アベンジ編6 神事

淡路島の鬼の拠点は南あわじ市のある公園だった。


淡路島に天狗が居なくなった後も、

自衛隊の南方制圧が進まなかった事で犬坂が予測した。


犬神は野良鬼を自衛隊に任せ、無視した。

夜の内に暗視サングラスをかけ、無灯火WRXで一気に南下。

鬼の拠点を目指した。



伏姫はお遍路の途中、ある相撲部屋に来ていた。


土佐部屋、ハワイ出身無敗の元横綱、張り子親方。

四股名は東犬太郎【あずまいぬたろう】。

身長250cm筋肉隆々の動ける巨人、

まだ若く体を壊す前に早々に引退を決断した。


弟子も自身がハワイでスカウトした者が多い。

しかしその血気盛んな弟子達は、

大阪場所開催を危ぶみ、早々に梅田へと河童討伐に出ていた。


東犬はひとり稽古に打ち込んでいた。

自分も行くべきか。


迷っている間に今度は淡路島に天狗である。

稽古で昔の感覚が戻り、闘争本能に火が付く。

玄関を飛び出した。


そこには巨犬が闘犬よろしく化粧まわしを付けてお座りしていた。

邪魔をするつもりなのか。


東犬がぶちかます。

巨犬はびくともしなかった。

化粧まわしを掴んでがぶり寄る。


「のこったのこった」

伏姫がつぶやいた。

巨犬はびくともしないが、化粧まわしが引きはがされた。


「その化粧まわしを付けなさい。」

お遍路姿の伏姫が声をかける。


東犬は着物を脱いで化粧まわしを巻いた。

気付くと巨犬もお遍路女性も居なくなっていた。


化粧まわしは薄手に作られてあり、妙に力が湧くので、

そのまま上に着物を着た。

愛車ハマーに乗って淡路島へ向かった。


淡路島では自衛隊と鬼の死闘が繰り広げられている。

ハマーから降りた東犬が加勢する。

日本人なら誰もが知る無敗のまま引退した大横綱東犬。

おもむろに着物を脱ぐと、かわいい犬張り子柄の化粧まわし姿になった。


相撲とは神事である。

東犬が立合いの姿勢を取ると、土俵が現れた。


自衛隊員が援護射撃する中、

鬼たちが一斉に飛び掛かるが、土俵の中には一体の鬼しか入れなかった。

金棒も土俵外に残された。


他の鬼達は土俵の下で、なんとか土俵に上がろうと暴れている。

金星に沸き座布団を投げる観客のように金棒を投げつける鬼達。

金棒は土俵をすり抜け、反対の鬼に当たるだけだった。


東犬が立ち合いの姿勢を取ると、鬼が応じた。

3m超えの鬼に2.5mの東犬が突っ張る。

小兵の相手がさんざん東犬にしたように。

防戦一方の鬼のパンツを掴み、寄り切った。


土俵の外に出た鬼が灰になった。

相撲とは神事である。

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