第16話 時を駆けるオーディション~激闘!アドリブ合戦!! 後編 

 「あ、ちょっと待って!」


 ステージへ戻る前


 「これで大丈夫!」


 マーゲイさんにぼく達は、服の襟に小さなマイクを仕込んでもらう


 「あはは!くすぐったいよ!!」

 「サーバルちゃん、ちょっとだけのがまんだよ」

 

 「……これでさっきみたいに大声出さなくても大丈夫!カラカルさんは、さっきのでそのまま、お願いしますね!」

 「ありがとう!」

 「解ったわ」


 スタンバイ完了の合図を出すと


 マーゲイさん、戻って行った


 パタパタとした駆け足の音がぼくの心音と繋がる……


     今、ぼくは生きている


 「カラカル、ありがとう」

 「急になによ?」

 「ううん、なんでもないよ」

 「変なの……」

 

 「カラカル、キュルルちゃん、みんな待ってるよ!行こう!!」


 薄暗い場所にしばらく居たからか、目の前がハレーションを起こし急に何も見えなくなってしまった


 覆っていた腕から微かに見えたステージ中央にはまだ誰も居ない


 『うう……ちょっと待ってて、……うん、これで大丈夫。さ、続き始めるわよ』


 カラカルさんのアナウンスからまた、かばんさんの軌跡を追い掛ける旅が始まる!


 


 『バスに揺られて三人は、ボスの案内でさばくちほーに訪れたの。砂が作り出す光景はそこでしか見ることが出来ないそうよ?しばらく進んでいると、もうすぐそこまで砂嵐が迫ってきて、それに加えてなんとバスはその場から進まなくなってしまったの!』


 「砂嵐は起こせはしないがな。どれ……」


 観客席のどこからかそう呟く声がして


      ぶわあっ……!


 「うっ……」


 ほんの一瞬の出来事だったけど、ここまで一直線に風の塊が押してきた!

  

 フレンズさんが降ってきたよ!?


 「うぎゃー!」


 「ごつん!」とサーバルさんの頭に直撃してしまった!


 「お?」

 「いたた……」

 「サーバル、久しぶりですね!」

 

 お互い頭をさすりつつも黒子イエローさんがすかさずやって来て、氷を入れたやつを二人に渡した


 「サーバルは、相変わらずのドジっ子さんですね」

 「ええ!さっきのはわたしのせいじゃないよ!?」


 なんかこの声、聴いた事有るような……?


 『まぁまぁ二人とも、落ち着いて?』


 「いやぁ、済まない!私は、いや、ここに居る全ての者がぬし達の行く末が気になって仕方がないのだよ?役者は揃って居る。さぁ、その力存分に奮うがよい!」


       ゴゴゴゴゴ……


 名前は言わなかったけど、あの方絶対にただ者じゃあない!

 

 「怯える事なかれ、ぬしの目の前には無限の広野が広がっているのだからな!っと、私は邪魔したようだ……」


 『なんか、ヤバいのが居るのね……』


 と、ぼくも集中しなくちゃ!


 「スナネコさんは、どうしてここへ?」


 「んと……」


 少し考えた後、閃いたように次の言葉を紡ぎ始めたスナネコさん

 

 「すっごく大きな砂嵐だったので、夢中になって見に行ったら飛ばされて、気付いたらここに……」


 (見てたら、後ろから急に飛ばされて、びっくりです!)

 (ははは、そうだったんですね……)

 

 そしてちょろっとだけさっき起きた出来事もお話してくれた


 降ってきた時も、一瞬「何が起こったのか解らない」って顔をしていた

 普通ならとても驚くし、そんな事になったらぼくもスナネコさんのようにぼうってなるのは、想像に難しくはない


 「ぼく、気になるものがあると夢中に……おお!!」


 (目の前にはバス?が有るつもりです……!)

 (あ!そうだ!)


 「ああ!」

 「どうしたんですか!?」

 「きれー!」

 「この羽飾りの事?」

 「はい」


 うお!?真顔になるまでが早いぞ!!


 「じゃんぐるで、バラバラになってたバス……大変だったんだよー……でんち?を持って……」

 「なるほど……」

 「ちょっとはノッてよ!?」


 「スナネコノカラダハ、ネッシヤスク、サメヤスイトイワレテイルヨ」


 「あ、ボスがしゃべってるー!……でもまぁ、騒ぐほどでも無いか……」


 「冷めるの早いよ……」

 「ははは……」


 スナネコさん、かなり手強そうだぞ……


 『砂が作り出す山がたくさんだった場所から景色は変わって平たい場所へ着いた四人。』


 ボスから砂漠について教えてもらった

 砂漠は、ほとんどが岩石に覆われていて、真っ白な砂漠や、小石ばっかりの砂漠も有るんだって

 ぼくのイメージは、砂で覆われていて、とにかく暑い場所って感じかな?


 「しゃべってるボス、楽しいですね!」


 これはまたまたこそっと教えてくれたんだけど、フレンズさんとボスがお話出来るようになったのはホントについ最近の事だから、とても嬉しいと話してくれた


 『昼間はめちゃくちゃ暑いから、スナネコのおうちは洞窟の中。涼しさ求めて案内してもらったの』


 「まんぞく」

 「ええっ!?」

 「あなた達といっしょだと飽きないからまたいっしょに遊びましょ?」


 「こちらこそ!」

 「スナネコさん、ありがとうございます!」


 スナネコさん退場


 「スナネコ、あんな感じの子なんだ……」

 「あらら……」


 超絶マイペース

 スナネコさんは、ぼくの印象だとその一言に尽きる


 色んな方が居るんだなーと改めて実感


 『スナネコと別れた三人は、掘ってもらった通路から、としょかんへと繋がる道へと進んだの。あ、サーバルは眠くなっちゃったみたいね?』


 「ふみゃあ……わたし、もらいあくびしちゃったよ……」

 

 「ぼくも。サーバルちゃん、夜行性だもんね」


 そんな事前言ってたなー?なんて思い出しつつ、記憶力と想像力をフル回転させ、場面を思い浮かべる……


 『周りは真っ暗!そんな道をしばらく進んだらサーバル、なにか発見したみたいね?』


 「サーバルちゃん、なにか分かる?」

 「入ってみよっか!」


 『暗がりの中を進む三人、あたしよく解んないけど……迷路?になってたらしいわ』


 「うーん……」


 お写真で見たこと位なら有る

 行けるかどうか解らないけどそれで行こう


      なんだ……ッッ!?


 「皆の者ォ出合え!出合えェイ!!」

 

 『にゃにいっ!!?』


 レッドさんの掛け声と共に「ちょっと行ってくる」とあちこちで声がしてセルリアンさんの大群がステージを、覆い尽くした!!


  「祭りだああああああ!!!!」


         合

         体

         !

         !  


     「聞いて驚け!」

     「見て笑え!!」

  「あなたの隣に這い寄る混沌ケイオス!」


 『なんで、そうなるのよ!?……あー、取り乱してなんかごめん……』

 

 あちこちで聴こえてくる「全然わからん……」コール

  

 そりゃあそうだよ!?

 

     「さ、出来たぞ!」


 セルリアンさんチーム?による板がたくさん並んだおかしな物が完成した


       「うん」


    ぼくは考えるのをやめた


 外からは見えるけど、視線を中にズラすと道?になっている


 「フフフ……キミに脱出できるかな?まー、暗くするのは、出来ないけどそこは雰囲気で何とかして!」

 「アッハイ」


 「……と、後ろに誰か居るようだ……」

 「よお……」


    ギャアアアアア!!!!!


 「ツチノコ!いつの間に!?」


 「そろそろ出番だと思ってな?待ってたんだ」

 

 「ツチノコさん、なんで隠れてるんですか?」


 叫んでしまった時、驚かせてしまったのかもしれない……

 隙間からチラリとこっちを見てる


 「オレは……この方が……落ち着くんだよッッ!」


 言わないでおいた方がいいかな?


 「でも、外から見えるみたいだよ?」


 あちゃー、サーバルさんそれ言っちゃった……

   

 「後ろ見てみろ」


 いつの間にか塞がれてる……


 「オレが見えてなきゃ何とかなる!」

 「アッハイ」


 とりあえず出口目指して歩き始めたぼく達

 

 しかし、凄い……


 ちょっと歩いたら行き止まりになったり、構造がとても複雑に入り組んでる


 「スゲェ……溶岩で塞がれてる所までキッチリ再現してやがる……」


 そして外からは


 「そっちじゃないよ!」


 とか 


 「サーバル右!右!!」


 とか


 「……すまねぇ、今はオレのピット器官が使えねぇから地道に出口探すしかねぇな……」


 ツチノコさんの特殊能力「ピット器官」

 普段は、襲ってくるセルリアンを感知するためにある力らしいんだけど


 「フフフ……」


 襲ってこないセルリアンさん達も感知してしまうらしい……


 しかしおかしい……


 「ねぇ、サーバルちゃん、ツチノコさん……」


 「あぁ、オレ達は完全に飲まれたみてーだ……」


 ぐるぐるぐるぐる、なんだかずっと同じ場所に戻って来てる気が……


 「お?」

 「おい、かばん、なにか見つけたのか!?」

 「はい、アレ……」


 壁の上には、見覚えの有る目印が……


 「うっ……!」

 「キュルルちゃん!どうしたの!?」

 「おい!オマエ……!!」

 

 そうか!思い出したぞ!!


 「サーバルちゃん、ぼく思い出したんだ!」


 あの夜、起きた事件の事を


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 お姉さんに有難うを伝えるため、お父さんと一緒にあの場所に向かったんだ


 最終のジャパリラインに乗ってしばらく揺られ


 「お父さん、ここから歩いた先に居るはずだよ」


 営業時間がナイトサファリに切り替わるその時間

 ジャパリラインの中では、フレンズさんと他のお客さんがおしゃべりを楽しんでとても賑やかだった


 「あれ、居ない……」

 「アイ、ちょっと冒険してみようか!」

 「そうだね!」

 「よーし、父さん頑張っちゃうぞ!」


 草木を掻き分け、進む

 進む……


 あれ?

 身体が言うことを聞かない!?


 「あ……アイ!!」


 お父さん、そんなに慌ててどうしたのかな?

 それに、身体が重いし、なんだか急に寒くなってきちゃった……


 途切れ途切れの意識の中、お父さんはぼくを抱っこしたまま走った

 

 最後に見えたのは……

 

 そこでぼくの意識は途切れたんだ…… 

 

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 「……ル!」

 

 はっ……!


 「ここは……?」

 「キュルルちゃん、いきなり倒れちゃってびっくりしたよ……」


 辺りは真っ暗、もう夜が来てる

 あれだけ賑やかだったのにしんと静まりかえったライブステージは寂しそうにしてる

 

 「うう……お父さん……」


 「オマエ、もしかしたらあの時の生き残り、なのか……?」


 ツチノコさんに、あの夜の出来事を話した


 「そうか……辛かったろう……すまねぇ、オレらには何もしてやれなくて……」

 「いえ……」   

 「これ以上は聞かねぇよ……」


 そして


 「ぬし、問おう。運命に抗うか、それとも……」

 「あなたは……」

 

 昼間、ただ者じゃないと一目見て感じたフレンズさん


 「私はおこたでだらだらするのが好きなフレンズ、ビャッコだ!」

 「はぁ……」


 あの後、一旦休憩を挟みペパプの新曲ライブが有ってその後お開きになったらしい

 

 他のメンバーは、先に発ったと


 「ぼく、一度ペパプのみんなにごめんなさいしてきます。ビャッコさん、ツチノコさんお話はそれからします」

 「あたしも行く」

 「わたしも!」

 「サーバル、あんたが謝る必要は無いの。解る?」

 「カラカル、キュルルちゃん、ボス。わたし達、一蓮托生。でしょ?」

 「それもそうね……そんな難しい言葉、どこで覚えたのよ?」

 「かばんちゃんから教えてもらったんだ」

 「……じゃあ、カラカル、サーバルちゃん、ボス。よろしくね」

 「タブンワカルカモダケド、ヒカエシツマデアンナイスルネ?」

 

 一通り話がついた処で


 「じゃあ、ビャッコさん、ツチノコさん行ってきます」


 控え室に居るかどうかは解らない

 ボスを通じて連絡を取った方が良かったかな?って思ったんだけどそのまま行く事にした


 もし、休んでいたら明日にしよう


 そう決めて、ぼく達はペパプのいる「かもしれない」控え室を目指したのだった……





 しゅっぱつしんこー!ジャパリパーク!!


 

 


 


 

 

 


 


 


 


 


 

 

 



 


  

 


 


 


 

  

 


 


 

 


 

 

 




 

 


    


 



 

 


 


 


 


 

 


 

 


 


 

 


 


 

 

  

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