第13話 日本では年間100万もの人が亡くなっている?

 日本では年間100万もの人が亡くなっている、と言ったらあなたはどう思うだろうか。


 そんなの当たり前だろう、いやそれはおかしい、どちらだろう。実のところ、私は後者だったのだが、少し考えるとそれぐらいは亡くなっていないとおかしいのである。

 すごく大まかな計算をしよう。日本の人口を1億人とする。そして、寿命を切りの良いところで、100歳までとしたらどうだろう。これだと、1年間に100万人が亡くなって、100万人が生まれればちょうど良いことになる。


 どうして、こんなことを考えついたかと言うと、あるブログで「日本では殺人事件で命を落とす確率は極めて少ない」という記事を読んだからである。記事には、人口動態統計を一度見てみれば意外な発見がある、ともあったので実行してみたのだ。



 人口動態統計は、厚生労働省が実施している統計調査の一つで、今ならネットで簡単に見ることができる。私が、学生の頃は、図書館から冊子を借りてきてノートにせっせと写し、レポートのためのグラフを作ったりした記憶がある。


 さて、2017年(平成29年)のものを見ていこう。

 年間の死亡者数を確認すると、約134万人である。一方、出生数は約94万人で、人口が40万人ほど減っていることがわかる。死者の数が多いように感じるが、次はその内訳を見ていこう。


 表が細かいので、わかりやすい死因順位(第10位)までの項目を見ていくことにする。


 1位は、悪性腫瘍で約37万人。

 2位は、心疾患の約20万人。

 3位は、脳血管疾患で約10万人である。


 この3つは、日本人の3大死亡原因として有名だから知っている方も多いのではないだろう。この3つだけで、約67万人もの人が亡くなっている。


 4位は、老衰で約10万人。

 5位は、肺炎の約10万人。

 6位は、不慮の事故で約4万人。


 6位になって、初めて病気以外の原因が登場してくる。不慮の事故ってなんだろうと思ったので、別の表で確認してみると、交通事故や転落、溺死、窒息、火災などの項目が並んでいる。交通事故は約5千人で、一時期よりは減った印象がある。転倒・転落・墜落がもっとも多くて約1万人、不慮の溺死及び溺水が約8千人。溺死が多いような気がするが、これはお風呂だろうか。

 お風呂で亡くなる人は年間で約2万人いるという話を聞いたことがあるが、温度差によって脳疾患などを発症したことが原因である場合もあるから、病気の項目に含まれている事例もあるのかもしれない。お風呂で人が亡くなると、保険金の支払いの関係で、病気か事故かで揉めることがあるらしい。

 

 再び順位に戻るが、7位・8位・10位はいずれも病気である。

 7位は、誤嚥性肺炎で約3万5千人。

 8位は、腎不全の約2万5千人。

 9位は、とばして、10位は、血管性等の認知症で約2万人。


 とばした9位は何かというと、なんと自殺で約2万人の方が亡くなっている。男女別でみると、男性が約1万4千人亡くなっているので、男性の方が7割だろうか。自殺の順位の高さといい、考えさせられるものがある。

 死亡順位が高い方から10位までで、おおよそ100万人の方が亡くなっている。やはり病気は怖いという印象だが、皆様はどう感じたのだろうか。



 ところで、死因について気になる項目があるのではないだろうか。特にミステリ好きな方なら、なおのこと。

 実のところ、私はそれが知りたくて人口動態統計を確認したのである。


 死因簡単分類別の表を見ていくと、下の方に「他殺」の項目がある。

 2017年の数字は、288人である。


 予想よりも少ない、と思った方が多いのではないだろうか。もしかしたら、この年だけ特別かもしれないので、念のために別の年も確認してみる。


 2016年は290人。

 2015年は314人。

 2014年は357人。

 2013年は342人。


 どうやら2017年が特別少ないわけではなく、だんだん減ってきているようだ。交通事故や自殺の件数に比べると、はるかに小さな数字である。なんだかんだ言っても、日本の治安は良好なのだろう。

 ふと思いついて、法務省の犯罪白書で殺人の認知件数を調べてみると、こちらの方が数字が大きい。不思議に思ったのだが、犯罪白書の認知件数は、未遂を含むなど定義が異なるので、人口動態統計の数字とは一致しないようである。



 さて、なんだか偉そうに語ってしまったが、基本的に人口動態統計を見て感想を言っただけである。もし、興味を持たれた方がいたら、厚生労働省のサイトを直接見た方が何倍も有益だろう。 

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