第19話 ナガミチの家にて… 上
ナガミチの家に戻ると夕食の準備をシスティナとアリッサ、スカンの仲間のクレラとギッパ、そしてサーシャが行っていた。
リビングでは、大きめのテーブルが用意され、すでにインシュアとポドリアン、そして、グリフがエールを飲んで盛り上がっていた。
ソファーでは、チャ子とセラ、そして、ケイティが何かを食べている…形から言って…、長細い、赤い物…干し肉であろう…。
チャ子を挟んで大きな笑顔で頬張っていた。
玄関先では、クラウトとキャシーが抱き合っている。
仕事を終えたキャシーがそのまま駆け付けたのであろう、制服姿であった。
タイロンは、スカンのパーティーのラビリ、そして、チャ子らと一緒にいたトルースと中庭でバーべQの準備をしている。
家に入ったアルベルトは、舌打ちをしていたが、テレニアに連れられて、中庭へと向かって行った。
話によると、エルフには石化の効果がでないと言う事である。
抗体があるのではないかと言う話をアルベルトが話していた…、とりあえず、テレニアからの情報だと言う事だが…。
アルニアは、いつも通りに不機嫌そうにセラ達の傍に居る、ケイティにいじられて、顔を真っ赤にしているのを爆笑されていた。
レニィ―とテレニアの弟子、オースティ、ベンネル、スカンの仲間のレイトラは、出来上がった食事を運んでいる。
レニィーの話しだと、インシュアは、本当に酒をやめていたようだが、今日、アサトら…と言うか、システィナが帰って来たから今日は飲む!と言っていた。
どうやら…インシュアは…。
まぁ、それはそれでいいのかもしれない。
アイゼンが今夜は付き合うと言い、インシュア達と席を共にした。
ジェンスは、ケビンとジェミーとなにやら剣の振りをしながら話している。
たぶん、修行の内容を説明しているようだ。
アサトは一同を見てから、リビング奥にあるナガミチの祭壇の前に立ち、いまだに木柱に飾られてある真っ黒なシャツに長い外套…ではなく、コート、そこに一緒に飾られてあるギルド証と師範証…に触れ、横に2本置かれて飾られている太刀を見る。
その場には、新しい花冠と数本の黄色い花が飾られてあった。
チャ子だろう。
話を聞けば、チャ子とレニィ、ケビンとトルースはこの家に居候しているようだ。
朝の6時までに牧場に行き、アサトと同じ時間メニューの基礎修行を行い、午後から狩り兼修行へ出ているようだ。
「アサト君…」と優しい声が呼ぶ。
その声に振り返るとサーシャがいた。
サーシャは、エプロンで自分の手を拭きながらアサトの傍に立つ。
「出来ているわよ…ナガミチの服」と言い笑みを見せた。
「本当ですか?」とアサト。
「あなたの部屋に用意してある」と言葉にした。
「ねぇ…」とサーシャがアサトに近づき、肩を触り、腕を触る、そして、髪を触ると…。
「少し…背が伸びたかな…それに…髪も…」と言い髪を指に通す。
アサトの髪は、ぼさぼさに近い状態で、耳もすでに隠れ、後ろの髪の裾も首より下まで伸びていた。
「そうですね…切らなきゃって思ってます」と笑みを見せると、「ちゃんとご飯…食べてた?なんか…痩せてきているような…」と言い振り返りキッチンにいるシスティナらを見た。
「まぁ…最近、なんか…食欲は無いんですけどね…、それでも、ちゃんと食べてますから」と言い笑みを見せる、その言葉に戻ってアサトを見る。
「ウン…まぁ、シスちゃんはちゃんと食事を作ってくれる子だからね。そこは安心しているんだけどね…」と言い、アサトの髪を掻き乱すと。
「髪!ちゃんと切って貰いなさい!モテないわよ」と笑いながらその場を後にした。
「アサト!」と次に現れたのが、アサトと変わりない身長で長髪、太い眉をしているスカンであった。
久しぶりに会う彼だが、あの時の印象はそんなに無く、今夜、彼をまじまじに見ている。
「聞いたよ!『オークプリンス』」と言い握手を求めて来た。
「あぁ…それね…」とアサトはその手を握る。
「ウン、なんだ!行くなら一緒に行けばよかった!」と言い、手を放しながら笑みを見せた。
「まぁ~成り行きだったんだけどね」とアサト。
「でも、さっき見た奴を狩ったんだろう!」と言いニカっと笑う。
「う…ん~~、狩ってはいないけど…」とアサト。
「え?」
「ウン、実は、僕は、『オークプリンス』に負けて、殺されそうになったんだ」と頭を掻きながら言葉にする。
「え?」とスカン。
「あぁ~~なんかね。みんなに間違った情報が流れているみたいだけど、実際、あの狩りを始めたのは僕らで、最終的に『オークプリンス』を狩ったのは、国王軍なんだ」と苦笑いを見せる。
「え…えぇ~~~」と叫び声をあげて頭を抱えるスカン。
その叫びに一同がスカンを見る。
すると、スカンは振り返り、一同を見て、「アサト!『オークプリンス』狩ってないって!」と叫ぶと、「あぁ…そうだ!」とクラウトがキャシーと中に入って来た。
「マジですか?」とスカンがクラウトを見て言葉にする。
その言葉にメガネのブリッジを上げ。
「あぁ、僕らは、あの戦を先導しただけであって、『オークプリンス』を討伐したのは国王軍。だが…あの戦いで、さっき見た化け物と1対1で対峙したのは、アサトだけだ!」と言い一同を見る。
「だが…負けたけどな…」と中庭からアルベルトが言い、「あぁ~それも、戦いの中で後悔していて、こっちもあせったよ…」とタイロンが付け加えた。
「でも…」とアリッサがキッチンから一同を見て。
「さっきの化け物とはいかないけど…あの大きさより少し小さい、化け物の側近を…一撃で斬った、凄い人!」と言いアサトを見る。
「あぁ…あれは、おれも度肝を抜かれた」とタイロンが再び言葉にして、中に入って来ると、アサトのそばにより、「これが…俺たちのリーダー」と言い肩を抱いた。
タイロンに揺すられながら、「ありがとうございます」と言い苦笑いを浮かべて、一同を見る。
「あの戦いは…僕らの勝利じゃなく、あの場にいた者すべての方の勝利。だから…」と言うとタイロンから離れ、頭を大きく下げ。
「みなさんの喜びを壊してすみません」と言葉にすると顔を上げて、「もし、この話があったら、こう伝えてください。
「『オークプリンスを狩ったのは、あの地にある石碑に刻まれた者たちだ』って」と言いニカっと笑みを見せた。
その笑みに一瞬静まると、パチパチパチと拍手をしながらアイゼンが立ち上がり。
「我々は事実を知らない、だからどんな事でも言える、だが、事実を知っている者がこう言っているのが、事実。なら…この事実を我々が、今度は継ごうではないか!」と言い大きく拍手をする。
その行動に、「あぁ…そうだな。負けちゃしょうがないな!がはははは」とグリフ。
「あぁ…負けちゃぁ~な!がははははは」とポドリアン。
「あぁ、弟弟子が負けた事を面白おかしく広げるのも面白いしな!がはははははは」とインシュア…。
その3人の笑いに一同がドッと笑い、ナガミチの家を揺らした。
その光景を見て、「あぁ…そうだが…」とアルベルトがアサトの前に立ち。
「…ッチ。『ギガ』の時も言ったが、おれは無様な戦い方を教えた訳じゃないんだがな…」と冷ややかな視線をおくって来た。
その後から、「いいじゃない!アサト君はアサト君らしい戦いをするんだから…無様に狩った方が好感度あがるかもよ…」とテレニアがアルベルトの傍でアサトを見ながら言葉にする。
その言葉に、…ははははは…。とアサト。
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