第29話 奇想天外な街 ファンタスティックシティ 上

 南門についた3人は、パイオニア所有の馬を用意する。


 「女!馬は乗れるのか?」とインシュア。

 「えぇ…大丈夫」とアリッサが答える。

 「…今から飛ばせば…。夜中には着くはずだ!」と言いアルベルトが馬に乗った。


 その後にインシュアがアリッサの手伝いをして、アリッサが馬に乗り、自分も馬に乗ると、「待て待て待て待て…」とポドリアンが走って来る。

 「…ッチ。今頃なんだデブ髭…」とアルベルト。

 その言葉に、アリッサはアルベルトを見てからポドリアンへと視線を移した。


 「おまぇら…『ファンタスティックシティ』があるところを分かっているのか?」と聞く。

 「あっ」とアリッサはアルベルトを見ると、「『ラッシア』の近くだろう」とアルベルトが返した。

 その言葉に大きくため息をつくと、「これだから…」と言い、アリッサに紙を渡した。


 「とりあえず地図だ。『ラッシア』まで13キロと書かれてある場所に着いたら、そこから南東に向え、毒の沼に着く、そこらに奇妙なモノがいる、そのモノに合言葉を聞かれるから、こう答えろ」と言うと、アリッサを見て…。


 「『』と」と言葉にした。


 「なんだそれ?」とインシュア。

 その言葉に、「さぁ~、でもこの言葉は忘れるな…そして…」と言い、一同を見て「その存在は、そこから出たら忘れろ」と言葉にした。

 「なんだ?その意味ありげな発言」とアルベルト。

 そのアルベルトを見て、「忘れられないなら行かせない」と言葉を返す。

 アルベルトは冷ややかな視線をポドリアンにむけると、ポドリアンの目がいつになく真剣な視線であったことに、「あぁ、分かった。お前らには迷惑はかけない、約束する」と言葉にした。


 ポドリアンは、アルベルトの言葉を聞くとアリッサを見て、「ド肝抜かれるなよ」と親指を立てて見せた。

 その行為に、「はぁ~」とアリッサ。

 「行くぞ!」と叫ぶとアルベルトが馬を走らせる。

 「女…走りっぱなしだ、置かれないようにしろよ!」とインシュアが馬を出し、 「わかった!」とアリッサが言葉にすると、ポドリアンを見て頭を下げてから馬を進め始めた。


 駆け出す3頭の馬…。

 アルベルトが先頭でアリッサ、そしてインシュアの順で真南、『ラッシア』に時速30キロで向かう。

 途中休憩を考えれば…、『ラッシア』まで100キロ、遅くても6時間後には『ラッシア』に着く、だが、その『ラッシア』の手前で南東に向かう進路に移る事を考えても…6時間後には着くとの事、アルベルトが見積もった到着時間は、『デルヘルム』は、現在午後4時であるので…「日付が変わる前には到着するだろう…」とアルベルト…。


 一同は、その時間をめどに、まずは真南にある『ラッシア』へと向かった…。


 走り続ける3頭の馬は、1時間ほどで赤い大地に辿り着いた。

 その手前にある村で小休止をとると、赤い大地へと入る。


 馬が駆けた後には土埃が舞い上がっている、その舞い上がった土埃は長い筋となって赤い大地に残っていた。

 夕暮れになると、舞い上がっている埃と長くなりかけている影が出来、太陽が傾くにつれて、その影が長く伸びる。


 真っ平に近い赤い大地を疾走する3頭の馬。

 景色を見る余裕さえなく、アリッサは、前で上下にリズムよく動くアルベルトの髪を見ながら進む。

 赤の大地に入る手前で小休止を取ってから、すでに3時間。

 顔半分を布で覆った3人は、まっすぐに進んでいる。


 太陽が落ちると空には瞬く星が、空一面を覆い、多くの輝きを見せて映し出されていた。

 その向こうに…靄のような紫色に輝くモノが、大地全体を覆うように見える場所があり、かなり激しい光も確認できていたところで、アルベルトが馬を止めて何かを確認している。


 アリッサとインシュアも馬を止め、3頭でその周りを囲むと「これだな…」とアルベルト。

 口元から布を取り外して、「そうね…」とアリッサが言葉にして、南東へと視線を移す。

 その場所は、先ほど見ていた靄がある場所である。


 アリッサの視線にインシュア、そして、アルベルトが見ると「…ッチ」と舌打ちをして、「なんだ、あのあからさまにここですって雰囲気は…」とアルベルトが言葉にした。

 その言葉に、「あぁ…でも、いくしかね~な」とインシュア。


 二人の言葉を聞くと、再び布を上げ、口元をかくし、「行きましょう!」とアリッサが発し、馬を光る靄めがけて走らせた。

 その後について行くアルベルトとインシュア…。


 3人がその場に着くのには、それほど時間はかからなかった…。


 靄の近くに来ると馬から降り、辺りを見渡す。

 その場には、前が見えない程の靄が張ってあり、遠くには眩い程の光があるように感じられた。

 その靄の向こうには、何があるのかは確認できない。

 ツーンとした刺激臭も感じられる。


 「な…ここからどうすりゃいいんだ?」とインシュアが辺りを見わたして言葉にする。

 「…ッチ、少しズレたか?」とアルベルトも辺りを冷ややかな目で見渡している。

 「…そもそも、毒の沼に街なんてあるのかしら…」とアリッサが言葉にした。


 シャシャシャシャシャシャ…と音が聞こえる…。

 その音に3人が振り返ると、そこには、鉄で出来ている昆虫みたいな…、動物みたいな…とにかく得体のしれない者が、どこからともなく現れた。


 体高は1メートル程で、足は6本に体は蜘蛛みたいな体…だが、目は緑に光、体全体が無機質の鉄で作られているような物体である。


 3人は咄嗟に武器を手にすると、「アイコトバ…」と言葉にした。

 その言葉に、「おい…しゃべった」とインシュアが目を丸くした。

 「…ッチ」とアルベルトが舌打ちをする。

 「?」とアリッサは思い…。


 「ちょっと待って!」と2人を制止させ、その物体に近づき…。


 「『』」と言葉にした。


 その言葉に、緑の目がチカチカとして、「ツイテコイ」と言い、そのまま靄の傍へと進んだ。

 「…大丈夫か?」とインシュアが言葉にする。

 その言葉を聞きながら「とりあえず…ついて行ってみましょう」とアリッサが言い、物体の後を追った。

 その後ろで舌打ちをするアルベルト。


 物体は、その場から数メートル進んだ場所に来ると、地面に向かって前足?みたいな物を突き立てた。

 すると、大きな地響きとグォーンと言う音を伴って地面がせり上がってくる。


 「え?」とアリッサが声にすると、そばにいたインシュアが小さく仰け反り、アルベルトは目を細めた。


 地面から丸い筒みたいなものが上がってくると、2メートル程突き出たところで止まり、扉のようなモノが両開きでスライドした。

 「ハイレ…」と物体。


 「おい…大丈夫か?」とインシュア。

 その言葉に「ここまで来て入らない訳には行かないでしょう」とアリッサが中に入る。

 その後ろをついて行くアルベルト、「いやならここに居ても俺は構わない」とインシュアに言うと、「そんなことできる訳無いだろう!」と言い2人の後についた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る