第20話 ナガミチの家にて… 下
その後、宴は夜遅くまで続いた…。
アサトは部屋に戻る。
今夜からこの部屋では、アサトとジェンスが一緒の部屋になった。
タイロンは地下室、クラウトはジェシーと共に戻った。
アリッサとシスティナ、そして、レニーが一緒の部屋で、チャ子とセラ、ケイティが一緒の部屋で眠る事になった。
トルースとケビンが一緒である。
インシュアが、部屋を使っていたようだ。
話を聞くと、弟子らが朝から修行しに出る場所に、師匠が高イビキを掻いているのは、師匠失格!師匠が模範にならなければならない!とサーシャにどやされて部屋で寝るようになったようだ。
まだ部屋は空いていたが、とりあえず、みんな眠れるからいいか…。
夜中に、タイロンの悲鳴が聞こえて来た、何があったかはわかる。
もそもそと何か、と言うか、多分寝間着のスカートだろう、その裾が引きずられる音が2つ行って帰って来た…多分ケイティとセラであろう…。
死んでいなきゃいいが…。
翌日。
目が覚めると、すでにジェンスの姿は無かった。
ケビン達と修行に出掛けたのだろう、セラと誰かの話し声が聞こえてくるが、誰と話しているのかはわからない。
アサトは起き上がると髪を掻いた、と…なんだ…これ?と…。
視線に入って来たのは、腕の裏にある斑点…多分、打撲かなにかで付いた内出血ではないであろうか…少し押してみるが痛みはない…と、なにか唇の上…鼻から流れてくる感じがする。
鼻水?と思い掌を当ててみると、真っ赤な鮮血が手についた。
…え?…
近くにあった布を鼻に当て、ベッドに仰向けになって倒れ込む、しばらく天井を見て様子をみてから、布を外して確認をする。
若干、湿りを感じるが、大丈夫そうである。
アサトは起き上がり綺麗な面を鼻に当ててみると、若干血がついて来たが…大丈夫のようである。
窓の外からは、夏を感じさせる生ぬるい風が流れ込んできている。
…あっ…この風景…。
アサトは、窓から見る風景…か、ベッドから窓の向こうを見る行動か…分からないが、なにか懐かしい感じを覚えた。
…その感じは…
「アサト君?」とシスティナの声がする。
その声に布で口の周りを拭くと、そばにあった水を、新しい布に水を含ませて鼻の周りを拭き、扉に向かった。
「あ…アサト君?」と再びシスティナ。
その言葉に扉を開け、「あ…お…おはよう!」とアサト。
扉の向こうには、すでに着替えが済んでいたシスティナが立っていた。
「おは…アサト君?」と不思議そうに見てから、ローブのポケットに手を入れてハンカチーフを出して、口へともってきた。
「あっ」とアサト。
「また…鼻血がでたの?」と聞いて来た。
その言葉に小さく頷く。
システィナは心配そうな表情で…、「そうなんだ…、なんか病気なのかな?」と言い、口の周りを拭くと、「顔…洗った方が早いね」と笑みを見せた。
その笑みに頷く。
「ポドリアンさんの話しでは、エイアイさんは今、『ラッシア』にはいないみたい、でも近くに居るから、2日後には『ラッシア』に行くって…」と言い、再び心配そうな表情で、「本当に大丈夫?」と聞いて来た。
その言葉に頷き。
「大丈夫だよ、ほら!」と屈伸を見せる。
その行動に、「ならいいんだけど…とりあえず朝食を用意しているから、あとサーシャさんとテレニアさんも来て、これからセラちゃんと牧場に行くって言っていた。」と言い、頬を赤らめて背中をむけると、「じゃ…下に居るね」と言いながら小走りで、その場を後にした。
アサトは、…?と思いながら下を見ると…。
…え?…ヤバっ!。
下の僕が元気な状態である…。
いつからシスティナは気付いていたのか…多分屈伸のときかな…ってか、恥ずかしいぃ…。
着替えを終え、洗面をした後にリビングに行く、その場にはサーシャとテレニアがセラに色々と話しをしていた。
アサトの顔を見ると笑みを見せるが、サーシャの表情が重く見える。
とりあえず、朝食を食べにキッチンに行くと、システィナが昼食の準備と弁当を作っていた。
朝食の席で、システィナが色々教えてくれた、話によると…。
クラウトは一度顔を出し、それからアイゼンの元に向かったようである。
インシュアは、サーシャに捲し立てられて修行場に向かったと言っていた。
タイロンは、馬車の準備をして門のところで待っているそうである。
次からは南門を利用する、そこには、パイオニア専用の馬車小屋があり、そこに馬車と馬を止めておく事ができるそうだ。
あと、どうやらスカンのパーティーの卒業試験を近いうちに行うとの事、スカンらを指導していたパーティーリーダーが、朝早くインシュアとアルベルトに相談に来たそうだ、アルベルトはいなかったのでインシュアが話を聞いている。
聞いた話だと、『ネシラズ』と言う、ハンティングベアーの討伐をするとの事だが、どこに居るのか分からないので、見かけたら情報が欲しい、そして、一度、パーティーの完成具合を見てもらいたいとの事である。
この卒業が成功したら、『クレアシアン討伐戦』に参加させる予定でもあるようだ。
まぁ、アサトらも参加するのだから出来ない事は無いと思うが…。
最後に、薬を用意してもらっていると言っていた。
クラウトに言って、熱を下げる薬と滋養のお茶を用意してもらったと言い、これは、もしもの為と付け加えていた。
ここまで気を配れるのはシスティナさんだからこそ、本当に感謝します。
3の鐘が『デルヘルム』に鳴り響くころに、クラウトが薬袋を持って戻って来た。
ここから『ラッシア』までは100kmとのこと、3日かけて行き、3日『ラッシア』で滞在したのち、3日かけて戻ってくる。
その後は、討伐戦に対しての準備に入るようである。
ほかに、『ラッシア』までの道のりを聞き、その道中には、多くのゴブリンや獣人の亜人の村が点在するようだ。
その村々は、国王の旗を掲げて居る場所が多いとの事であった。
旅の邪魔をするマモノはほとんどいない、ただ、ジャイアントアント、文字通り大きいアリには気をつけろと言っていた。
変に刺激すると徒党を組んで襲ってくるようだ、肉食の昆虫なので気を付けた方がいいとの事、ちなみに、海を隔てた国には、昆虫の亜人も存在するようである。
これは、古の知恵で生まれたモノが、繁殖して数を増やしたと言う説があるようだ。
とりあえず、一通り話を聞いて門へと向かう。
サーシャとテレニア、セラが見送りに来てくれた。
馬車に乗り南門を抜け、レンガが敷かれている道を進む。
所々、作られている途中の所があるが、林を真っすぐ、そして、その道の端には、レンガで壁が作られており、林からの侵入も困難にさせていたので、『デルヘルム』へ入る道の中で、一番安全な道になりそうな感じがあった。
そして、林を抜けて…。
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