第120話 寛容な幼馴染(春香7泊目)
優衣さんのおっぱいを、今日も今日とて堪能しまくった後。
大学の授業を終えて帰宅すると、そこには奴がいる。
アパートの階段を登った先。つまりは一番奥の部屋の前でスマートフォンを操作しながら、春香が退屈そうに待っている。
いや、別に来るのは構わないんだけどさ。一つ連絡入れてくれれば、こっちも時間とか教えましたよ?
そんなことを思いながらトコトコ玄関へ向かって廊下を歩いていくと、春香も足音で気が付いたのか、俺の姿に気が付いた。そして、軽く手を挙げて挨拶してくる。
「よっ!」
「いやっ、よっ! じゃなくて、何当たり前のように部屋の前で待機してんの?」
「何、連絡しないと来ちゃダメなわけ?」
「いやそうじゃなくて。来る時間教えてくれれば、鍵ポストに入れておくとかして、外で待たなくても済むようにしたのにってこと」
「あぁ……そういうこと……」
相変わらず自分勝手な奴である。
まあ、火曜日は泊まりに来るみたいな習慣が暗に決まっているようなものだから、こいつにとってはもうそれが日課みたいなものなのかもしれないが。
「次からは連絡するようにする……」
「おう、そうしてもらえると助かるわ」
そう言いながら、俺は玄関の鍵穴に鍵を差し込んで、施錠を解除する。
扉を開けて春香を先に部屋に通すと、春香は靴を脱いでそのまま部屋へと一直線に向かっていき、すぐに荷物を適当に放り投げて、まるで自分の家のように寝転がってくつろぎ始める。ホント、こいつは……
ため息混じりに吐息を漏らすと、ふと春香が何気なく聞いてくる。
「そう言えば、今日はバイトあるの?」
「えっ? あぁ、今日はないよ。春香が来るから入れなかった」
「えっ、そうなの……!?」
何故だろう。心なしか、春香の表情は残念そうに見える。
「いやっ、そもそもお前が火曜日はバイト入れるなって言ったんだろうが」
「そ、そうだっけ?」
「そうだよ」
「そ、そっか……」
春香は人差し指を顎に当てて、考え深げに思案している。
「俺のバイトが、どうかしたのか?」
俺が尋ねると、春香は驚いたように視線を俺に向けて手を胸の前で振る。
「ううん! なんでもない、なんでもない!」
必死になって主張する春香。心なしか、頬は赤く染まっているように見える。
俺が訝しむ視線をさらに送ると、春香は目を逸らして挙動不審になる。……怪しい。
その時、ズボンのポケットに忍ばせていたスマートフォンのバイブレーションが振動する。何度も震えていることから見て、どうやら電話らしい。
「悪いちょっと……」
そう一言春香に詫びを入れて、俺は電話に出た。
「はい」
『あっ、南くん。こんにちは、『レストランビストロ』の高野です』
「高野さん。お疲れ様です!」
急にどうしたのだろうと思っていると、高野さんが手短に用件を話しだす。
『実は今日、バイトの子が一人熱で入れなくなっちゃったんだけど、今からシフト入れたりしないかな?』
「今からですか!?」
俺の視線は、自然と春香の方へと向かう。
電話する様子を見ていた春香が、キョトンと小首をかしげる。
「どうしたの?」
「ちょっと待ってもらっていいですか?」
高野さんに一言詫びを入れて、春香に状況を説明する。
「いやっ、レストランの方のアルバイトで欠員が出ちゃって、今日は入れないかって電話なんだけど……」
そう説明すると、春香は心なしかにかぁっと明るい表情を浮かべる。
「それなら、行ってくれば?」
「へっ?」
春香の意外な答えに、俺は思わず変な声を上げてしまう。
「いやっ、でもお前俺にバイト入れるなって……」
「それはそれ、これはこれっしょ」
「どれがどれだよ……」
春香の基準がよく分からないのだが、春香は立ち上がって俺の方へと向かってくる。
「いいから! 今日もアルバイト頑張ってきな! 私は時間潰して適当に待ってるからさ!」
そう言って促してくる春香。まあ、春香がここまで快く送り出してくれるのであれば、ここは期待に沿う形にしよう。
俺はふたたびスマートフォンを耳元にかざした。
「わかりました。いいですよ、今から向かいます」
『申し訳ないね。18時からでいいから、よろしく頼む』
「わかりました、それではまた後で」
ポチっと通話終了ボタンを押して、春香に向き直る。
春香はニコっと微笑んで口を開く。
「いってらっしゃい、大地」
「お、おう……行ってくる。悪いな、来てもらったのにまたバイト行っちまって」
「いいっていいって! 気にしないで! 私は掃除とか洗濯とか適当やって時間潰し手てあげるから。困ったときはお互い様でしょ!」
今日はやけに春香が大盤振る舞いだな……
そんなことを思いつつ、アルバイトに行く準備を整えて、玄関で靴を履く。
玄関のドアを開けて振り返ると、春香が俺を見送る体勢に入っていた。
「頑張ってね。いってらっしゃい!」
にこやかな笑みで手を振ってくる愛花に対して、俺も軽く手を振り返す。
「あぁ……行ってくる。できるだけ早く帰ってこれるように努力する」
「平気だよ。車に気を付けて帰ってきな」
「わかった」
こうして、俺は春香を家に置いたまま、急遽アルバイトへと向かっていった。
◇
ガチャリと扉が閉まり、トコトコと大地の足音が遠ざかっていく。
辺りには、静観な時が流れ出す。
私は、つい頬が緩み、にやけてガッツポーズをしてしまう。
「よしっ……これでまた大地がいない所で出来る……でへへっ」
気が付けば、気持ち悪い笑い声で笑っていた。
だけれども、あの味を知ってしまえば最後。私は早速準備へ取り掛かる。
部屋の隅に置いてある布団を引っ張り出して、部屋に敷き。毛布をかぶせる。
その間に私はくるまるように入り、感嘆の吐息をつく。
「はぁぁぁぁっぁ~……大地のいい匂いがいっぱい……幸せぇ~」
私の今の表情は、緩み切って変な表情になっていることだろう。でも、今は一人きりだから、どんなことをしようとも誰にもバレないよね。
「どんなことをしても……えへへへっ……ジュルル」
口から垂れそうになってしまった涎を吸い込み。
意を決して、息を大きく履いた。
そして、次の瞬間、毛布に鼻をくっつけて、思いきり息を吸って、禁断の匂いを嗅ぎ始める。
「はぁぁぁぁぁぁ……大地……最高っ……!」
こうして、今日も私は、幼馴染の布団の中で、大地の余韻に浸るようにして、一人暴走を続けるのであった。
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