南港追撃編4 河童とは

犬神の周りを囲む河童は3体。

犬神の左右に1体づつ、黒スーツの背後に1体。


河童は全員ほぼ同時に襲い掛かってきた。


犬神は右の河童に向かって進みながら、

緊急脱出ハンマーを左手に持った。


道場で身に着けた小太刀の型通りに半身、

躱すことだけを意識する。


勢いを受け流し、そのまま後ろに回り込む。

痛む腕で後頭部を切りつけて、かろうじて皿が割れた。


もう一体の河童は首を伸ばしてきた。

下から小太刀で受け止め、流れる動きで頭を下げさせる。

ハンマーで皿を割った。


同時に黒スーツにも背後から河童が襲い掛かっていた。

しかし黒スーツは犬神に向かって走る。


黒スーツの貫き手が犬神を狙うが、

犬神も黒スーツの動きは察知しており、

河童の死体を盾にした。


黒スーツの延髄を後ろの河童が噛み砕く。


犬神は河童の死体を振り回し、

黒スーツを河童共々吹き飛ばした。


吹き飛ばされた黒スーツに河童が襲い掛かるが、

アイアンクローで顔面に爪を立てられる。

動きを封じられ血を吸われてしまった。


しばらく河童の死体を駆使した、時間稼ぎが始まった。


吸血鬼を倒せる目途は立たない。

沈む夕日。

死体を振り回す左腕はいつ折れてもおかしく無かった。


とうとう夜となった。

黒スーツの体からコウモリが無数に飛び立つ。


小太刀で追い払うが、激しい痛みで動きは鈍っている。

一匹、二匹と噛みつかれてふらふらとよろめく。


ゴロゴロゴロ、、、遠くに雷鳴。


犬神は最後の力を振り絞り、河童の死体を上にして倒れこんだ。


落雷がいくつも無差別に落ちる。

直撃と爆音でコウモリは一掃された。


『アイルビーバーック』

間抜けな竜の落とし子姿の乙姫が、

式紙の束を尻尾に差して、

犬神を見下ろしている。


乙姫は逃げたのではなく、

上空の式紙を集めて、

陰陽師犬坂に異常を知らせようとしていたのだった。


『今のうちに車で逃げましょう』

犬神は河童の死体を背負い、身を低くして車へ戻っていった。

犬神の周囲には執拗に落雷が落ちている。


黒スーツは犬神を諦めたのか、

一匹の河童を見つけると襲い掛かっていった。

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