第152話 詩織の思惑(詩織2泊目)
ひとまず、酔い覚ましの意味も込めて、詩織にシャワーを強制させた。
寝間着は、春香のジャージをお借りすることにして、脱衣所に置いてあげる。
ついでに、脱衣所に脱ぎ散らかされた詩織の衣服の横に、消臭スプレーをそっと置いておく。
明日もその服を着て電車に乗らなければならないから、酒臭い匂いを消しておくのはマナーだしね。
こうして、詩織に余計は気配りを張りつつ、寝る支度を整えていると、スウェット姿になった詩織が戻ってきた。
「いやぁーごめんね、服まで借りちゃって」
「いいって、それ春香のだし」
「うわーでたよ、他の女普通に泊めてます宣言」
「お前まじでワンパン食らわせるぞ?」
「じょ、冗談だって。ありがとね!」
詩織は洗面所で髪をドライヤーで乾かして、俺はその間に歯を磨く。
歯を磨き終えて、俺は詩織に一声かける。
「ほれ、明日も朝早いんだから寝るぞ」
「ちょっと待ってよ、早いってば!」
俺は焦る詩織を置き去りにして、事前に敷いておいた布団に寝転がって、先に就寝の体勢に入る。
詩織は、慌てた様子でバッグの中からケア用品やらを取り出したりと、忙しなくドタバタ寝る支度を整えていた。
「おっけい! 準備完了!」
しばらくして、ようやく寝る支度の整った詩織が声をかけてくる。
「電気消すぞ」
「はーい」
ピっと電気の灯りを消した直後、隣からシュルシュルっと布団の擦れる音が聞こえてくる。
「はぁ……大地の布団の中温かいー。こりゃ極楽ですなぁー。大地と一緒に寝泊まりしたくなる理由も、なんか分かる気がする」
「……何お前ナチュラルに俺の布団に入ってきてんの?」
詩織は隣に敷いた布団ではなく、なぜか俺の布団に侵入してきていた。
「え? だって、他の女の子とはこうやって寝てるんでしょ? なら私だっていいよね?」
「よくない! いいから戻れ!」
「えぇ!? 酷くない!?」
「……お前、自分の立場分かってる?」
「もちろん。だからこうして、お詫びとして私の身体で発散させてあげようと……」
「何をだよ……」
俺が呆れて問うと、詩織はにやぁっとからかうような笑みを浮かべた。
「だって、誰ともまだシてないんでしょ? なら、毎日色気ムンムン攻撃されて、ぶっちゃけ溜まってるっしょ?」
「た、溜まってねぇよ」
「嘘だぁー。本当はムラムラして仕方ないんでしょ? 大丈夫、私から誘ってるんだし、このことは誰にも言わないでおくから」
「痴女かお前は。本当に今はムラムラも何もしてないって」
「今はってことは、普段はムラムラしてるんだ」
「いやっ、それは……」
「はっ!? も、もしかして、私が来る前に自分で発散しちゃった?」
「……」
墓穴を掘った。
詩織は納得したように嘆息を漏らす。
「そっかぁー自家発散しちゃったかぁ-。残念」
「わかったなら、とっとと戻れ」
俺がしっしと手で追いやろうとするが、詩織は一向に動こうとしない。
「でもさ、自分でするより、女の身体で発散した方がもっとスッキリすると思わない?」
「お前は俺に何を求めてんだ? 何? ヤってほしいの?」
「別に? 私は大地のためを思って言ってるだけだよ? もう二度と女の子の身体なんて味わえないかもしれないんだから」
「いやいや、ヤろうと思えばいくらでも」
「うわぁ、寝泊りしてる女の子達を性的な目でいやらしく見てる変態がいるー。やらしいのー」
「……お前ぶっ殺すぞ」
「冗談だって。でも、綾香とか超奥手そうじゃん? だから、私男に飢えてるし、大地がいいなら性処理女として扱ってもいいよって話」
「お前は俺の何になりてぇんだ」
「うーん、セフレ?」
「ぶっ……!」
詩織の爆弾発言に思わず吹いてしまう俺。
「あのな……お前そもそも今回の勝負に参戦してねぇだろ」
「うん。だから、大地の相手が決まるまでのひとときの過ちでもいいから私とセフレになってよ」
「ばっ、馬鹿か! もっと自分を大事にしろ! それにな、俺は愛のあるセックスしかしたくない!」
「さっき勃起してたくせに」
「してない! 不可抗力で立ってたとしても、お前とセフレになるつもりはこれっぽっちもない!」
「ちぇー。せっかく私を食べられる一世一代のチャンスを逃したこと、後悔させてやる!」
つまらなそうに捨て台詞を吐いて、詩織は俺の布団から出て、隣の布団へと移動していった。
ったく、なんだったんだ一体。
詩織、痴女すぎるだろ……。将来が心配になってきた。
「他の奴に同じこと言うなよ。俺だったからいいものの、何されても責任取れねぇぞ」
俺が寝返りを打ちながら忠告代わりに言う。
すると、詩織からか細い拗ねた声が返ってくる。
「そこはちゃんとわきまえてるし。私だって、信頼してる人にしかこんなこと言わないよ……」
その言葉を聞いて、俺は唖然としてしまう。
信頼されていることに関しては嬉しいけれど、裏を返せば俺とセックスをしても構わないということで……。
はぁ、ったく何考えてるんだこいつは。
俺は頭をがしがしと掻きつつ、大仰にため息をついてから眠りについた。
不覚にも、詩織の先ほどまでの言動やセフレという言葉に反応したのか、頭の中で艶やかに淫らに乱れる詩織を妄想してしまい、ムラっとして下腹部がしばらく主張していたことは誰にも言えない秘密だ。
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