私はあなたの特別になりたい

桃もちみいか(天音葵葉)

第1話

 トウゴくんは私の隣りの席にすわる地味な感じの男の子。


 私は漫画や小説が好きな子たちが集まるクラブの文学研究部(通称文研)に入っている。

 トウゴくんも文研の仲間だ。


 文研のほとんどは自分でも創作をしている。


 中学二年生になっても私はトウゴくんと同じクラスになれた。


 私はトウゴくんから彼の描いた新作の漫画をいつも一番に読ませてもらう。


「マイマイの感想がいつも嬉しくってさ。どこかは絶対ほめてくれるじゃん」

 マイマイは私のあだ名だ。

 舞が私の名前。


 トウゴくんの漫画はお世辞抜きに面白いのに文研仲間になぜか酷評される。

 たぶんトウゴくんの漫画の内容じゃなくてトウゴくんの性格が優しいからだと思う。

 突っ込みやすいから。

 あとはじつは…。


 みんなトウゴくんに嫉妬してるんだ。


 トウゴくんの漫画には光るものがある。

 

 彼はお姉さんがいて大の漫画好きだそうです。

 お姉さんの影響で少女漫画を描いてました。


 トウゴくんはいつも自分に自信がない感じでした。


 私はそんな彼に自信を持ってほしくて励ましたいといつも思っていました。


 私は詩を書いています。


 文研でも席が隣り同士のわたしたち。


 私のつたない詩にトウゴくんがいつも挿し絵を描いてくれる。


 トウゴくんが私の詩に絵を描いてくれるととたんに私の詩が輝いてイキイキと動き出すような気がしました。


 夏休みになって部室に行くとトウゴくんしかいませんでした。


「おはよう」

「…おはよう」


 トウゴくんはなんだか元気がありません。


「どうしたの? トウゴくん?」

「…………」

「えっ? なにしてんのっ?!」

 トウゴくんは昨日私に見せてくれた漫画の原稿をハサミで切るところでした。

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