第22話 襲撃『マグナル・リバル』 下
「背後だ!」とタイロン。
アサトの後方に、湧き上がるように3本の真っ黒い靄が立ち始めると、人の形を作り出して、格闘の構えを取った。
その背後から、マグナル・リバルがシルクハットの先を持ち、手には、黒紫色だが、光の反射で緑や赤などの様々な色に見える三又の燭台を手にして現れた。
「今日は、挨拶だけにしようかな?と思ったけど…思ったよりも倒しやすそうだから…、他2人は、ここで殺しちゃうよ。」とイヤらしいにやけた笑みを見せた。
アサトは太刀を構えて、人の形をしている影に対峙をする。
アサトの前に3体の黒いモノ。
アサトは太刀を握りなおして、大きく息を吐き出すと間合いに入って来るのを待った。
黒いモノらは、ゆっくりと進んでくる。
間合いに入ると、大きく一歩を踏み出して黒いモノを斬る、が感覚は…ない。
「…!」と思っていると、側面から迫る黒いモノが拳を突き出して来る、その拳に太刀の刃を向けるが…感覚がない!、…とその後ろから来る黒いモノ…に向かって太刀を振る…が、感覚が無い…。
どう言う事?と辺りを見る。
斬ったはずの影が格闘の構えをとってアサトを見ていた。
「イッヒヒヒヒ…、切れないでしょう…」と声が聞こえる。
その声は…後方!と思い振り向こうとした時!すでに、マグナル・リバルは、アサトの体を右手で抱きしめ、左手を腰から側面を這わせながら、ゆっくりと脇を通り肩に出て、肩の峯を通り首筋を這わせて顎を掴んだ。
マグナル・リバルの声が頭の上から聞こえる。
かなり身長が高いようであり、細く見えたが力が強く、アサトは完全に体を固定されていた。
「影…だからね…」と声がする。
ゆっくり吐息のような息遣いが、頭から首に向かって進む感じがする。
目の前にシスティナが、目を見開いて立っている。
遠くから大剣を抜く音も聞こえる。
後方に駆け寄る感じもしている…が、動けない!
「それが…言っていた武器…だね…。殺したらダメだって言われたから殺さないが…その武器は貰うし…、そろそろお腹も減って来たから…少しだけ、君の血も貰っちゃおうかなぁ…」と言うと、アサトの背後で大きく口を開けるマグナル・リバル。
その口は、大きく裂け、歯全体が少し前に出ると上下の犬歯が長く伸びた。
その様子をシスティナが口を押さえて見ている。
その表情が…と思った時…、急にマグナル・リバルが動きを止め、アサトの首筋に鼻を持ってきた。
そして…クンクンと鼻を使い何か匂いを嗅んでから…、アサトから体を離し、 「あぁ~そう言う事ね…」と言うとアサトを首を傾げてから見ると、その先に居たシスティナに視線を移し、手の力を抜いて離れ始めた。
アサトは前のめりに前に出てからマグナル・リバルへと視線を移す。
マグナル・リバルの視線が、後方にいるシスティナにある事に気付いた。
「…あぁ~じゃ~お嬢さんのでいいやぁ…処女みたいだしぃ…」と言い動き出したマグナル・リバル。
アサトは…か…体が…動かない…とその場に膝をついた。
その跪いたアサトを見下ろしながら、横を通り、システィナへと進む。
「アサト!」とタイロンが叫びながら、影と戦っている。
「…」とクラウトもアサトをみながら、ロッドで影と戦っている…。
「あ…アサトく…」と言葉にしたシスティナを振り返って見る。
システィナの背後には、腰に手を回し、片方の手がシスティナの胸の下につけている、シルクハットをかぶり、丸いサングラスをつけ、大きく裂けた口と大きく突き出した歯に異様に長い犬歯を出した、マグナル・リバルがいた。
「この子は、おっぱいも大きいから…子供産んでもらうよ…でも、その前に…ちょっと飲ませてもらう…この子の血を頂いたら…君たちは、わ~たしが殺しちゃうから!」と言い、アサトを見て…。
「その武器は…もらっておくよ」と言葉にした。
膝立ちの状態でアサトは、目の前に居るシスティナとマグナル・リバルを見上げる。
マグナル・リバルの手が、システィナのローブの胸元から中に手が入り始めている。
「あ…アサ…ト…くん…」とシスティナの頬がみるみる赤くなってゆく。
生で触っているのか…。
マグナル・リバルの手が、服の中でシスティナの胸を揉んでいるのがわかった。
アサトは膝の上で握りこぶしを作ると、小さく項垂れてから見上げる。
その光景…そして、力なく立ち上がろうとする…が、力が入らない…でも…。
『終わり?もう終わりなの、アサト!』
システィナの声がアサトの頭を駆け巡ると…。
「それじゃ~いただきますぅ~」とマグナル・リバルが勢いをつけて長い犬歯をシスティナの首筋めがけて突き刺し、離すと犬歯と出た歯をひっこめ、口も元通りにさせると、その傷口に吸い付いて見た、その先には…。
アサトがしっかりとした視線でマグナル・リバルを見ていた。
マグナル・リバルは目を見開き、アサトをじっくりと見る。
そこには、システィナの首を庇うようにアサトの腕があり、その腕の肩がまじかにあって、その先にその視線があった…。
マグナル・リバルは咄嗟にシスティナから離れ、アサトとシスティナは、投げ出されたように赤い大地に腰から崩れた。
マグナル・リバルは、小さく後退を始めると両方の掌を開いて見た。
「あぁ…あ…あ…なんて…バカなことを…」とアサトに視線を移す。
マグナル・リバルが後退する先に、幻蝋の燭台とステッキがあり、その燭台に当たったマグナル・リバルは、幻蝋の燭台を見ると…。
顏がボコっ、ボコっと音を立てながら膨らみ始めた。
アサトは体をシスティナに預けてその姿を見る。
マグナル・リバルは、顔だけでなく、体も膨らみ始め、そして、足が膨らむと…。
一気に収縮して元の大きさに変わり…。
「…まったく…」と言葉にして膝から崩れ落ち、膝たちの状態になったと同時に、口から真っ黒な血を流し始めた。
時間を置かずに、鼻や目からも大量の血が流れだすと、頭から赤い大地へと倒れ込んだ。
それと同時に影が消える…。
「…どうなった?」とタイロンが剣を肩に担いで聞く。
「…分からないが…討伐したようだ…」とクラウトが言い、メガネのブリッジを上げて辺りを見た。
倒れているマグナル・リバル、その向こうには、システィナが座り込んでいる。
その光景に気付くと、ゆっくり近づき、マグナル・リバルの肉辺をロッドの柄頭で突っついてみた。
……動かない。
「死んだのか?」とタイロン。
「あぁ…そのようだな…」とクラウトがメガネのブリッジを上げていると…。
「アサト君!アサト君!」と鬼気迫る声で、システィナがアサトの名前を呼んだ。
その声にクラウトとタイロンが視線を上げ、「どうした!」とタイロンが声をかける。
「アサト君…動かない…鼻と口から…血を流している…」と涙声で返してきた。
その言葉にタイロンとクラウトが駆け寄る。
確かに、システィナの膝の上にいるアサトは、口から小さな血の線を流し、両方の鼻の穴からは大量の血を流して気を失っていた。
「まずい…」とクラウト。
その言葉に息を飲むタイロン。
「アサト君!アサト君」と涙声で呼ぶシスティナ…。
何もない赤い大地で、アサトを囲んでいる3名の姿が小さくそこにあった…。
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