第34話 病を治すくちづけ… 下

 瞼を半分降ろしてシスティナの足元から頭の上までじっくり見て、「坊やぁ…」と再び艶めかしい声を出して振り返る。

 その言葉に見上げるアサト。

 その動きを見たシスティナがアサトを見ると、「ン…!」と小さく声を上げて視線をクレアシアンへと移した。


 その行動を背中で感じたクレアシアンは振り返りシスティナを見て、「それ…そろそろ仕舞ったら?」と言葉にする。

 アサトはその言葉に目を広げ、ズボンを上げ、あらわになったイチモツを仕舞い、股間に手を当て頬を赤らめた。


 システィナもその行動を見ながら頬を赤らめる。


 「もう…坊やたちぃ…可愛いわぁ~」と笑みを見せながらシスティナに近づき…。

 「…あなたは…処女?」と聞く。

 その言葉に頬を赤らめるシスティナ、しかし、小さくうつむくと、目に力を入れてクレアシアンへと視線を移し、「そうです。処女です!それが…」と言葉にしてから小さく踏み出し。


 「どうしました!」と叫ぶ!


 その叫びに一歩下がるクレアシアン、その表情は小さく驚いている。


 すごんでいるシスティナの表情は、アサトでも見た事のないような鬼気迫る表情であった…。

 「あらぁ…なにか、気に障ったのねぇ~」と言いながら姿勢を正し、ちいさく腕を上げ始めて…。

 「魔の属性をなぜ?」と聞く、「それは…あなたに近づき、追い越すまで!」と答える。

 「そう、それで強くなりたいの?」とクレアシアン。

 「この魔法では、魔の力が最強…と」とシスティナ。


 クレアシアンは手をシスティナにむけると、小さく笑みを浮かべ。

 「違うわ…最強は魔の属性でも…最凶は……」と言い、中指と人指し指をしんなりと上げ。

 「間違えないで、お嬢さん。魔法でも“”という言葉の使い分けを…」と言い目を鋭くした。


 そして…。


 「魔の属性の力、ちょっと見せてあげるわぁ…あなたが…絶望するほどの力を…」と言葉にして…。

 「闇と光の神に仕えし、ドラゴニアの神よ…」と言葉にすると…。


 「オッホン!」と咳払いが聞こえ、ゆっくりと廊下の暗闇からエイアイが箱を持って現れた…。


 その姿を見て目を細めるクレアシアン。

 システィナはクレアシアンを凝視したままである。


 システィナの後ろについたエイアイとクレアシアンが視線を合わせ、少しの間沈黙が流れると…。

 「まぁ…ここの人達はぁ…」と言いながら腕を下げて、小さく息を吐き出すと笑みを見せ。

 「あなたも…お嬢さんもぉ…空気を読めないのねぇ~」と笑みを見せる。


 エイアイは無言のままにクレアシアンの前に立ち、手にしている箱を差し出した。

 その箱の中身を物色して…。

 「これねぇ~」と言いながら、半円の直径60センチ程ある布のような物に布で出来ている蝶が何個か付いている物を取りだした。

 「これは…横にしている子供の上に置くのね…」と言うと、「あぁ」とエイアイが答え、再び箱の中を見ると、「いいわぁ…これでぇ」と言い、手にしたものを箱に仕舞うと箱を抱えた。


 そして、ゆっくり動き、システィナの傍に来ると…。

 「いい女になりなさい…お嬢さん。でなきゃ…おねぇ~さんは追い越せないわぁ」といい妖艶な笑みを見せると、扉へと向かう。

 その後ろ姿を見送っていると、クレアシアンは踵を返す様に振り返り…。

 「いい事教えてあげる。」と笑みをみせ、「あの…不気味な吸血鬼…なぜ来たかわかる?」と聞く。

 その問いに目を細めるアサト。


 「あの人はね…、リメリアの使者よ」と言い笑みを見せた。

 「使者?」とアサト。

 その言葉に頷き、「そう、リメリアは戦争を起こすつもりよ…鋼の王とはよく言ったわぁ…、リメリアの機密部隊?ってのも完成する段階にきているようよぉ…そして…」とエイアイを見て。


 「あなたと同じモノも手を貸しているそうよ…」と言い笑みを見せる。

 「C-DLのタイプか?」とエイアイ。

 その問いに、「わからないわぁ~」とクレアシアン。

 そして、「幻獣を解き放ったのもあいつよ…」と言い、今度はアサトを見て、「なんでかわかる?」と聞いて来た。

 その問いに首を傾げると、笑みを見せて、「敵状視察…ですって…」と言いエイアイを見て、「あなたが用意しているモノと同じものを彼らは国家で持っている…、もう出し惜しみしている時ではないわぁ…エイアイさん…それに、あなたの同類は、ちょっと厄介なモノまで引き寄せた?みたいよぉ…」と言い笑みを見せた。


「寄せたんじゃない…作ったんだ」と言葉にするエイアイ。

「そうなのかなぁ…とにかくぅ…あの力は…魔法とか術とかではないわぁ…、もっと別次元のものねぇ…」と言い首を傾げた。

「あぁ…なるほどな…、悪いが、それにはすでにこちらでも手は打ってある」と言葉にした。

 その言葉に眉を上げ、驚いた表情を浮べると、「そうなのね…まぁ…いいわぁ~とにかく幻獣はぁ、この国の戦力を確かめていたみたい、彼曰く…中世並だって言っていたわぁ~」と言いアサトを見て…。


 「でもぉ…幻獣は…すでにこの地にはいないわぁ…」と笑みを見せる。

 「え?」とアサト。

 「…判っているでしょう?」とクレアシアンはアサトをうっとりとした表情で見る。

 「もしかして…」とアサト。

 「ウフっ。そうよ…あなたが、あの吸血鬼を殺したから…」と言い、システィナを見て…。

 「それじゃ、お嬢さん…そして、坊やぁ…」と言いアサトを見る。


 その視線に…、「僕は…」とアサト。

 クレアシアンは、アサトに向かって驚いた表情を見せる。

 「僕は…魔属になったんですか?」と聞くと、目じりを下げて…。

 「大丈夫よ…あなたの体におねぇ~さんの魔は入ったけどぉ、魔族になった訳じゃないわぁ…、でも…属性の力を扱う事が出来る…かもねぇ~」と言い、うっとりとした表情で…。

 「おねぇ~さんのような、魔の力を…」と言いゆっくり笑みを見せた。


 「魔の力…」とアサト。

 「聞きなさい、お嬢さんにぃ…そして、使えるかどうかぁ…確かめて見なさい!」と言い、ゆっくりエイアイを見て…。

 「あの情報は…耳に聞こえたらまた来るわぁ」と言葉にする。

 その言葉にクレアシアンを見つめる3人。


 クレアシアンは小さく言葉を発すると、足元から靄が現れ…その靄に包まれると…姿を消し…あとには、ピーと言う音だけがそこに残っていた…。


 「はぁ~」と力なく崩れるシスティナ。

 そのシスティナの肩を掴んで、「大丈夫か?」と聞くエイアイ。

 その言葉に小さく頷く。


 エイアイはシスティナを優しく立たせるとアサトのベッドに座らした。

 「みんなを、おこ…」とエイアイ。

 「いえ…少し眠らしておきましょう」とシスティナが言葉にしてアサトを見た。

 アサトはシスティナを見て小さく頷く。

 その2人を見てから、エイアイは近くにある椅子を持ってきて、2人の前に置き座り…。


 「それじゃ…少し話でもしようか…」と言葉にした…。

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