第15話 時を駆けるオーディション~激闘!アドリブ合戦!! 前編

 到着と同時に呼ばれたぼく達は


 「ギギギ……」

 「キュルル!?」


       ふぅ~……


 「ッッ!?」


 ガチガチなってしまったぼくにサーバルさんは耳にそーっと息を吹き掛けてきた


 その場でガクッとなってしまって


 「えいっ!」

 「グホァッ!!」

 「しっかりなさい!誰も食べちゃったりしないわよ!!」

 「キュルルちゃん、楽しもうよ!たくさんのフレンズの前でやるなんてなかなか無いよ!」


 サーバルさんは凄いな……緊張しないのかな?


 何をやるのか全く決めてない中、ステージの上へと歩を進めたのだった


     わあああああッッ!


 うおっ!?


 ぼくは声にならない声を上げる


 やっぱりこれだけ大勢の前は緊張するな……


 あれ?サーバルさ……


 「!?」


 『ここは、きょうしゅうさばんなちほー。木の上でぐっすり眠っているサーバルは何か気配を感じたみたい。あ、木の上って結構快適なのよ?』


 カラカルさんが物語を紡ぎ始めるとあれだけざわついてた場が水を打ったように……


 あれ?


 さっきまで横にいたはずのサーバルさんが前から飛び掛かってきた!?


 (食べないでください!だよ)


 「た、食べないでください!!」

 「食べないよ!!」


 あまりの気迫にぼくは、息も絶え絶え

 太陽に反射してぎらりと牙が覗く……


 「あなた、どこから来たの?なわばりは?」

 「なわばり?」


 『飛び掛かられた子は急な出来事に戸惑いを隠せなかったみたい。だけどサーバルは語り掛ける。まー、あたしもこの子と付き合い長いし、困ってる子、ほっとけなかったのかもね』

 

 「あなた、何のフレンズ?」

 「すわ、フレンズ?」

  

 (そうそう、その調子!)

 

 こっそーりと教えてくれる


 「鳥の子ならここに羽!……あれ?無い……」

 「うええ!?」


 『ちょっと調べたら解るかも!そう思ったサーバルはわちゃわちゃし始めた。あ、でも初対面じゃびっくりしちゃうわよ?』


 「フードが有ればヘビの子!……でもない!?あーれー?」


 『そこでサーバルはその子が持ってた持ち物が気になって手に取ってみた!』


 「あれ?これは?」


 ふと、ぼくは言い回しを変えてみることに

 

 「かばん?かな?」

 「かばん、かばん……」

 「何か、解る?」

 「わかんないや!」


 どうだろう?


 みんなから見えない方、右目をチラッとウインクした

 

 当たりかな?


 「これは、としょかんに行かないと分からないかも……」

 「としょかん?」


 『サーバルは、かばんと名付けられたその子と一緒にとしょかんに連れてく事にしたの。なんでも、物知りで有名な子達が居るらしいわ。おっと、分かる子は今はナイショよ?さばんなちほーを出発した二人は最初の危機?を迎えたわ。あそこを見て?』


 カラカルさんが指を「パチン!」と鳴らすと端っこからブルーさんが!


 「……ふっふっふ」

 「ブルーさん?」

 (しっ!今は名も無きセルリアン!)

 (あ、ごめんなさい……)

 「かばんちゃん逃げて!セルリアンだよ!!うみゃみゃみゃみゃーっ!!」


 サーバルさんが軽く触れると


 「グワーッ!パッカーン!!サヨナラァッッ!!」

 

 ステージの端っこに盛大に飛んでいった


 お、セキショクヤケイさんナイスキャッチ!!


 驚いて尻餅をついてしまう……


 『自慢の爪をキラリと光らせると、セルリアンの弱点、石を叩き難を逃れることが出来たの』


 「サーバルさんは、凄いや……ぼく、普通に案内してもらうだけでそんな感じだし……やっぱりぼくって相当ダメな……」


 襲われたあの時、何も出来なかった……普段一緒に居てくれる二人にはやっぱり敵わない

 

 もちろん、他のフレンズさんにも


 これは、ぼくの本心から出た台詞……


 「かばんちゃん、ううん、キュルルちゃん、顔を上げてよ?あたしだって普段からドジー!とか、ぜんぜんよわいー!とか言われるもん!それに、キュルルちゃんはすっごい頑張りやさんだから、きっとすぐ何が得意か解るよ!!」


 「サーバルさん……」


 『まぁ、ちょっとズレてゴメンね?でも、あんたの事、実はあたし達はちゃんと見てるのよ?……気を取り直して……それから、三人は、長い旅に備えてボスから教えてもらったバスって乗り物を探すことにしたのよ……にゃにっ!?』




    「ちょーっと待ったー!!」




 ステージ外から威勢の良い二人組がバック宙で乱入してきたよ!?


 「いやぁ、懐かしいね!あ、あたしはじゃんぐるちほーの川渡し、ジャガーだよ」

 「たーのしー!あははー!!あたし、コツメカワウソ!!」


 ジャガーさんとコツメカワウソさん、その当時を振り替える


 「さばくちほーとさばんなちほーを繋ぐ橋が流されちゃっててね?っと、キュルルだっけ?あの時の事ちょっとやってみようか!」


 「これ、オーディションですよね!?」

 

 「まぁ、良いんじゃない?」


 ははは、と笑顔がとっても素敵なジャガーさん


 後でマーゲイさんにごめんなさいしようと思った


 [そのまま続けてください!そのまま行きます!!]

 

       おぅふ……


 「キュルル、……あ、今はかばんだね!」

 

 こうなったらとことんやるしかない!

 かばんさんは逢った事あるし、まぁ、何とかなるかな?


    そう思わないと潰される!!


 「ここは、じゃんぐるちほー。あたしは大きな川でさばんなからさばくに渡る為のあんいん橋が流されちゃって無くなってたものだから、この子、コツメカワウソに手伝って貰って筏を作って渡しをしてたんだよ」


 「そーそー、ジャガーちゃん力も強いし泳ぐの得意だもんねー」


 「ヒトナラバスヲアツカエル、ソウオモッタボクハソコマデアンナイシタンダ。ソレニ、ジャパリトショカンマデハトテモキョリガアッタカラネ。サバンナカラミッツモチホーヲケイユシナクチャイケナカッタンダ」


 「おお、ボス!久しぶり!!今はキュルルと一緒なんだ」


 「カバンノトハチガウケド、ソノアツカイデダイジョウブダヨ!ハジメマシテ、ジャガー、コツメカワウソ」


 「おっけーりょーかーい!んで……」


 あの時を懐かしむ様に、みんなで場面を味わうかのように……


 (キュルル、目を閉じてごらん?)

 (うわぁ……)


 見える!見えるぞ!!


 川を下る


 ぼくが横になると、大体三人分位の川幅

 そこを筏に乗って進むぼく達


 おぶってもらってゆらゆらしてる感覚がリアルな臨場感だ!

 

 「あたしも、自分で泳げるけど面白いからつい乗っちゃうもんねー!」


 なるほど、コツメカワウソさんの気持ちが解る……

 

 「川の中から木が生えたりして珍しい光景ですね!」


 「ここから見る景色、面白いだろ?……さぁ、大きい川に出るよ!!」


 その一言で、今までとは全然比べ物にならない大きな川が視界一杯に広がる


 『見えない子達には解らなくてごめんね?大丈夫、あたしもわかんないから。ジャガーに渡してもらってバスを見つけたまでは良かったんだけど……』


 「ウンテンセキガナカッタンダ……」


 「あたしは、向こう岸で似たようなの見てたからそこに案内したんだ。そこからどう運ぶか……」

 (目を開けてごらん?)

 (はい……ありがとうございます)


 ジャガーさんの背中はデカかった!


 ゆっくりと降りて、役に戻る


 何も無いけど、かばんさんはきっとこうしただろうなと、身振り手振りを想像しながら場面は、移り変わって行く


 「そうそう!かばんちゃんは、そうやって縄を使ったんだよ!!」


 「カワウソの手の器用さは知ってたけど、それがとても発揮されたとこだったよね!」


 「あはは!へんなのー!へんなのー!」 

 

 ジャパリバスの一部を持ちながら足場の安定しにくい状態で、ジャンプしながら運ぶ


 と言う場面は、一度サーバルさんがぼくとカラカルさんを受け止めた時と重なるけど、さすがにバスはねぇ……

 

 ここで、ステージ外から


 「さいきょー過ぎるだろ……」とのツッコミが、入り「おおっ……」ってなってた


 『しかし、バスはしばらく使われてなかったみたいで、ボスが動かそうとしてみたものの……』


 「バッテリーガキレテタンダ。アレニハアセッタヨ……」


       ふわり……


 「トキさん!?」

 「そう、あの時わたしは、こうしてかばんを、アルパカのカフェまで運んであげたの……あそこ通るつもりだったし、サーバル、無茶するわね……」


 「ボスと喋れたのはかばんちゃんだけだったしね!それに、かけっこみたいで楽しそうだったから登る事にしたんだ」


 「そう言えば、アルパカお留守番してるんだったわ……」


 「わ、わたしで良ければ……?」


 タヌキさん、少し恥ずかしそうに……

 頭に葉っぱを乗っけ?


       変身っ!!


 「ぽんっ!」と煙が出た途端……


 「いんやぁ!待ってたゆぉお!!」

 「あら、凄いわね……」


 タヌキさんの変身に大盛り上がり!!


 端からは、「やられたで御座るゥ……」とハンカチを噛みながらおじゃまリアンの面々が悔しがってた


 「それから、誰も来なかったカフェに変化をもたらしてくれたのがかばんだったの。多分今の時間ならゲンブちゃん辺りとのんびり一杯やってる頃かしら?」


      ささっ……


 「黒子にて候ゥ……」

 「しばらく待ってろ」

 「コケッ!」

 

 おじゃまリアンの四人は、顔に黒い布を掛けたまま、テーブルセットを運んできた!


 「ま、ま、座って座ってえっ!」


 凄い……タヌキさん、完璧に入り込んでる!!

 喋り方がとても独特で、この方なりなんだなと感じる


 テーブルに用意されたセットで紅茶を淹れてくれた


 「いただきます……」


 カモミールのふんわりとしたフレーバーが心地よい……


 『電池に力を貯める間、かばんはふと、あることを思い付いたみたい』


 「さーすがに、ここでは無理なんだけどぉ、草むしりしてもらったら、なんとぉ!ここにカフェがあるよってぇ、トキちゃんとお空から見たら目印?なってたんだよぉ!!」


 アルパカさんのこの台詞を聴いただけで如何にかばんさんは、パンチとトンチが効いてたか良く理解る……


 「ここで一曲……」


 トキさん、ステージ真ん中に立ち、すぅと小さく息を吸うと


 「あれ?サーバルちゃん、なんで震えてるの?」

 

 ぼくの問いに答える前に吟い始めた




     わたしは~トーキー


 


 「あれ?全然へーき……」


 「んもう、サーバルったらひどいわ……あれからいっぱい練習したのよ?」


 遠くまで響く澄んだ歌声は、胸にスッと入ってくるかのよう

 

 そして、続いていく


    なかまをーみつけたーのー

    ここにいるーよー!

    わたしのーなっかーまー!


 「トキちゃんじょうずじょうずー!」

 「うふふ、嬉しいわ……でも、いつもの所の方がもっと上手に歌えるのよ?もし良かったら来てくれたら嬉しいわ……」


 一曲終わった処で、ちゃっかりアピールなトキさん


 『電池が大丈夫になったことにお礼を言ったかばん、サーバル、ボスはロープウェイってのを使ってジャガー、コツメカワウソの待つじゃんぐるちほーへと降りた。サーバルはもう足がパンパン!頑張ったわね!』


 「ボクハ、コノトキシャベレナカッタハズダケド?」


 『細かいことは気にしなくて良いの!分かった?』


 「アッハイ」


 『こうして、バスが動くようになり次のちほーへと向かったのよ。あたし達ロバのバスに乗っけてもらってここ来たんだけど、あれとても楽だわー……』


 「じゃあキュルル、あたし達もどるよ。……期待してる!」


 「はい!ありがとうございます!!」


 

 けもの、背中で語りたり

      

       ~キュルル、心のハイク~


 「突然ですが、オーディションを中止します!」


        ええっ!


 マーゲイさんの急なお知らせ

 会場はざわつき、ぼく達も動揺を隠せずにいた


 『ちょっとぉ!』


 カラカルさんが言い掛けた時


 「もちろん、皆さんにはこのまま続けて頂きます。最後までしっかりとお願いしますね?オーディションにご参加頂きました方々、ご協力有難う御座いました!」


 「と、言う事は……?」


 「それでは、引き続きお楽しみ下さい!題目は……」






   ようこそ!ジャパリパークへ!!


      




      わあああああ!!






 会場全体が活気付いて来た処で、ペパプがステージに上がってきて


 「みんなー!ノッてるかーい!!?」

 「コウテイ、キャラ違くない!?」

 「ッシャア!ロックに行くぜぇ!!」

 「ふるるー!」

 「一生懸命頑張ります!!」




 うえるかむとぅようこそジャパリパーク!

 どったんばったん!お・お・さ・わ・ぎ!!



       うーがおー!



 盛り上がっている最中、ぼく達はステージの裏に回り、急遽作戦会議!


 「カラカル、どう言う事なの!?」

 「あー、ごめん。ここまで大事になるなんて思わなかったわ……」

 

 以前きょうしゅうちほーに住んでいた頃、「ある噂」を小耳に挟んでいたカラカルさん


 あまりにもわくわくドキドキなお話だったものだから、いつか誰かに伝えたくてずっと覚えていたんだそう


 「ほんとは、ジャガー出てくる前にカバが出てくるんだけど……」


 「あら、お呼びかしら?」


 「カバ!来てたの!?」

 「サーバル、久しぶりですわね。再開の喜び、分かち合いましょう?」


 「にゃにっ!?あんた、タヌキとかセルリアンとかじゃないでしょうね?」


 「違うわ、ちゃんと本物ですのよ?」


 「にしては、出来すぎじゃない?」


 「まぁ、順を追って説明するのもアレですし……」


 ジャパリを統べる存在、四神

 

 お使いを頼まれてこのなかべちほーまで来たとカバさんは話す


 「サーバル、カラカル、その子の事、しっかり支えてあげるのよ?」


 妖艶な雰囲気を残し、カバさんは戻る……

  

 「でも、キュルルちゃんすっごいね!よくわたしに合わせて来たよ!!」


 「ははは……もう、必死だよぉ……」


 「キュルルちゃん、これからも頑張ろうね!まだまだお話は続くんだよ!!」


 [そろそろ宜しいでしょうか?]


 「さぁ、キュルル、サーバル、ボス!ブチかますわよ!!」


 さぁ、次はどうなる?

 かばんさんになりきる事は敵わない


 それは解ってる


 ぼくは続きが気になってしょうがなかったんだ


 





 はっしゃおーらい!ジャパリパーク!!


 


 


 


 

            

 


 


 


 


   

 


 


 

  

 


 

       

   


 


 


 


 

  

 

 

 


 

 


 


 


 


 

 


 

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