第21話 襲撃『マグナル・リバル』 上
『ゲルヘルム』を出て2日が経ち、3日目を迎えていた。
アイゼンの言う通り、この進路には多くのゴブリンや獣人の亜人らの村が点在しており、初日には、他種族が暮らす獣人の亜人の村の一角、その翌日は、ゴブリンの村の一角をかりて泊めさせてもらった。
夏特有の暑さがあったが、南に下るにつれて、過ごしやすくなって来ている。
アサトは、出発初日の午後から馬車に乗るようになった。
体調が悪い訳ではない…ただ…怠くて、疲れるだけであり、時よりクラウトから気力を分けてもらいながらゆっくり進んでいた。
時間は、ゴブリンの村を出てから3時間ほど、昼に近い時間である。
予定では、夕刻前に『ラッシア』に到着する。
赤い大地は…見渡す限り赤い。
土に鉄の成分が多く含まれているとクラウトは言っていた。
この大地を抜けると緑の生息する土地になり、数キロ進んだ場所には、海が見え、そこに港町『ラッシア』があるようだ。
時より方位磁針を見ながら真南に向かう。
クラウトの話しでは、『ラッシア』より東に十数キロ行った所に『毒の沼』と言う場所があるようだ。
そこは、外周20キロメートルの大きな沼と言うより、湖のようである。
有害なガスを含んだ煙が湖全体を覆っていて、立ち入る事が出来なく、湖の全容は判っていないと言う。
また、その沼から、空に向かって何かが飛び立ったり、夜になると明るい光を放っているようで、何かその湖で起きていて、その結果が毒のガスを含んだ煙を上げているのではないかという話がある。
向かっている『ラッシア』には、鉄と思われる物質で出来た船が停泊することがあるようだ。
この世界では、船はほとんど木製の帆船が主流だが、その船は鉄で出来ていて、横には大きな水車のような回転する羽が付いている。
また大きな煙突が2本建ってあり、その煙突からは黒く重々しい煙が上がっているようだ。
月に2度やって来る。
その船からは、人間族以外にも、ゴブリンや獣人の亜人、また、どんな種族なのかわからないモノまで様々な人種が乗って来ている…。
乗って来るだけではない。
その船に乗り、『ラッシア』から乗って行くモノもいた。
そのモノらは、言葉をしゃべる。と言うか、なに不自由なく言葉を話し、また、多くの種族の言葉を話しているようである。
そのモノらがどこから来て、何処に向かってゆくのかは、誰も分かっていないようだ…。
進み始めてから数時間が立ち、辺りには小さいが木々が見え始めている。
立札があり、『ラッシアまで13キロ』と英語?で書かれてあった。
その事にクラウトは驚いていた。
ぼんやりと外の流れる風景を見ているアサト。
真っ平の赤い大地の向こうに見える山々が、小さく後方へと進んでゆく。
体の感覚が少しづつ薄れて行く感覚があり、そのまま目を閉じれば眠ってしまいそうである。
どうして…、こんなに眠いんだろう…。
馬車の手綱をタイロンが持ち、クラウトがその隣に居る。
その背中が、開けられている両開きの扉の向こうに見える。
アサトが座っている向かいには、システィナがいる。
なんか、初めて遠征に出た日の事を思い出すが、よくよく考えれば、馬車にこんなに長い時間乗っていた事が無かった…。
馬車では、システィナさんらは何をしていたんだろう…。
最近は、アリッサやケイティ、そして、セラが仲間に入ったから会話をしていたと思うが…。
こうして眠くなって寝ていたのかな…。
システィナさんに聞いてみようかな…と思い、アサトはシスティナをみようとした時に、「あ…アサト君…」とか弱いシスティナの声が聞こえて来た。
その方向、システィナを見てみると!
システィナの隣に座っている、襟の高く長い黒紫色の外套を羽織り、長いシルクハットをかぶった男が、システィナの肩を左手で抱き、右手でシスティナの胸を揉みながら、唇を首のあたりに近づけてこちらを見ていた。
抱いている肩の手に付いている爪は黒く長い。
丸く黒いサングラスに真っ白な肌。
いやらしくにやけた口から長い舌を出して、システィナの首筋に這わせた。
「!」とアサトは咄嗟に太刀の柄を掴んで立ち上がると、男は、胸を揉んでいた手をアサトに向け、ゆっくり人差し指を伸ばした。
いきなり動いた後ろに気付いたクラウトとタイロンは振り返り、手綱を引いて馬車を止めた。
馬が前足を上げて立ち止まる。
「ヒヒヒ…初めまして…」と髙い声で男は言葉にすると、上げていた手を下げ て、再びシスティナの胸に持って来る。
「あ…なに…しているんですか?」とアサト。
「あ?…何しているかって?見てわかりませんか?」と言うと、システィナの首筋を見てから、イヤらしく舌を出して這わせると、「ん~、いい味がしそうですね…」と言いアサトを見る。
男を凝視するアサト。
「…どうしようか迷っているんですよ…」と言い、システィナの胸の真ん中あたりを、何かを探すように指を動かしながら…。
「この子を、
胸の真ん中あたりの小さな突起に指をあてて刺激し始めた。
その指の動きに声が出そうなシスティナは、目を閉じ歯を食いしばっている。
「あ…あなたは…誰だ!」とアサト。
「わぁ~たしですか?」と男は言い、天井を見ながら。
「そうですね…『リバル』と申しておきますか」と言うと再びいやらしい笑みを見せて笑った。
「『リバル』…『マグナル・リバル』か!」とクラウトが言うと、クラウトの方を見て
「おやぁ?…わぁ~たしを知っているのですか?」と言いサングラスの向こうの目を細めた。
アサトは、そのモノの足元にある布の袋に目をやった。
そこには大きさが50センチ程の袋があり、なにか三又の固いものが入っているような形が見受けられた。
「幻蝋の燭台!」とアサト。
男は、その言葉にアサトを見ると、自分の足元に置いている布の袋に目をおくる。
その動きと同時にアサトは太刀を抜いて振り切った!すると…。
手ごたえも何もない感覚のまま、刃がシスティナが座っている長椅子に食い込んだ。
男の姿はそこにはすでになく…と、背後にある気配を感じると同時に、システィナの手を掴み、外へと駆け出す。
アサトの動きを見て、タイロンとクラウトも馬車から飛び降り、馬車を見た。
アサトは、システィナを自分の背後に送り、システィナの前に立って馬車の後部に位置する出入り口を見る。
タイロンは格闘の構えでいる。
クラウトはロッドを馬車に向けている。
アサトはタイロンを見る、その視線を見たタイロンは、クラウトに視線をおくる、クラウトも、タイロンの視線を受け取ったあと、馬車へと視線を移すと!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます