第127話 姉妹同盟(愛花8泊目&愛梨8泊目)

 所変わって俺のアパート。

 今俺は、部屋に正座して、愛花さんと愛梨の前で項垂れて、二人を泊めることになった経緯や関係性をすべて白状して話した。


 すべて話し終えたところで、愛梨さんが冷たい視線を向けながら口を開く。


「なるほどね、つまり愛花にも『好き』って告白されたのに、それを有耶無耶うやむやにしたまま、たぶらかしてたってことね」

「はい、おっしゃる通りです……」


 俺が項垂れながら頷くと、意外なことに愛花が愛梨さんに向かって反論した。


「違うよお姉ちゃん。私は大地に、もっと一緒にいて私のことを知ってほしいって言ったの、それで私のこと好きになってくれたら嬉しいなって思っただけ!」

「そうだとしてもね……はぁ……」


 愛梨さんは疲れたようにこめかみに指を当てて盛大にため息を吐き、呆れ半分といった表情で言葉を紡いだ。


「ホント、姉妹揃って恋愛の価値感まで似ちゃって……愛花、大地くんを好きになったのは?」


 唐突に、愛梨さんが愛花に尋ねると、愛花は目を輝かせて即答した。


「顔がカッコイイ、一目ぼれ」

「そかそか、やっぱりそうだよね~」

「お姉ちゃんは?」

「私も、もちろん顔!」

「えっ……」



 二人で勝手に俺の話で、姉妹息のあった会話をしているにもかかわらず、当の本俺は目をぱちぱちと瞬かせて眺めていることしか出来ない。


「大地は、優しい。それで変態」

「わかるそれ、普段は優しいのに、妙に視線はいやらしいのよね」

「男はみんな変態、でも大地は紳士ヘタレ変態」

「それもわかる」


 二人とも腕を組み、納得するように頷き合っている。


「あの……ちょっと……」

「ん? どうしたの、大地?」

「ん? どうしたの、大地くん?」


 同時に、首をきょとんと傾げて俺を見つめる仕草と表情も、改めて見ると姉妹そっくりだった。


「その、恥ずかしいんでこれ以上は……」

「何言ってるの??」

「これは大地くんへのお説教なのよ」

「恥ずかしめられて当然」

「そ・れ・に」

「大地は罵倒され好き」

「息ピッタリだなおい!」


 まるで予行演習でもしていたのではないかと疑ってしまうほどに、息ピッタリな姉妹劇場が終わると、愛花さんがパンと手を叩いた。


「そうだ! 愛花ちょっと……」


 含みのある笑みで愛花に手招きをすると、二人は何やら内緒話を始めた。

 愛梨さんの言葉に愛花が何度か頷くと、ぱっと目を見開いて、俺を蔑むような鋭い視線で睨み付けてきた。


「なっ……何を言ったんですか」

「え? それは、大地くんが私たち以外にも女の子を泊めてるって話」

「ギクっ……」


 俺の背筋にぞっと寒気が襲う。


「たらし大地」

「グッ……」


 ぐうの音も出ず、俺の心に矢がグサリと突き刺さった。


「愛花チョイチョイ」


 すると、再び愛梨さんは愛花を手招きして、ヒソヒソ話を始める。

 何度か愛梨さんの話に頷くと、愛花は段々ニヤリと口角を上げて、何から意味ありげな表情を浮かべていた。

 そして、話が終わると愛梨さんと愛花は、一緒にじぃっと何か企んでいるような視線を送って来た。


「な、なんですか?」


 俺がおそるおそる二人に尋ねると、二人はお互いに一度見つめ合って微笑み合うと、おもむろに立ちあがり、ゆっくりと正座している俺の前まで移動して座りこんだ。


「大地くん」

「大地」

「は、はい……」


 そして、二人は目を潤わせながら、上目づかいで決意を込めたように言ってきた。


「私たちこれから、二人で大地くんを狙うね♪」

「私たちこれから、二人で大地を狙う」



「……はい?」


 何を言っていらっしゃるんだ、この姉妹は?

 俺が首を傾げていると、聞いてもいないのに説明してくれる。


「ほかの女には大地を絶対に渡さない、大地を私とお姉ちゃんで貰う」

「そしたら、お互い家族になれるし、たとえ大地君がどちらと籍を今後入れたとしても、二人とも愛することが出来るでしょ?」

「はい!?」


 言っていることが意味不明だった。二人で俺のこと狙うってどういうこと?

 え? 今家族がどうとか言ってなかった?


「いやでも、二人は苗字も違って、今は戸籍上は……」

「戸籍の話じゃないの、愛があれば私たち姉妹を手懐けることなんて簡単でしょ? ね、たら地くん」

「いや、変なあだ名で呼ぶのはやめて下さい愛梨さん」


 まあ、否定できない所が情けないんだけども……


「ま、そう言うことだから! とりあえず、もう遠慮しないでガツガツ大地にアタックして、メロメロにさせちゃうから覚悟してね?」

「えぇぇぇ……」


 こうして、美人姉妹二人は、俺の扱いを決める新たな同盟を結び、協力体制を整えて俺のことを落としに来ることになった。


 それは、姉妹仲が良くていいのとなのだが……


「大地くん……♡」

「お姉ちゃん、大地から離れて、大地もお姉ちゃんにくっ付かれてデレデレしない」

「いや、そう言われましても……」


 今俺は、二つの敷いた布団の真ん中に寝っ転がり、左右から愛梨さんと愛花に腕を掴まれて、ベッタリとくっ付かれて眠っていた。


「えぃ!」


 うわぁぁ、愛梨さんの柔らかいおっぱいが、腕にもろにぃぃぃ……。


「むぅ……!」


 それを見て、愛花は嫉妬の目で愛梨さんを睨みつけている。


「大地!」


 すると、対抗するように愛花が俺の腕をその柔らかいお尻へと導いた。


「大地はお尻の方が好きだもんね~」

「なっ! ハレンチな……!」


 そう言って、愛梨さんが頬を真っ赤に染めているのが暗闇の中でもわかる。


「今さらですけど、愛梨さんって意外と初心うぶですよね」

「むぅ……えいっ!」


 俺の言葉が気に食わなかったのか、愛梨さんも俺の腕を掴んで、自身のお尻を触らせてくる。


「それでどう!?」


 うわぁぁぁぁ……愛梨さんのお尻はこれはこれで、筋肉質の肉付きがあって、柔らかくて、触り心地があって……


「大地ほらぁ、太ももも触っていいよ?」

「なっ……!! それなら私だって!」

「ちょっと二人とも……」


 しかし、俺の腕は理性にあらがうことが出来ず、その二人の美少女の太ももをいやらしい手つきで触ってしまう。


「ふふっ……大地」

「だ、大地くん……もう少し優しく!」


 あぁ神様……俺はいま死んでも悔いはないです!

 こうして、眠気がやってくるまで、愛梨さんと愛花の熱き姉妹対決は、俺のフェチをさらに駆り立てながら夜遅くまで続いていくのであった。

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