25-2. グランドエスケープ
激しい戦闘の爪痕が残る海岸沿い。ライは死体となったツバキの右腕から、紅の腕輪を回収した。
「……これからライはどうするのじゃ?」
ツバキとの戦いで気絶していたルリであったが、無意識化で守護神の青嵐が身を守ってくれていたらしい。
「まだやり残したことがある」
ツバキは死んで、ルリは生きている。当初の目的は達成できたというのに、ふたりの面持ちは暗いままだ。失ったものが多すぎた。
「持って行くがよい」
そう言ってルリが差し出したのは、ミズを武器化した足輪であった。
「……いいのか?」
「必要なんじゃろ? 何に使うかは知らぬが」
お言葉に甘え、青の足輪を回収するライ。聞き分けの良いルリにならと、これからやろうとしていることを話す。
「確かルリは俺の母上に会ったことがあるな? なぜ同じ紫同士で、異なる名前の刀を使うのか疑問に思わなかったか?」
「いや、それどころじゃなかったのじゃ……」
「ところがどっこい。なぜオレは雷の力を持った刀なのか、常日頃から疑問に思っていた。そして、オレの血に流れる紫の記憶を読み込んだ時、その理由が分かった」
例えば紫煙について、最初は塵しか撒けなかったと母は言っていたが、紫音との戦いでは音を吸収していた。さらに紫電との戦いでは煙の中を移動し、雷も通さない万能の効力を発揮している。
使い手の力量以前に、煙そのものに隠された性質があった。ならば、まだ紫電にも引き出せていない、潜在能力があるのではないか。その片鱗はツバキとの戦いで見えてきた。
「オレたちは刃を研いでいたんだ。世界が創生されてから、来るべき時が来るまで、ずっとずっと……」
何の話をしているのか、ルリには理解できない。ただ、その形容しがたい感覚は分からないでもない。
なぜ、自分は生きているのか。なぜ、青の女王として生まれ落ちたのか。そういう漠然とした疑問、考えても仕方ないような、人間には知覚できない何か、神の領域について言及したいのだとルリは察する。
しかし、どうやって……?
ライはルリに背中を向け、静かに紫電を上段に構え、一気に振り下ろす。
「紫電一閃」
白よりも白い閃光が瞬いた。
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