藤ねえとカフェにきた
藤ねえとカフェにきた。ちょっとだけ遠出をして、名目は藤ねえの会社復帰祝というただのランチだけど、久しぶりに藤ねえと話すのは楽しみだった。
このカフェはデザインの有名な人のなにからしくて、その人のモチーフとした小物がごちゃごちゃとしてるわけでもなく、ホドヨイカンジで色んな所に飾られている。
その人の象徴といえる可愛らしいオブジェクトが通路の脇に置いてあって、それをみて「あーこれ可愛い」と言わなければならない義務でもあるのか、通る人は大体それをみて同じように同じようなセリフをいっているような気がする。私もそのうちの一人だったわけだけれども。
「いやだって、あの人おかしいでしょ?」
この間の土曜日に出社したときの話を藤ねえにしたのは間違いだったかも知れない。月イチの当番でたまたま彼と一緒だった。その時の代休が今日だったのだ。
「なに、そんなに彼のことが気になるの?」
「いや、そんなことないし」
そりゃ、スーツは格好いいよ?
でも、それはスーツが格好いいからで、他の人と比べて似合ってるとは思う。それは客観的に比べてだからだし。彼一人みてそう思うかどうかは別のことでしょ。客観的に見てスーツはかっこいい。でもかっこいいのは似合う人に限っていて客観的にいえば彼は似合う。
「そう言うのは客観的ていわないんじゃないの?」
藤ねえは私で遊びたいだけなんだ。
「失礼ねぇ。ただ、
そっちの方が酷いのではなかろうか。
「今まで付き合ったのよりは、かなりまともだと思うけど?」
ちょっと欠点はあったかもしれないけど。その時は好きだったよ。……たぶんね。色々あったよ。
「まずアル中に、そしてギャンブル癖に、浮気性だったっけ。まともな人が、一人でもいたかね?」
「かっこよかったし、好きだって言ってくれたし。あんまり続かなかったけどさー」
好きだと言われたら、やっぱり嬉しいじゃない。
「まあ、金銭の貸しを作らなかったのは偉いとおもうけど。それはあなたが彼らをそこまで好きじゃなかったっていう証明なんじゃないかな」
「学生だった私にそんなお金なんてなかったから」
前彼と別れたのは、お金の無心をされたからで私にそんな余裕は当然なかった。
「愛があればお金なんて、必要なだけあったら要らないのよ。あんたはちょっと好きって言われたくらいで舞い上がり過ぎ」
「そんなこと無いし……」
お金が要らないなんてそれは、持ってる藤ねえだから言える台詞であって、無い私には欲しいものだ。もし超絶金持ちのお嬢様だったり宝くじでも当たったら、イケメンの彼氏も幾らでもできるんじゃないのかな。
「世間でそれをヒモ男というのよ。ちなみに彼の貯金残高は八桁よ?――て嘘。あ、これ美味しい」
え? 一、十、百…て嘘かい。
藤ねえが和スイーツを一口にしたのを見て私はコーヒーに手を伸ばした。抹茶色をしたぷるぷるとしたババロアは見た目にはヘルシーには見えるけど、実際のところはカロリー高いのかなぁ? まあ別腹、ベツバラ。
見た目がキレイでちょっと手をつけにくいけど、食べないとね。うん。美味しい。口あたりがなめらかで、とけるみたいだ。
「まあ、めぐが付き合ってきた相手よりは大分いい男じゃない?」
「別に誰かと付き合いたいわけじゃないし、うん。そう。好きでもないよ」
「そんなこと言っていると、すぐに年とるよ」
「その言葉には年季が入っているね。自分が幸せだからって余裕じゃん。それよりさ――」
藤ねえも言ってたけど、年を取るのが早くなるっていうのは本当なんだろうか。言われてみれば小学生の時と比べたらそりゃ速いような気もするけど、社会人になって、面白くもない仕事して、それが普通なんだと諦めるのが普通なんじゃないのかな。
特別なことをする必要なんて無いと思う。でも。
スマホをみる生活で、私は満足しているのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます