れると分かっていても、あえてしない。
わざと目の前に立ち、相手の攻撃を受け流し、避ける。
村雨でなくとも出来る剣術を意識する。
いつもより力強い鬼の攻撃がさらに興奮を誘う。
戦国時代をも超えて生き抜いた剣術は力など必要としない。
いくら力を込めて金棒を振り下ろしても、村雨の刀身に沿って地面を削るだけ。
踏み込んだ犬塚を掴み止めても、刀は止まらず器用に急所を切った。
横に薙ぎ払っても当たらず、手首が切り落とされる。
あえて数人に囲ませては切り抜ける。
南の大手門橋から進攻して、観光するかの如く討伐して回った。
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