見ていて辛いドッキリ番組。(水曜日のダウンタウンについて)
古新野 ま~ち
第1話
ドッキリ。聞いたことも見たこともない人もいるかと思いますのでとりあえず、「個人や集団がパニックに陥れられるところを笑う」といえばいいでしょうか。
人の気持ちを踏みにじっているやら人を嘲笑うのは悪趣味だ、ということを言いたいのですが、悪趣味とはそのような自分の至らなさを含めて自覚しているから耳タコの人も多いでしょう。ですが、もう一度その耳にできたタコを弄らしてもらいますから。すいません。痛いとかウザいとか知りません。
ドッキリで重要なのは、ターゲットが驚いているということだと思います。そこに成功するならば背後から大声を出すことから大掛かりな落とし穴まで等しくドッキリと呼ばれるものだと思います。さらに、テレビで流れるならば、視聴者に笑ってもらえるということが条件になるのでしょうか。
人を驚かすことで問題になることは、それが犯罪を想起させる場合でしょうか。女性に夜道で襲うという内容が問題になったケースがありました。それは当然のことです。そんなことで笑ってしまう人は一度自身が何に笑ってしまうかについて悩んでみてください。前提として、誰にも人権があるのですから暴力は許されません。しかし笑いは案外、生きてきた環境と密接に関わっているから絶対的なものではありませんので、ときとして暴力が面白いことになってしまいます。
さて、どうしても槍玉にあげたいドッキリとして「水曜日のダウンタウン」のクロちゃんに関するものです。大方、こういう内容になってます。
1 クロちゃんの私生活を隠し撮り
2 クロちゃんが人に隠していることを暴いて笑う(食事内容、体重などクロちゃんがTwitterに書いたこととちがう)
3 クロちゃんにそれを問い詰めてしどろもどろになる彼を笑う
といったものでしょうか。
さて、このクロちゃんドッキリシリーズが回数を重ねるごとにひどくなっていってることは、視聴者ならわかると思います。最初の方は私生活を暴くくらいだったのが、クロちゃんの醜態やら女性との接し方が常識を逸脱していることなどから、モンスターなどと言われはじめました。そうして、最新の回では牢屋にはいって見せ物にするという風な笑いになったんですから驚きです。ただしこの見せ物として晒しておくことは視聴者が殺到したため問題になり、すぐに終わったそうですが。
また、私生活を暴くことにおいても、クロちゃんが健康面にたいして無頓着であることを医師に指摘されたらしいのですが、そこから食事の虚偽報告がさらに笑えるものとなりました。
これはイジメだと言ったところで、さっきもいったように育った環境によればただのお笑いにしかならないと思います。
面白いとはじめの方は思っていました。しかし、これは明らかな暴力だと考えるふうになりました。きっかけは、クロちゃんとして笑われることからモンスターとして笑われることへの変化が、どんどん過激になっていったからだと考えています。
では、その過程を記していきます。
まずは、ドッキリとしての笑いから始まりました。これは先述したようにターゲットが驚くことの笑いです。数々のドッキリ番組と似たようなメソッドです。ターゲットが想定通りのパニックになることで起きる笑いですね。そして、そこでクロちゃんが嘘つきであることが暴かれました。嘘つきがぐうの音もでない程こらしめられました。
また、クロちゃんは普通の人ならあり得ないような寝相を撮影されてしまいました。お酒に酔っていたとはいえ、非常に滑稽な姿でした。この寝相の悪さは「モンスター」とまで形容され笑いになりました。
やがて、クロちゃんは女性への接し方が気持ち悪いということが暴かれました。彼の性格が悪いのでしょうか、そこは分かりませんが、とにかくクロちゃんは非常識な人物として扱われます。
だらしのない食事を偽ってTwitterをするクロちゃんということが知られると、医師たちにも注意されてしまいました。このままでは命が危ないといったものでしょうか。しかし、そう言われてもだらしのない食事をやめないクロちゃんは、病気で死んだらいいのにと番組で言われてしまいました。また、その私生活を暴くことを神様がみていると表現していました。
最終的には、これが撮影されているというのを知っているにも関わらず、女性関係などで思慮の無い行動をし続けるクロちゃんを「モンスターハウス」として放送し、それがモンスター収監というオチに繋がりました。
おそらく、この順番をたどることができたからクロちゃんを檻にいれることも笑いになったのだと思います。クロちゃんに何をしても、それ以上に愚行を重ねるクロちゃんに対してなら笑ってすませることができますし、丁寧な仕事だと思いますが、視聴者が安心して笑えるようにモンスターとまで形容しました。死ねばいいのに という文言さえ笑いになってしまいました。
誰かが死ねばいいのにと言われているのをみて笑う人は、おそらく少数だと思います。入念に、番組が長い時間をかけ、クロちゃんにならば「死ねばいいのに」と言うことが笑いだということにしてしまいました。
コンプライアンスが厳しい世の中になってバラエティー番組がつまらなくなった中で「水曜日のダウンタウン」は、この暴力的な内容が、過激な面白さを追及しているという評価を得ているそうです。
誰でも手軽にアクセスできる公共の電波とはそういうものであり、暴力は何があっても許されません。しかし、昔のような暴力的な内容を望む人は多いようなので需要はあるのだと思います。
しかし、本来は許されないはずの暴力ですが、何がそうであるのかという認識をズラしていくことに成功すれば、暴力は相変わらず面白いものとして好評を得るのだということなのでしょう。
私生活を暴くことは暴力なはずですが、彼が嘘をついているから仕方ないんです。それに笑えます。
人をモンスターだと言って囃し立てることは暴力のはずなのですが、彼がひどく常識が欠如しているから仕方ないんです。それに彼がフラレる様は笑えます。
人に死ねばいいのにというのは暴力のはずなのですが、医師の言うことを無視して食事をするのですから仕方ないんです。それに彼は医師の権威を馬鹿にした発言もします。死ねばいいのにというのは自然な気持ちの現れなんでしょう。何より慌てる彼の姿は笑えます。
彼が収監されるという罪人のような仕打ちを受けてしまいましたが、もはやそれは絵面だけで笑えます。
どこか途中からクロちゃんなら仕方ないと思っていた人が多いのでは? モンスターと番組が形容してくれることでクロちゃんの尊厳が無視されていることでさえ笑ってしまえる人が多いのでは?
べつにクロちゃんがどのように今の現状を思っているのかは知りません。正直、どうでもいいです。これを面白いものとして仕立てあげる立派な仕事をした人達と、協力した人達と、このことをどうも思わない人達がいたというだけなのでしょう。
全員、死ねばいいのに。
見ていて辛いドッキリ番組。(水曜日のダウンタウンについて) 古新野 ま~ち @obakabanashi
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