すぴーどのむこう

第11話 激走!最速の遺伝子!!


 「ねぇ、キュルルちゃん、このズババってなってるのなに?」

 「うーん……ボス、何か解りそう?」

 「スキャンシテミルネ!」


 歩きながらスケッチブックを眺め、ぼく達四人は、首をかしげていた


 「……ゴメンネ、ワカンナイヤ……」

 「だよね……」

 「な、なかなかに、オシャレな絵ね……」


 構図は、丁度目の前に広がる平原に、カラカルさんとサーバルさんに近い色をした「もにゃもにゃ」が描かれている

 果たして、ぼくは何を見て描いたんだろう……?


   ぬぁぁぁああああああああ!!


 「なにか聴こえるよ……?」

 

 サーバルさんは、お耳を立て……?


 「キュルル!サーバル!ヤバいわよ!!」



 

    どきなさーああいっ!!


 


 「いたたた!!」

 「ちょっとサーバル!引っ張っちゃダメよ!!?」

 「キュルルちゃんごめ……!?」


 二人に引っ張られちゃって「あいたた!」してる所を、竜巻と稲妻が一度に駆け抜けた!!

 

 「……」

 「……」

 「……チジョウ、サイソクノ、ケモノ……」


     すっごーいッッ!!


 カラカルさんもサーバルさんもボスも、そしてぼくも一斉に「すっごーい!」の大合唱!!


 「あ・な・た・達っ!道のド真ん中で止まってたら危ないでしょうが!!って、何やってんのよ……」


 「キュルル……」

 「Oh……」


 いっけなーい!!

 引っ張られた時、バランスを崩しちゃったみたいで、なんと、なんと偶然!ぼくはカラカルさんをお姫さま抱っこのような体勢に!!


 もちろん、立ったまま


 「あはは……こ、転んだりでもしたら危ないからなぁ……」

 「んもう……!でも、ありがと……」

 「ハハハ、ロマンチックハトマラナイネ!!」

 「ねぇ、ボス?ロマンチックってなに?」

 「ア、アワワワワワ!マ、カ、セ、マ、マ、カ、、マ、……ケンサクチュウ、ケンサクチュウ……!」

 「ボースぅ!」


 「はぁ……あなた達のお陰でちょっと涼しくなってきたわ……っと、わたしは見ての通り、地上最速のけもの、チーター様よっ!!」


 「チーターハ、シュンカンサイコウジソク、サーバルノ1.5バイ、120km/hヲタタキダスコトガデキルヨ!!」


 「へぇ!あなた、とっても足の速いけものなんだね!?」

 「勝てる気がしないわぁ……」


 「チーター!っはぁ……っはぁ……やっと……追い付いた……はぁっ……お?」


 「あ、トムソンガゼルちゃん!」

 「サーバル!久しぶりだね!」


 「サーバルさん、お知り合い?」

 「うん!とっても足の速い子なんだよ!」


 「三十六計逃げるに如かず、トムソンガゼル!よろしくね!!」

 「よろしく!」


 サーバルさんと、ルルさんは同じ出身みたい

 色んな場所を駆け回る事が楽しみで、そんなこんなで今はここで過ごしているんだそう


 「ルル、それにあなた達!早いとこ、ここからずらかるわよ!!」

 「なんで?」

 「この辺でもたもたしてたら、色々と面倒な子達に絡まれる……あ、どうやら遅かったみたいね……」



     ソコに居たかッッ!!



 「……ッッ!?」


 チーターさんが振り向き、目線の先


 「うお!まぶしっ!!」


 じゃなかった!?

 逆光で見づらいんだけど、プリンのような岩山の頂きには?


 「もう一度かけっこをしよう!共に速さを磨こうではないか!!」


 「チイッ!しっつこいわねぇ……!!」

 「チーターさん、あの方はお知り合い?」

 「えぇ、あの子はプロングホーンよ。わたし達がのんびりだらだらゆっくりしてても、お構い無しに勝負を仕掛けてきたりするから面倒なのよ……」


 今日も木陰でルルさんと、そよ風と共にのんびり気持ち良くだらだらゆっくりしてる最中に絡まれたんだとか……

 多分、イライラしてるのはそのせいなのかも?

 

 「速さとは、才能……その才能を何かに役立ててはみないか!!」


 仁王立ちするプロングホーンさん、前に立つチーターさんの横に居るトムソンガゼルのルルさん……


 「ふむ、素晴らしい大腿四頭筋クワドゥラリ・セップスをしていますな!」

 「あんたどこ見てんのよ……」

 「あはは、つい……」


 みんな、とっても速そう!


 「プロングホーンさま、ちょっと良いですか?」

 「ん?ミッちゃんか、どうした?」


 ここでプロングホーンさんの元へ、もう一人……


 何か耳打ちをしている…… 


 「なんですってぇっ!!」


 ぼくには聴こえなかったけど、目には闘志の炎をメラメラ燃やすチーターさん


 そこへ、仕返しにとルルさん、ぼくに耳打ちをしてきた


 「プロングホーンさま、アイツらきっと負けるのが怖いだけですよ!って言ってるね……あたし、負けないんだからっ!!」


 「くやしかったら勝負してみろぉ!」


 「上等じゃない……ルル、ブッちぎるわよ!!」

 「勝負は……どうでも良いがかけっこは大好きだ!!」


      ずっこおっ!!


 「む?一斉にズッこけてどうしたんだ?」

 「いえ……」


 あはは……プロングホーンさんは、純粋に走ることが大好きなんだね


 「切磋琢磨し合う仲同士、走るのは気持ちいいからな!ならば、あの丘の下で待っている……行くぞ!ミッちゃん!しっかり着いてこい!……グレートなロードランナーとしての走りを見せてみろ!!」

 「はいっ!」


 そう言って砂埃を巻き上げ、猛る二人は走り去っていった……

 

 「見てなさいっ!今日もブッちぎってやるわ!!」

 「チーター!がんばれー!!」

 「ルル、あなたも一緒に走るのよ!」

 「あ、そうだった!?」

 「もちろん、あなた達もよ!!」


    な、なんだってー!?


 「着いてきなさい!駆け足っ!進めーっ!!」


 「あ、ちょっと!待ちなさいよー!」

 「キュルルちゃん、わたし達は出来る事を頑張ろうよ!」

 「そうだね……」


 ↑←→↑←→↓↓↓→↓→A+A


 「来てね!」と言われた所、丘の下

 早速勝負を始めるのかと思いきや?


 「腹が減っては最高のパフォーマンスを発揮する事が出来ないからな!」

 「強敵達ライバルに塩を送るとは、さすがですプロングホーンさま!」


 じゃぱりまんをご馳走になっていた

 ボスが「ココノジャパリマンハ、プロテインガツウジョウヨリオオメニハイッテルヨ」って言ってた

 

 「ねぇボス、プロテインってなに?」

 「サーバル、イイシツモンダネ!」


 プロテインは「たんぱく質」と言って、この子達みたいに激しく動くと、身体のあちこちが痛む

 それを治したり、より強くするのに必要な栄養素なんだ

 他にも、骨とか血液にとっても、重要な栄養素なんだよ

 ちなみにここのじゃぱりまんの味はチョコ、バナナ、イチゴ、バニラの設定があるよ


 「みんみ……」

 

 サーバルさんは、固まってしまった……


 「おい、おまえ!」

 「うみゃあっ!?」

 「……安心しろ!分からないのは、お前だけじゃないんだぜぇ!?」


 「しかし、珍しいな。ボスが喋ってるの見たのは初めてだ」

 「そう言えば……」


 ボスは、みんなにボカした説明をしたけど……


 「そうだったのか……ならお前はヒト、と言うことなんだな?」

 

 「はい……」


 プロングホーンさん、チーターさん共に、かつてヒトに会ったことがあるみたい!

 

 「あの子名前は確か、かばん、と名乗っていたわね……」

 

 最近、見掛ける事は少なくなったようで、プロングホーンさんは「会ったときには宜しくと伝えてくれ。元気でやってるぞってな!」と話してくれた


 「そうだ……!」

 「おい、お前、その四角いのはなんだ?」


 リュックからはみ出していたのを見たみたい 


 「これはスケッチブックと言って……」


 ここには今、人数がいる

 みんなに集合してもらってぼくは一枚描いてみることにしたんだ   


 程なくして絵は完成


 描くスピード、大分上がってきたみたいだ!


 「……ッッ!!ちょっとぉ!?なによこれぇっ!!」

 

 必死に笑いを堪え、ばしばしぼくに突っ込みを入れてきたチーターさん

 それもそのはず……


 「あー!あたし、こんなことしてないよ!?は、恥ずかしいよぉ……!」


 そう!ルルさんが、チーターさんを膝枕してるんだからね!


 その横には、カラカルさんが座っているサーバルさんを「わっ!」と驚かしてちょっとびっくりしている様子を

 プロングホーンさんと、えっと……


 (グレーター・ロードランナーダヨ!)

 (ボス、ありがとう……!)


 ロードランナーさんは仁王立ちしてる


 という構図にしてみた

 集合してもらったのは全体の配置を見るためだっただけなんだけどね


 「おい、お前、なかなかやるじゃねぇか!」

 「ありがとう!」


 「この一枚を掛けてかけっこ……それも良いが、せっかくだ。かばんから教えてもらったじゃんけんをしようじゃないか!」

 「頭脳戦でも最強のプロングホーンさま!ブッちぎっちゃってくださーい!」


 ちなみに結果はと言うと……


 「な、なぜだっ!!?」


 全員「グー」を出してプロングホーンさんは最初に負けた


 「ぐぬぬ……」


 そして、最終的には、サーバルさんとロードランナーさんの一騎討ちとなり……


 「やったー!」


 ロードランナーさん一等賞!!


 「良くやったぞ!」

 「はい!プロングホーンさま!!」


 やっぱり、喜んでもらえたのはとても嬉しい!


 「顔に出てるわよ!」

 「わかる?」

 「当たり前じゃない!」

 「ははは……」


 「てめーがいらねーとか言っても、この言葉を送ってやるぜ!ありがとうってな!!」

 「ミッちゃん、そこは素直に言うべきだろ……」


 じゃぱりまんをみんなで食べてお腹いっぱい!


 「ふん……食後の運動、と行きたいところだな?」

 「望むところよ!!」


 ルルさん曰く、大体は食事の後はごろごろしてる事が多いそう

 まだ、日は高いからね……

 

 「今日のチーター、なんだか違うね?」

 「フッ……たまたま、やる気が出ただけよ……」


 「ぐぐっ!」と、ルルさんに押してもらい足のストレッチ!


 「さて、始めるか!!」

 「待って!」

 「む?カラカル。どうした?」

 「うーん……」


 何か案があるのか、考え込むカラカルさん

 考えてる事を話してもらい、ぼくもボスに相談してみる事にした


 「ドウカナ?」


 「……なるほどな……ミッちゃん、任せても良いか!」

 「任せちゃって下さい!」


 ぼく達は途中途中で待ちながらどっちが最初に通過したかを見る係りになった


 →↓↓↓↓↓↓→↑←→↓→↑A


 ここは渓谷の端

 

 ぼくは、折り返し最後の地点で待っている

 どちらが先か見届けた後、また丘の下に集まろうと約束していた


    ぬああああああああ!!

     ぬぅおおおおおおお!!


 「お?来た来た!!」


 大分離れているにも関わらず、チーターさんとプロングホーンさんが近づいてきてる事が理解る

 気合いの大声だけじゃなく、砂の柱が立ち上がり、もうすぐそこ!!


 「……ッッ!」


 激しい砂嵐がぼくを襲う

 けど、遮った腕の隙間から


 「勝負だ!チーター!!」

 「上等じゃない!!やってやるわ!!」


 折り返し地点は、行止まりの様に先は高さがかなりある崖になっていて、普通ならスピードを落とさなくちゃいけない


 このままだと、お互い湖にドボン!

 けど、走るラインを譲る気はまるでない!

 スピードを落とすなんて気配も全く無い!!


 「ぶ、ぶつかる……っ!!」


 ぼくの目の前、チーターさんは右から、プロングホーンさんは左にぎゅっとラインをクロスさせターンに入った!!

 

 チーターさんはしっぽで空中を激しく叩き、まるで稲妻「着いてこれるかしら?プロングホーン!!」プロングホーンさんは地面を抉りながら「くっ!?曲がれえッッ!!」二人の「けもの」は、ぼくを中心に豪快に向きを変えて華麗な横滑りを決めた!!


 ホンの一瞬の出来事


 二人とも衝突する事は無く、砂嵐の中へと……


 消えていった……


 何が起きたのか考えたけれど、大地に残された大きな爪痕がぼくに「これがリアルだ」と言うとてもシンプルな答えを突き付けてくる……


 「す、すごい……!」


 さっと吹いた風、砂嵐が晴れる頃カラッと乾いた空気……無音の、時が止まったような空間がぼくを包み込む……


 渓谷の隙間から覗く雲一つ無いスカッとした青空が見守っていた


 しかし、静寂な一時はすぐに

 

 「キュルル!ダレカイッチョクセン、コッチニムカッテクルヨ!!」

 「ええっ!?」

 

 ボスがぼくに注意するようにと


 「うわー!止まらないーっ!!」

 「か、カラカルさんっ!!」


 そして音を取り戻す

   

 「よーし……」

 「ヒククカマエルンダ!」


 猛スピードで、カラカルさんが突っ込んでくる!!

 なんとか……止めなくちゃ!

 湖にドボン!それは回避しなくちゃいけないっ!!

  

 「くっ……!」

 

 童話に出てくる王子様のような主人公なら、お姫様をしっかり受け止めて微笑むのかも……

 

 「ギャフベロハギャベバブジョハバ!!」


 だけど、ぼくにはそんな力なんて無くて受け止めに失敗、ゴロゴロ転がってしまう……


 「いてて……」


 なんて、ラッキーなんだろう

 首が崖ギリギリ!

 全身に鳥肌が立つ……


 一難去ってまた一難!

 崖が……崩れた!!

 

 「にゃにっ!?」

 「カラカルさん!」


 すかさず片手を伸ばし、服に手が掛かった!


 「あんた!その手を離しなさい!!」

 「イヤだ!絶対に離すもんか!!」


 見せてやる!火事場のクソ力ァッッ!!


 「うおおおおお……!!!」


 ぼくは無い力を振り絞り、少しだけでもこっち側に寄せるよう目一杯腕に力を込めた!


 後少し……よし、これなら両手が使える!!

 

 「引き上げるよ!」


 →↓→↑←→↑←→↑←→↓→↓A


 「はあ、はあ……カラカルさん、大丈夫?」

 「う、うん……」


 ぼろぼろになりながら、仰向けになって空を仰ぐ……


 「ありがとう……また、助けて貰っちゃったわね……」


 手を伸ばし、ぼくを覗くカラカルさんはなんだか浮かない顔……


 「あ、カラカルさんそれ……」


 落ちた時に腕を擦りむいちゃったみたい

 

 「こんなのへーきよ!さ、みんなが待ってるわ!……しっかり捕まってなさい!!」


 「がっしり!」とぼくは抱っこされ、走り出す景色


 とても眩しくて、力強く輝きを放つカラカルさんの表情

 それは、晴れているからなんかじゃないって事だけは良く理解る


 「そんなに、見つめられちゃ恥ずかしいじゃない?」

 「ご、ごめんね!?」

 「でも、悪くは無いものよ……さぁ、飛ばすわよっ!」


 空の碧、そこに輝く太陽が照らしてくれるなら、心は澄み渡りこんなにも眩しくて、そして嬉しくて……


       おーい!


 みんながぼく達を待っている


 「カラカル、キュルルちゃん!おかえり!」

 

 抱っこされたまま、そのままゴールイン!


 「今回は私達の負けのようだな……」

 「どうやら、そうみたいね……」

 「よぉし!そのままお前達!胴上げだ!!」


 「ちょ、ちょっとぉ!!?」

 「うわわ!!」


      わーっしょい!

      わーっしょい!


 夕方のオレンジは優しくて、今日がもうすぐ終わってしまうけど、また明日も会おうと約束してくれる色


 ぼくとカラカルさんの胴上げが終わっても、何かと理由を付けてみんながみんなの気が済むまでお祝いは続いたのだった……


      わーっしょい!

      わーっしょい!



 はっしゃおーらい!ジャパリパーク!!


 


 


 

 

 


  

 


 


 

 

 

 

 

 


 


 

  

 


 


 


 


 


 


 


 



 

 


 


 


 


 


 


 


 


 



 


 


 


  

 

 

 


 


 

 


 


 


 

 

 

 


 


 


 



 


 


 


 

 

 

 


 


 


 

 


 

 


 


 

 


  


 


 


 

 


   


 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

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