第101話 熱帯夜(綾香5泊目)
綾香を部屋に招き入れてからというもの、二人の間にはどこかぎこちなさを感じつつも時間はあっという間に過ぎていき、気が付けば、敷き終えた布団の前に二人で立っていた。
「……どうしようか」
「どうしよっか?」
俺たちは、お互いに譲り合ってしまっていた。
「じゃあ、一緒に入るか」
「うん、そうだね!」
俺が先に座り込み、毛布を捲り体を布団へ入れる。綾香が入るスペースを開けて手招きした。
「ありがとう」
一言会釈しつつ、ゆっくりと綾香も布団の中に入って来た。綾香が寝っ転がったところで、俺は目覚ましをセットして、机の上に置いてあった電気のリモコンへ手を伸ばして何とか取り上げて枕元に置いた。
そして、俺も綾香の横に寝っ転がって枕に頭を置く。
「明かり消すよ」
「うん」
そしてポチっと消灯ボタンを押して、部屋の明かりを消した。
辺りが一気に暗闇に包まれる。お互いに向かい合ったまましばらく見つめ合っていたが、少しずつ暗闇に目が慣れてきて、表情が見えるようになると、恥ずかしくなったのか綾香がおどおどし始めた。
俺はその様子をずっと眺めていたが、意を決したように綾香がこちらに向き直ると、おいでと合図するかのように両手を広げてきた。
俺はそんな綾香の行動を見て、つい笑みをこぼす。そのまま、綾香の胸元に吸い込まれるように頭を沈めていき、ギュっと綾香の両腕に包みこまれた。
綾香の体はとても火照るように温かく、少しくっ付いているだけでも今日の気温では汗をすぐに掻いてしまいそうな温かさだった。
「あついな」
「うん、確かにあついね」
まだ夏用のタオルケットを出しておらず、冬用の毛布を被っているので布団の中は、ポカポカとしていた。
「窓開けるか」
一旦綾香から離れ、布団から出て窓を開けに行く。
ついでにカーテンも開けてしまおう。窓を開け、網戸越しに微かではあるが心地よい風が吹いてきているような気がした。
夜の月明かりが部屋に入りこむようになり、綾香の姿もはっきりと見えるようになった、布団へ戻るとこちらをニコっと微笑んだ顔で見ながら綾香が再び俺を誘うように両手を広げて胸元へと導こうとしていた。
俺もその誘いに乗っかる形で、綾香の胸元に再び頭を埋めていった。
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