第30話 奇想天外な街 ファンタスティックシティ 下

 筒の中は明るく、鉄のようなもので出来ているようだ、

 扉の上には数字があり、その表示は、0から始まりB1、B2…と記され、B8まであった。


 3人が中に入ると、物体は地面から足を外す、すると扉がスライドして締まり、先ほどと同じ音を立てながら地面に沈み始めた。

 筒の中にいる3人は目を見開き、その感覚…落ちてゆく感覚を感じている。


 アリッサが見ていた表示はB1を照らした後、B2を照らし、B3を照らすと、B4で止まった。


 筒が停止すると3人は顔を見合わせる、すると、再び扉がスライドして開いた。

 その場にいたのはタイロンである。

 アリッサは筒から駆け出してタイロンの前に立つと、アルベルトとインシュアも出てきて辺りを見わたした。


 そこは暗闇であったが、ほんのり明るい光が天井にあり、その天井は丸い構造であることが確認できた。

 天井が丸い坑道のような道が、タイロンが立っている場所から右側に向かっていた。


 「アサト君わ?」とアリッサが声をかける。

 「あぁ、今は安静にしている。」とタイロン。

 「あれは…なんだ?」とインシュアが後ろ、先ほど乗って来た円形の筒を見て言葉にすると、「エイアイの話しでは、それはエレベーターと言うみたいだ。俺たちのいた時期にはあったみたいだ」とタイロンが返した。

 「時期ってなんだ?」とアルベルト。

 「ようは…元の世界の事なんじゃないのか?」と言い振り返った。


 そこには乗り物みたいな四角いモノがあり、アオリみたいなもので覆われ、乗り降りに使われると思われる、横開きの取っ手が付いている扉が2枚、並んでついていた。

 その奥には、長椅子のような物が前と後ろに設置してあり、扉を使ってそこに入り、座る事が出来るようになっていると分かる構造であった。

 タイロンが扉を開いて、後ろと思われる場所にインシュアとアルベルトを誘い、前にアリッサを乗せた後、その隣に座り扉を閉めた。


 「なんだ…これ?」とインシュア。

 「あぁ…おれも初めて乗ったが…エイアイの話しではトロッコって言ってた。電気で動くみたいだ」と言うと、「電気って?」とアルベルト。

 その言葉に、「詳しい事はエイアイに聞いてくれ…とにかく」と言うと振り返り 「ド肝抜くぞ!」と言葉にした。


 その言葉にアルベルトは目を細め。

 インシュアは目を見開いていた。


 タイロンは前を向いて、手前にある青いボタンを押すと、トロッコはゆっくりと走り出し、時間がたつにつれて加速を始めた。

 馬並の速さで進むトロッコ。


 「それで?」とアルベルト。

 その言葉に振り返るタイロン。


 「クソガキはどうなんだ…」と言葉にした。

 「あぁ、アイゼンさんに連絡したとおりだ。クラウトが言っていたけど、そのままだ」と返す。

 「死ぬっておかしいだろう」とインシュアが言うと、「俺も始め聞いた時は、嘘だろうって思った、でも、今のあいつを見ると…」と言葉を濁す。

 その言葉に、「…シスは?」と聞くアリッサ。

 「あぁ、とりあえず…気を紛らわすために修行に勤しんでる」と返した。

 「修行?」とインシュア。


 その言葉に前を向いて、「あぁ、なんか新しい魔法の使い方があるとかないとかで、エイアイの弟子に伝授してもらっているようだ」と返した。

 「魔法か…」と感慨深そうにインシュアが漏らす。

 「…お前たちはどうなんだ、移植ってヤツ?」とアルベルトが腕を広げて背もたれの上に投げ出し、足を組んで言葉にした。

 もう既にこのトロッコに慣れたのであろう。


 「あぁ、明日する事にしているが、多分適合は無理そうだ…、検査には6つの何とかがあって、4つ適合すればいいみたいだけどな…」と言うと、「なんだ…。そんなに難しい確率じゃないみたいだな」とインシュアが胸を撫でおろした。

 その言葉に、「そうでもないみたいだ、まずは…俺たちの遺伝子?みたいなのに問題があるみたいだ」と返す。


 「なんだ?その遺伝子って?」とアルベルト。

 「よくわからないが…大事なのは…俺たちの民族と、アサトの民族の違い…って感じかな?」と返す。

 その言葉に「…ッチ」と舌打ちをするアルベルト。


 「とにかく…わたしも明日してもらうは」と言葉にするアリッサ。

 「そうだな…」とインシュアが同意をする。

 「あぁ?今できるなら今してもらえばいいじゃねぇ~か」とアルベルトが言葉にすると、「まぁ…そうだけどな」とインシュアが同意をした…。


 「とにかく…今日はもう遅いし、明日から抗がん剤?と言う、化学療法を試すと言っているから…」とタイロンが言葉にすると、「ッチ」とアルベルトが舌打ちをした。


 「あれ…」とアリッサが前方に向かって指を指す。

 その先には、この坑道から外に出る出入り口が、多くの光を放ってその場にあった。

 その出入り口を見て、「さぁ…着くぞ、ド肝抜くなよ!」とタイロン。

 そして、トロッコが抜けた先には…。


 多くの光を放っている筒状のモノが数個と丸いモノが数個、聳え立っており、その大きさは、筒状のモノが直径30メートルはあるであろう、高さは20メートル、丸いモノも直径20メートル程の円球状のモノ、それが各種5機ほど並んであった。

 ブロック状の石みたいなものを1メートル程積んでいる壁が、筒状のモノや円球状のモノらを、一つ一つ囲んでいて、多くの筒が、そのモノらを繋ぐように這ってあった。

 また、その筒は数本、別の場所へと向かっており、辿り着く場所には、筒を建物一杯に這わせた、鉄状の柱だけで形成されている建物があり、その奥には煙を立ち上げている筒が十数個目につく、その近くには建物らしきものが点在していて、7階建てである事が確認できた。


 「石油プラントって言ってた」とタイロン。

 「…なんだそれ?」とインシュア。

 その言葉に、「~さぁ…」と答える。


 そのプラントを抜けると、建物が密集している場所に着く、そこからしばらく行った場所に見た事のある姿が確認できた。

 クラウトである。


 トロッコは、ゆっくりとなり、クラウトが立っている場所に着くと停止をした。

 トロッコの扉を開けて降りる一同。

 全員が降りたのを確認すると、タイロンが今度は黄色のボタンを押す、するとゆっくりと前に進み、クルっと180度回転して、その場所に戻ってきた。


 一同はそれを見てからクラウトに視線を向けると、「…聞きたい事は山ほどあると思うが、僕に聞くな…理解が超えている」と言葉にすると、インシュアが眉を上げた。

 「あぁ…多分、俺たちが聞いても分からないと思うから、この事は忘れる」とアルベルト。

 「連れて行って!」とアリッサが言葉にする。

 その言葉に頷き進み始める。


 そこからだいぶ歩くことになった。


 ここには街がある。

 それも他種族が暮らす街であり、飲食店もあれば衣料品店もあり、書店や薬やみたいな店も確認できた。

 一番驚いたのが他種族でもあるが…服装である。


 そこに居る者は、革とか麻みたいな生地のものではなく、なにか、柔らかく、シルクのような感じの優しそうな肌障りがしそうな衣類であった。

 『デルヘルム』でも最近売られているシャツのようなモノ、下着も滑らかな生地が最近では手に入りやすくなっている。


 「今この街では、衣料品の素材に力を入れているとの事だ…」とクラウト。

 「着るやつか?」とインシュア。

 「そう。天然繊維はもちろん化学繊維と言う…」


 「あぁ…興味が無いからいい」とアルベルト。

 その言葉にメガネのブリッジを上げて、「これだけは覚えておいてくれ」と言い立ち止まり…。


 「この街の技術は…この世界では、と言う事を…」と言葉にするとメガネのブリッジを上げた…。

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