第18話 白いドラゴンの召喚の儀 下

 セラの言葉に、白いドラゴンは小さな羽を羽ばたかせて近づいてくる。

 セラの目の前にくると、セラは目を閉じてコインに印を刻み、白いドラゴンの眉間にある、真っ白な炎が揺らめいているひし形の場所にコインを当てる。

 するとコインが、その場所から体の中に溶け込んでいった。


 それを見て、「今日から、あなたは『』!この命名に我に永遠なる忠誠を!」と言葉をかける。

 ドラゴンは大きく口を開けて、小さな小さな咆哮を上げて見せた。

 そのホワイトクロウに向かって手を広げ、「おいで!」と声をかけると、ホワイトクロウが小さな翼を羽ばたかせながらセラの胸に収まった。


 その姿を見たケイティは、アサトの傍に来て「アサトォ」と声をかける。

 その言葉にケイティを見ると、ウルウルした瞳で、「あたしも…あれ欲しい」と言葉にした。


 …その言葉…聞いた事がある、確か…と考えてみると…。

 そうだ、グンガがミーシャに言っていた言葉。

 それにガリレオは、何処に売っている?って聞いていた。


 …もう…、うちの姫は…グンガさんらレベルなんですね…。


 「わたしが…」とテレニアが声をかける。

 その言葉にアサトが見る。

 「その子を預かるは、少しは召喚士の事を知っている…、近くにキモイ兄弟がいたから、その事を調べていて、少しは学んでいるから」と言い、サーシャを見る。

 サーシャも頷きながら、「それじゃ、わたしがセラちゃんの能力を上げる手伝いをするわ」と言いながら笑みを見せた。


 「じゃ…わたしも召喚士になる!」とチャ子。

 そのチャ子を見て、「…ッチ」と舌打ちをしているアルベルト。


 「ジェンスは…」と言うとクラウトがインシュアを見て、「インサン、お願いしてもいいですか?」と聞く、いきなりのお願いに目を丸くしたインシュア。

 「お願いします!」とシスティナが頭を下げると…。

 「まぁ~、シスちゃんのお願いならな…」と言いながら頭を掻いた。

 そのインシュアを見て、「…ッチ」と舌打ちをするアルベルト。


 「僕らは、明日『ラッシア』に行く、それで…」とアリッサを見て、「アリッサには悪いが、この二人の面倒を頼みたい」と言うと、「私も修行がしたい…」と言葉にした。

 すると…。

 「あぁ~盾持ちなら俺だな」とニカニカしながらポドリアン。

 その隣で、「俺だぞ!デブ髭!お前は小さいから教えられないだろう!」とグリフが言う…。

 その二人を見て、「…ッチ」と舌打ちをするアルベルト。


 クラウトは、一同を見て「じゃ…そう言う事で…」………。


 「ちょぉぉぉぉぉぉとまったぁぁぁぁぁぁぁ」とケイティ姫。

 ケイティはクラウトの前に立つと、「あぁ?おい」と言い、腰に手を当ててクラウトを見上げる。

 「な…なにか…不都合か?…」と返す。


 …ってか久しぶりにお嬢さん攻撃!


 「あぁ?不都合って…不都合でしょう!なにさらぁ~~っと、あたしを連れて行く気になっているの?」と言葉にする…。


 …って、え?


 「いや、君は、チームのサブ…」

 「アブだか、サムだかわかんないけど…」って、分かっているじゃん。

 「あたしもここで修行をするの!」と言い、セラを見た、と言うか…セラに抱かれているドラゴンを見た。

 そして、「いいでしょう?ねぇ~クソ眼鏡!」と言い寄る。


 その行動にメガネのブリッジを上げて、「そういうなら…アルベルト…頼む」と言うと、「…ッチ」と舌打ちをするアルベルト。

 「あぁ…ってか、そいつは別の目的で残りたいんじゃないのか?」と聞いて来た。


 「あぁ…それを踏まえてお前に任せた」とクラウト。

 その言葉に、「あぁ…そう言う事なら容赦はしないぞ」と言い、ケイティを見る…が、すでに姫の視線はドラゴンにあった。…ッチ。


 「それじゃ、わたしはセラちゃんの召喚獣のリストと能力を書面にしておくわ、フランス語で大丈夫?」とサーシャ。

 その問いに、「構いません」とクラウト。


 「じゃ、俺はエイアイに使いフクロウを飛ばす。明日の出発前までに戻ってくるだろう、居たら出ればいいし、いなかったら後からにすればいい」とポドリアンは言い街へと向かった。

 「それじゃ、明日出発する予定でお願いします」と頭をさげるクラウト、その行動にアサトも頭を下げた。



 「それで?」とアルベルト。

 その場には、アサトとクラウト、アイゼンとアルベルトが残っていた。


 アルベルトの前にアイゼン、アサト、そしてクラウトが並んで立っている。

 メガネのブリッジを上げ、「見せて見ろ」とクラウト。

 その言葉に「…ッチ」と舌打ちをすると、腰につけていた短剣2本を放り投げて上着を脱いだ。


 そこには…。


 右手全体、肩辺りまで灰色の皮膚をしている腕があり、その皮膚は瘡蓋のようであった。

 腕全体が灰色の瘡蓋で覆われているようであり、一つ一つの塊が大なり小なりになっていて、その割れ目からは、赤白い肉の色が見えている。

 ところどころはがれそうに…いや、一つ一つの瘡蓋状の皮膚の端が小さく捲れ上っていた。


 「痛いのか?」とアイゼン。

 その言葉に首を横に振り、「これで…満足か?…それで…、お前たちは俺を隔離でもする気か?」と冷ややかな視線をクラウトにむける。

 「いや…ただ現状を確認したかっただけだ」と言い、アルベルトが放り投げた短剣を拾うと、その短剣をアルベルトへ渡した。


 すると、その石化した皮膚が元通りになって行き、時間を掛けずに誰もがつけている皮膚の腕になった。

 「面白いな」とアイゼン。

 クラウトは顎に手を当てて何かを考える。


 「…それで…、なんか治療方法でもわかったのですか?」とアサトが聞くと、「いや…さっぱりだ…だが、聞いた話が一つある」と言うと脱いだ服を着始める。

 「聞いた話?」とクラウト。

 服を着終えると、「あぁ…それが本当か嘘かはわからないが…、アポカプリスの炎で焼けばいいと言う話を聞いた」と言い、短剣を腰に据えた。


 「アポカプリス…とは…」とアイゼンが腕組みをする。

 「あぁ…ヴェラリアがなぜ、一夜にして焼かれたかわかるか?」とクラウトを見て聞く、その言葉に目を細めるクラウト、アイゼンは顎に手を当てて考える。


 その二人を見て、「…もう…ヴェラリアは石化の人間で溢れていたようだ」と言い小さくうつむく。

 「…そのヴェラリアをアポカプリスが…」とアイゼン。

 「浄化したのか…」とクラウト。


 その二人の言葉に、「あぁ…でも、これが本当なのかはわからない…、だが、その説が有力な情報ではないかと言う事が、ヴェラリア鋼で出来たこの武器やドラゴンストーン…。それらがアポカプリスの何かの恩恵…と考えれば…」

 「あぁ、合点は行くな」とアイゼンが納得した。

 「…そこに…治療方法が…」とクラウトが言葉にすると、「あぁ…だが、アポカプリスに焼かれるのはごめんだ」とアルベルト。

 「そうだな…」とアイゼンが笑みを見せる。

 「確かに…だが、これが解決策なら、治せない事もないと思う」とクラウトがメガネを上げてアルベルトを見る。


 アルベルトは冷ややかな視線をクラウトにむけると進みだし、「あぁ…クソ眼鏡…おれも考えるが…お前にも頼みたい」と言い、その場を後にした。

 すれ違いさまに「あぁ…わかった」とクラウト。


 アサトは、去ってゆくアルベルトの背中を見ていた。

 その背中は、なにか重いモノを背負っているような、窮屈な感じがしていた。

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