壱幕

日丸が森を抜けようとしたその時、日丸にとっては聞き慣れた音が聞こえた。

ガサガサ…!

「………!!」

「武士殺しの日丸殿、覚悟ーーー!!!」

チャキン!

背後から日丸の首を取ろうと幕府の刺客が襲いかかる。しかし、彼にとっては不意打ちなど無意味に等しい。

カチャ…バシッ!!

「ぬぉぉ!?」

目にも止まらぬ抜刀で不意打ちをした武士一人を斬る。だが刺客も一人ではない。日丸の周囲には取り囲みに4、5人は刺客がいた。

「……………」

日丸は焦る顔も見せなければ、余裕という顔も見せない。常に油断してはならないという感覚が彼の中にあるのだろうか。ただ一言も話さずに腰に携えた1本の刀を握るその姿はいつでも刀を引き抜けるという構えなのか。

「行けっ!!」

「うぉぉぉぉ!!!」

「でやぁぁぁぁ!!!」

ガチン!!バシュッ!!バシュッ!!

周囲を取り囲もうが、やはり日丸には無意味。アクロバティックにスルスル避けては斬るという作業の繰り返しだ。彼の幼少期から鍛えられた身体能力は計り知れない。

「ぐぎゃああああ!!!」

「がぁぁぁぁぁ!!!」

気がつけば日丸の周囲は血にまみれた土俵となっていた。その土俵の中には背開きになった死体、首を大きく刈られた死体などがごろごろとしている。

カチン。

刀を鞘に仕舞い、日丸は再び村へと進んだ。


ー村ー


この村は少しばかり大きめの村だ。日丸は今日泊まる宿屋の前に着いていた。

弐幕に続く。

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