第75話 ハプニング
授業を終えた俺は、最寄り駅からそのままお店へ直行して、奥まった入口からお店に入った。今日は、レストラン『ビストロ』で新たにアルバイトを始める日であった。
カランカランとドアに備え付けられたベルが鳴る。
「おはようございます」
「いらっしゃ……って大地くんか、おはよ~」
すると、制服姿の萌絵が出迎えてくれた。
既にお店は開店しており、連休明けの月曜日の夕方にもかかわらず、2組ほどのお客さんが既に食事を楽しんでいた。
「萌絵さん。今日からよろしくお願いします」
俺が深々と頭を下げると、萌絵さんが申し訳なさそうに手をヒラヒラと振っていた。
「いいっていいって! そんなかしこまらなくて、今日からよろしくね!」
ニコっと笑って萌絵が言ってきたので、俺も顔を上げて微笑み返す。
「うん、色々教えてもらうことになると思うけどよろしく」
「じゃあ、マスター呼んでくるね! ちょっと待ってて」
萌絵はそのままマスターを呼ぶため、厨房の方へとトコトコと消えていってしまった。
入れ替わるようにして、萌絵に呼ばれたマスターが、ホールへと出てきた。
「おう、大地くんおはよう、今日からだね!」
「はい、よろしくお願いします」
今度はマスターに深々と頭を下げた。
「いいよいいよ、むしろこっちこそ、色々と迷惑を掛けちゃうことになると思うけどよろしく頼むよ、とりあえず制服に着替えてもらうからこっちに来て」
マスターに手招きされて、お店の奥の方へと足を進めていく。
トイレ入り口のさらに奥にあるSTAFF ONLY と書かれたところに通される。
中に入ると、休憩室と思われる机と、パイプ椅子が真ん中に置いてあり、右側には、さらに細まった人一人分入れるか入れないかの小さな隙間が奥に続いていた。
「正面の机が休憩室だから、好きに使っていいよ。それで、右側の狭いところが荷物とか、制服を置くロッカー兼更衣室だから。左側の奥に従業員用のトイレがあるから基本はそっちを使ってね」
「わかりました」
「じゃ、着替えたら厨房に来てくれるかな。あ、あと、制服は更衣室の奥の入れ物に入ってるから」
「わかりました」
マスターは一通りの説明を終えると、キッチンへと戻っていった。
俺は一人休憩室に取り残された。ひとまずは持ってきた荷物を机の上に置いて、ロッカーのある更衣室の方へと向かう。
更衣室は簡易用のカーテンがあるだけで、その手前にロッカーが連なっていた。
ロッカーは一人ずつ配置されているようで、一番手前側の下に「南」と書かれた新しい綺麗なネームプレートが貼り付けられていた。
カーテンの奥に、制服が入っている入れ物があるのに気が付いた。
俺は制服を取るために、更衣室の奥へと歩みを進めると……そこには、脱ぎ捨てられた状態で地面に置かれている、誰かの私服が置いてあった。
見た感じ女性もので、白のカーディガンと茶色のスカートにタイツが脱ぎっぱなしで置いてあった。
萌絵がそのまま置いて、出ちゃったのかな?
俺は疑問に思って一度ホールに戻り、萌絵を呼びに行こうと、ロッカーから入口のドアに向かった時であった。
ジャーっと言う水の音が聞こえた。どうやらトイレに誰かいるようだ。
ガチャっとドアが開かれて、真っ白な肉付きの良い体つきをしたピンクの下着姿の女性が出てきた。
俺はその女性と目が合った。そこにいたのは、下着姿でトイレから出てきた愛梨さんだった。
「え? 大地くん……??」
「あ……あ、あ、あ、愛梨さん!?」
俺は一瞬で頭がフリーズした。愛梨さん、その下着姿は心臓に悪いです。
「キャ!」
「うわっ、ご、ごめんなさい……!」
愛梨さんは恥ずかしそうに!身体を縮こまらせて、胸と下着を手で隠した。俺も必死に目を地面に向けて顔を逸らす。
「な……なんで下着姿なんですか!?」
「そのぉ……部屋に誰もいなかったから、制服着る前にお手洗いを済ませちゃおうと思って」
「なっ、なるほど……」
「その……見た?」
「へ?」
「だから、私の下着姿……」
「ま、まあ、それは……」
「エッチ」
「ごっ、ごめんなさい……」
「はぁ~まあいいわ。私着替えるから机に座って待ってて」
「は、はい……」
俺は愛梨さんを見ないようにして机へ向かい、近くにあったパイプ椅子に座った。
愛梨さんは、更衣室の方へと向かい、着替えに行った。
壁越しから愛梨さんの着替える衣擦れの音が聞こえてくる。この向こう側で愛梨さんが今着替えてるんだよな……
それにしても、スベスベとした肌にスラっとした体系で出るところは出てて……特にお尻のラインからくびれがシュっとなってて、その上に乗っかてるグラビアアイドル級の胸……すごかったなぁ~って、いかんいかん!
愛梨さんの下着姿が脳内で何度もフラッシュバックされ、思わず頭をブンブンと振って忘れようとした。
「お待たせ」
すると、愛梨さんが制服姿になって更衣室の方から出てきた。
白いシャツに黒いズボンのウェイトレス姿になった愛梨さんは、萌絵さんとは違い、白いシャツからこれでもか! というように二つの巨大なものが強調されていた。
お尻のラインもくっきりとしていて、ウェイトレス姿にもかかわらず、なんかエロい。
俺がまじまじと愛梨さんのウェイトレス姿を観察していると、愛梨さんがじとっとした目線で俺を睨みつけていた。
「エッチ……」
「ぐっ……」
実際にエロい目線で見ていたので、何も言い返せなかった。
愛梨さんは呆れたようにため息をついて、出口の方へ向かって行く。
「大地くんも早く着替えちゃいなさい。私は先に出てるから」
「は、はい……」
少しムスっとした表情を浮かべて、愛梨さんは店内の方へと出ていってしまった。
愛梨さんちょっと怒ってたかも……後でちゃんと謝らないとな。
そう思いながら、俺は再びロッカーのある更衣室へと急ぎ、素早く着替えを済ませて、厨房へと向かった。
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