梅田迷宮編2 吸血鬼の能力

二日目の夜の梅田周辺では、

至る所で戦闘が繰り広げられている。


しかし電動バイクは思いのほか静かで、

犬神は大阪駅まで簡単に到着できた。


大阪駅の阪急側高架下にバイクを止めると、

横断歩道そばの階段へ向かう。


階段から一匹の河童が駆け上がってきた。


犬神は型通りに踏み込んで木刀を振り下ろす。

河童が両腕で防ぐ、河童の片腕が折れた。


もう一度木刀を振り下ろす。

河童は折れてない方の片腕で防ぐが、

力負け、腕越しに皿が割れた。



その様子を見つめるコウモリが高架下にぶら下がっていた。



犬神が階段を駆け下りると、

地下にはまばらに河童が居た。


見つからないように、柱の影を走り抜ける。


無事ロッカーにたどり着き、

携帯と財布を確認するとリュックに背負った。


ロッカーを出ると、

コウモリが多数飛んでいる。


魔除けの笛は河童に気付かれるので使えない。

これでは魔除けなのか、口寄せなのか。


コウモリが襲い掛かってきた。

犬神はフードを被り、地上への階段を目指して走った。


しかし階段からは、

どんどんコウモリが入って来ていた。


河童達が逃れようと、

逆にどんどん階段へ集まり、外へと脱出していく。


必然的に地下に閉じ込められた犬神。

河童が逃げ切ったら、

魔除けの笛を吹くつもりでいた。


しばらく襲い掛かるコウモリを打ち払っていると、

やがて攻撃が収まった。


コウモリが一か所へ集まっていく。

真っ黒い塊から黒スーツ男が現れた。

南港とは別の顔。


黒スーツが話しかけてきた。


「大阪城や南港で雷神が介入してきた、と聞いたが

お前はその仲間か?」


犬神は無言で魔除けの笛を口にくわえ、

木刀を構えた。


黒スーツがコウモリと同時に、

素早く襲い掛かって来た。


犬神が気合いの声を込めて、

魔除けの笛を思い切り吹く。


コウモリは地面に落ちた。


黒スーツの勢いも弱まった所に、

踏み込んで木刀を上段に振りかぶる。


先手は取れていたが、

吸血鬼は相打ち狙いが多い。


木刀は振り下ろさなかった。


黒スーツは避ける気配のない動きで、右貫き手を放った。

木刀を振り下ろしてその腕を折る。


続いて左の貫き手。

身を低くして躱したが、そのまま左手で掴まれてしまった。


黒スーツが爪を立てたが、パーカーは破れない。


犬神は胸を狙って木刀を下から突き上げる。


黒スーツは構わず踏み込んできたので、

脇腹に木刀が刺さった。


心臓を仕留め損ねた。


至近距離からの噛みつきが来た。

犬神は木刀から右手を離して黒スーツの喉へチョップし、

そのまま絞め上げた。


力比べは犬神の方が上だった。


そのまま壁に押し付けようと、

持ち上げる。


黒スーツの左手が犬神の右手首を掴みなおすと、

脇腹と喉が無数のコウモリとなる。


一瞬自由となった黒スーツ。


犬神はとっさに掴まれた右手を引き寄せつつ、

黒スーツを蹴り離した。


吹っ飛んだ黒スーツの近くに河童が現れた。


河童は倒れた黒スーツに噛みつくが、

黒スーツも河童に噛みついた。


黒スーツの折れた右手が治る。

今回の河童はしおれなかった。


そしてなぜか河童は目の前にいる黒スーツではなく、

犬神に襲い掛かってきた。

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