第16話 『オークプリンス』討伐の真実 下

 「ほぉ?クソガキ…なんか、負けたくせにやけに評価高いじゃねぇ~か…」とアルベルト。

 その言葉を聞きながら。

 「僕は…あの時出来る事をしただけであって、それが結果になっただけだと思います。もっと、おおざっぱに言えば…、あそこにたまたまいて、『オークプリンス』が出て来たから狩ろうって言葉にしただけです。その言葉にみんながついて来てくれただけで…、そして、他にも、たくさんいましたから…僕らだけが英雄や勇者みたいに言われるのが…なんか…」と言い、小さく笑みを見せる。


 「まぁ~途中で、弱気な発言された時にはこっちも困ったけどな」とタイロンが言うと、アリッサが小さく笑った。

 「…ッチ。やっぱりクソガキだな…どうせ、後悔したんだろう」とアルベルト、その言葉にアサトは肩を小さく竦めた。


 「そういう経緯だったんだな」とアイゼン。

 「まぁ~でも、生きて帰って来てくれたからいいんじゃないの?」とサーシャが言葉をかけた。


 「皆さんだけでもいいから…この事を知っていてほしかった」とアサト。

 「あぁ、大丈夫だ。誰かがお前らをはやし立てていたら、俺が負けた事をちゃんと教えておいてやる」とアルベルトが言い、飲み物を口に運んだ。


 へへへへ…。


 「アサトが言った事…どこに居ても僕らはただそこにいただけ…そして…この召喚石も…」と言い先ほどの白い召喚石をテーブルに置いた。


 その石を見つめる一同。


 重い空気が流れている中、口を最初に開いたのはクラウトであった。

 「これは…彼女からのギフト」と言い、アイゼンを見る。

 アイゼンは目を厳しくしてその次の言葉を待った。

 アルベルトも冷ややかな視線をクラウトへと向ける。


 「僕らは…全滅を確信しました。あの力は…圧倒的でした」とアサト。

 その言葉にアサトへ視線を移し、「ドラゴンか…」とアルベルトが言葉にした。

 その言葉に頷く。


 「でも…」と言うと、クラウトを見る。

 クラウトはメガネのブリッジを上げ

 「…そう、その力を簡単に…粉砕した力があった」と言葉にすると、「クレアシアンか…」とアイゼンが聞いて来た。


 その言葉に一度視線を合わし、そして、小さく頷き、「僕は…勘違いしていました。」とクラウトが言葉にする。

 「あぁ?勘違いだと?」とアルベルト。

 その言葉に頷きながら、「『ギガ』を狩っただけで有頂天になりかけていた事に恥ずかしくなりました。あの力は絶対です…」と言い目を閉じる。


 その行動を見て、「ということは…」とアイゼン。

 少し間が開いて、「いえ…やります!」とシスティナが言葉にする。


 一同はシスティナに視線を向けると、システィナは小さく肩をすくめて。

 「…アサト君がやるって言っています。だから…やるんです。あの女性の討伐を…」と力強く言葉にした。


 「ッチ、ったく、どっちなんだ?クソ眼鏡。」とアルベルト。

 その言葉に、「ハイ…僕らはやるつもりです。その準備もお願いしています。」とアイゼンを見ると、「あぁ…、準備は取り掛かっている」と言葉にした。


 その言葉に頷き、「この討伐は…時間との勝負になりそうです」と言い、アイゼンを見る。

 「時間との?」とアイゼンが問う。

 その問いに、「彼女は…妊娠しています」と答えると、サーシャが目を見開き、アルベルトの表情が強張り、アイゼンは視線を鋭くして、「ナガミチのか?」と聞く。


 その問いに頷いて、「彼女自体も言ってました。ナガミチは生きていると…」とアサトが言葉にした。

 その言葉を聞いて、「…なんで…」とサーシャが漏らした。


 「…ったく、難しい問題だぞ…アイゼン。」とアルベルトがアイゼンに視線を移した。

 アイゼンは顎に手を当て考える。

 「わたしの考えでは…」とクラウト、その言葉にアイゼンは視線を向けた。


 「討伐は、彼女の配下であるゴーレム。そして、彼女は、捕獲を優先する。また、無理なら、この地を去ってもらう…最悪は…お腹の子と一緒に…」


 「ダメ!」と叫ぶサーシャ。


 一同がサーシャを見る。

 「その子には…罪はない。その子を殺さない方法を考えなければ…」と言い、顔を覆った。

 そのサーシャの隣にいたアリッサがハンカチを渡す。


 サーシャを見ながら。

 「そうだな…子供には手を出せない…なら…」と言い顎に手を当ててアイゼンは考える。

 沈黙が流れる…。


 「とりあえず、時間を決めよう。子供とクレアシアンの事は、その時までに何かいい打開策を個々に考えよう」とアイゼン。

 「そうですね…」とクラウト、そして…。

 「私が思うに…あと3週間が限界だと思うんです」とクラウト。

 「3週間?」とアルベルトが聞く、その問いに頷き、「彼女が受胎した時期が3月から4月と考えれば…1月から2月…辺りが予定日ではないかと…」と返した。

 クラウトの言葉に、「となれば…そうだな…3週間ってところだな」とアイゼンが同意する。


 「そこで…申し訳ないのですが、わたしからの提案を聞いて欲しいと思います」とクラウトが言葉にした。

 「提案とは?」とアイゼン。

 アイゼンの言葉に頷き

 「まずは…今、わたし達が探しているものがあります」と言い、アサトを見てから、「一つは、アポカプリスの鱗」と言うとシスティナを見る。

 そして…。

 「もう一つは…錬金術師…エイアイさん」と言うと、アイゼンが薄い笑みを見せた。


 その笑みにはなにか意味がありそうだった。

 「なにが…目的だ?」とアイゼン。

 その問いに、「私とシスティナの武器の作成を…」といいメガネのブリッジを上げた。

 その言葉を聞くとアイゼンはサーシャを見る。

 サーシャも涙は止まってようで、瞼が少し赤かったが表情は戻っており、アイゼンの視線に笑みを見せた。


 「やはり気付いていたようだね、クラウト君」と言うと、「君は賢いから鱗に関しては気付くのではないかと思っていたが…、エイアイとは…」と言いアルベルトを見た。

 「あぁ、おおかたゲインツが言ってたんだろ」と言い目を閉じた。


 「それで…、武器を作るか…」と言い再び笑みを見せ、「いいだろう…鱗は、たしかにエイアイが持っている」と言葉にした。

 「え?」とアサト。

 「もしかして、エイアイさんの今を知っているんですか?」と加えて聞いた。


 その言葉に笑みを見せ、「あぁ、知っているが…」と言い、視線を鋭くして。

 「これは機密扱いだ!」と強く、そして、重く言葉にした。


 「『ラッシア』にいると聞きましたが」とクラウト。

 「あぁ…確かにラボはあるな…、だが、おれも何回か行っているが…会えたことは無い。」とアルベルトが言う。

 「私らに彼に会う時間…10日欲しいと思います」と言い頭を下げた。


 その行動に、「あぁ…その間に、討伐戦の準備も終えるだろう。」と言うとサーシャを見て、「ポドリアンが戻ったら話を」と言葉をかけた。


 その言葉にサーシャは頷き、そして…。

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