第55話 中村愛梨の本性(愛梨4泊目)
明かりを消して、お互い別々の布団に入った。あれから何とも言えない空気が二人の間で流れて、沈黙が続いていた。しかし、先ほどの気まずい雰囲気の沈黙とは違い、お互いどこか謙遜しあったようなむずかゆい感じのそれであった。
そんな中、電気を消して布団に入った俺は、愛梨さんが寝ている方向とは逆側に身体を向けニヤニヤとしていた。
愛梨さんが俺のことを好きって言ってくれた。俺は嬉しさが抑えられず心の中でガッツポーズをしていた。
すると、沈黙を破って愛梨さんが声を掛けてきた。
「ねぇ、大地くん、起きてる?」
「はい、起きてますよ、何ですか?」
しばらく返事がなかったが、愛梨さんはモゾモゾと動いているようだった。
そして、その音が近づいてくる。ついには俺の布団が一瞬ふわりと浮いて空気が流れ込んできた。愛梨さんが俺の布団に入って来たようだ。
「今からすることで私を嫌いにならないでね……」
俺の後ろまで侵入してきた愛梨さんは、耳元で甘い声でそう言い終えると、「ふぅー」と、おもいっきり耳に息を吹き込んできた。
俺は急に耳を刺激され、身体が身震いするとともにゾクゾクした。
「はぁ~身体震わせて、可愛い~。ねぇ、もっと可愛い大地くん見せてぇ~」
愛梨さんは挑発的は口調でそう言いながら、何度も耳に息を吹きかけてくる。
「ふぁっ……」
思わず変な声が出てしまった。
「わぁ~可愛い。ねぇ、今の声もっと聞かせてぇ?」
先ほどの愛梨さんとは思えない、肉食系女子に豹変した愛梨さんに為す術もなく俺は耳に息を吹きかけ続けられる。くすぐったさともどかしさから、身体を自然とモゾモゾと動かしていた。
「こら、逃げちゃダメ。私の言うことを聞きなさい。ほらぁ」
愛梨さんは腕を俺の身体に回して抱き付いてきた。俺は逃げ場を失い、再び耳に息を何度も吹きかけられる。
ヤバイヤバイヤバイ……何がやばいって、このままだと変な扉を開いてしまいそうだった。ただただ、愛梨さんに責められて悶えてるだけの俺。どうすることも出来ずにいると。自分のモノが熱を帯びて熱くなっているのを感じた。
なんかわからないが、無性にいろんなものが悶々と込み上げてくるのがわかった。
俺は力を振り絞り、何とか愛梨さんの耳責めから逃れようと身体を回転させた。
すると、目の前に愛梨さんの顔が現れた。俺と愛梨さんは驚いたようにお互いに見つめあう。俺はゴクリと生唾を飲みこんで、徐々に顔を近づけていった。しかし、愛梨さんが俺の口元を指で抑え制止する。
「ダメ、今日はここまで」
「え?」
愛梨さんはニコっと微笑むと俺の布団から抜け出して、自分の布団へ戻っていってしまった。
俺は嵐のような出来事に言葉を発することも出来ずにただ茫然とするしかなかった。そして、完全なお預けを貰ってしまい、耳に吹きかけられた感触が残ったまま。結局一睡もできずに悶々とした一夜を過ごすことになってしまったのだった。
◇
あれから、ずっと大地くんはモゾモゾと布団の中を動いて落ち着かない様子であった。
あ~大地くんやっぱり可愛いぃ……!!
あんな反応されたら、ますますしてあげたくなっちゃうじゃない!
私は布団の中で必死に声を出すのを我慢して、悶えながら満面の笑みを浮かべていた。
大地くんが私のこと好きって言ってくれたけども、私にとってはまだこれはスタート地点にすぎなかった。
今度は、大地くんが私なしじゃ生きていけないくらい虜になってくれるように、じっくりと染めていかないと……
徐々に私色に染め上げていく大地君の姿を想像しただけで、思わず顔がにやけてしまう。
あぁ!! もう、1週間に1回じゃ物足らないくらい大地君をもっと悶えさせたい。そして、大地くんの方から我慢できなくなって手を出してくれる日まで……私はそんなことをずっと、布団の中で妄想に浸るのであった。
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