第4話 都市伝説 ハンバーガーの肉に関する珍しい話
有名な都市伝説に、ハンバーガーの肉に関するものがある。
これについて知っている人は多いと思うのだが、私は大学生の頃に、知人から珍しい説を聞いたので紹介したいと思う。
まず、ハンバーガーの肉に関する都市伝説について軽く説明しておく。
ある人が、お店でハンバーガーを食べていると、肉の中にミミズらしきものを見つけた。店のオーナーに抗議すると、どうか内密にと言って口止め料を渡される、というのがだいたいの筋である。細部が異なるバージョンはいくつかあるのだが、ハンバーガーにミミズの肉が使われている、という衝撃的な部分は共通していたように思う。
なかなか面白い都市伝説だと思う。
ハンバーガーにミミズの肉が入っているというのは、普段から何気なく食べている食材に気味の悪い材料が使われている、という恐怖を狙った演出だと思うし、大企業がこっそりと悪いことをして利益を上げているというのは、比較的受け入れやすい設定だろう。
しかし、少し考えればリアリティは、ほとんどないことがわかる。
ミミズの肉というと、安くて大量に手に入るように考える人もいるかもしれないが、ミミズを食用にするには大変な手間がかかる。ミミズは土を食べるから泥を取り除く作業が大変だし、肉の部分が少ないので効率も悪い。どこかに工場を作って大量生産していたとしても、秘密保持にかかるコストだって莫大なものになってしまうだろう。
一説に、この都市伝説は、ミンチ肉の形状がミミズに似ている、ということから生まれたらしい。
さて、ここからが本題である。
大学の食堂で私の知人は「ハンバーガーの肉に使われていたとされているのは、ミミズではなくてカンガルーの肉だった」と言った。どうしてカンガルーなのだろう。ミミズの肉だって、ありえないのにわざわざそんな珍しい動物の肉を使う必要があるのだろうか。
知人が言うには、カンガルーの外見はユーモラスで可愛いが、実は害獣なんだそうである。カンガルーが生息するオーストラリアでは牧畜が盛んなのだが、家畜用の牧草を食べてしまうらしい。しかも、カンガルーは優れた跳躍力で柵を軽々と飛び越えてしまうので対策は難しいそうだ。
やむなくカンガルーを駆除しているのだが、それが結構な数になるらしいのである。そして、カンガルーは草食性で牧草も食べることから、同じ食性をもつ牛と味が似ているらしい。
そこから、駆除されたカンガルーの肉が何かに使われているのではないか、という疑惑が生まれたのである。
疑惑を持ったのはある動物愛護団体で、ハンバーガーの肉に駆除されたカンガルー肉が使われているのではないかと思い込んだらしい。団体としては、これをやめさせたい。しかし、ハンバーガーにカンガルーの肉が入っている、という説明ではインパクトが弱い。そこで、よりショッキングなミミズの肉が混ざっているという噂を流した、ということらしい。
以上が、知人がどこからか仕入れてきた説だ。
ハンバーガーの肉に、駆除されたカンガルーが使われていると思い込んだ動物愛護団体が、それをやめさせるためにミミズの肉の噂を流した、というやや込み入った話である。
私はこの話を適当に聞き流したのだが、この説を聞いたのはこのときだけであった。一体、知人はどこから仕入れてきたのだろうか。
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