第15話 『オークプリンス』討伐の真実 上
「…これを…」と手持ちのバックから白いひし形の石をテーブルに置く。
「なんだ…それは?」とアルベルトが手にとりじっくりと見る。
「なにか見えるか?」とクラウト。
その言葉に、「真っ白い石じゃないか」と返す、その言葉を聞くと、アイゼンへと手を向けた。
アルベルトはアイゼンに石を渡す。
受け取ったアイゼンは、その石を手にしてじっくりと見る、その行動を見て、「…なにか、見えますか?」と聞く、その質問に首を横に振り、石をサーシャに渡した。
サーシャも見るが、首を横に振って、クラウトの傍に来て石を渡すと部屋を後にした。
「その中には、多分…ドラゴンがいます」とクラウト。
その言葉に目を細くするアイゼンとアルベルト。
「…おぃ、クソ眼鏡」と言葉にすると、向かいに座っていたケイティが噴き出し、咄嗟に口を押さえた。
そのケイティを一度見てから、「…まぁ…、説明はあるんだろうな…」とアルベルト。
するとケイティがいきなり手を上げる。
その行為に少しだけ驚いたアイゼンが、「なにか?」と言葉をかけた。
すると、立ち上がり
「すみません。もしかして…難しい話をしますか?」と言葉にする。
その言葉に呆気を取られながらアイゼンは、クラウトを見た。
クラウトはメガネのブリッジを上げて、「あぁ、確かに」と言いケイティとジェンスを見て。
「君たちも下で何かを食べさせてもらっていいぞ」と言うと、ケイティは頭を下げて、「アイゼンさん、ごめんなさい。あたしバカだし、こんな難しい場所…ちょっと…だから退席します」と言葉にする。
その向かいのソファーに座っているジェンスも立ち上がり
「お…俺も、入ったばかりだから…ごめんなさいです!」と頭を下げた。
その二人を呆気にとられた表情で見てから大きく笑い
「…あ~、いいよ。はっきり言ってもらった方がこっちもいい。下でチャ子らと一緒に食事をして、疲れを取ってくれ、それに…」と立ち上がるとケイティに手を差し伸べ
「『オークプリンス』討伐。ご苦労様、君たちの働きには、敬服する。」と言葉にする。
大きな手を見て、ケイティは服で手の汗を拭くと、アイゼンの手を握り
「ハイ、こちらも敬服してます」と言葉をかえした。
…ってどんな答え、それ…。
その隣のアリッサがおでこに手を当て目をつぶっていた。
「んじゃ!」と言い部屋を後にするケイティ。
部屋を出る際に…
「あのガキどもめ…、わたしの前で…あんなおいしそうなのを…」と小さく言葉を発していたのに、一同が小さく笑っていた。
ジェンスも出て行くと入れ替わりでサーシャが入って来て、皆に飲み物を出してくれた。
ケイティとジェンスは、その飲み物を持って下に向かったようであった。
「…それじゃ…話の続きを…」とアイゼン。
「ハイ…これは…紅きドラゴンから取りだされた召喚石です」とクラウト。
「ほぉ…それが、噂の召喚石か…」とアルベルトが言い、飲み物に口をつける。
アルベルトの言葉に頷くと、「君たちは、ドラゴンの討伐もしたのか?」とアイゼンが聞いて来た。
アリッサがケイティのいた場所に移動して、サーシャに席をゆずると、サーシャは小さく笑みを見せながら腰を落とした。
その姿を見て。
「僕らは…実際何もしていません…」とアサト。
その言葉を不思議そうな表情で見るアイゼン。
そのアイゼンに向かい。
「僕らは…ただそこにいたんです」と付け加える。
「ほぉ?なんだクソガキ。意味のわからない事をまた言うのか?」とアルベルトが言葉にする。
その言葉に小さく頷き、「意味がわからないかもしれません…でも、事実です。『オークプリンス』の討伐は、どのように伝わっていますか?」とアイゼンに聞く。
「あぁ…私らが聞いた話だと、君たちが討伐したと…」と言うと、「だから見せるんだろう…『オークプリンス』を、チビ狐の手にあると言う事は、そう言う事なんじゃないのか?」とアルベルトが身を乗り出して言葉にした。
その言葉にアサトは頷き、「確かに、『オークプリンス』はセラの手にあります。いつでも呼び出せます。でも…」と言うと顔を上げてニカっと笑みを見せ。
「ぼくは…負けました…」と言葉にした。
その表情を見たアルベルトとアイゼン、そして、サーシャは驚いた表情を見せた。
冷ややかな視線に変わったアルベルトが
「…なら…なぜ、お前らが持っている?」と聞いて来た。
「…僕らは、と言うか、アサトはオークプリンスに負け、死ぬところだった…」とクラウト。
その言葉にサーシャが手で口を押さえてアリッサを見た。
アリッサは、その表情を見て小さく頷く。
アイゼンは目を一層細めた。
「死にかけた…って」とアルベルト。
「ハイ…、想像以上の化け物でした。長太刀が…肩口から入って…胸あたりで止まったきり…動かなくて…でも、プリンスは、表情一つ変えずに…僕にむかってきて…そして…」と言うと再びニカっと笑い。
「負けちゃいました」と言葉にする。
「あぁ?だから…」とアルベルト。
アルベルトの言葉を遮るように
「『オークプリンス』は確かに、狩ったのは我々ではない」とクラウト。
「我々ではないとは?」とアイゼンが聞く。
その問いに、「ハイ…、最終的に狩ったのは、国王軍です」と言い目を閉じた。
「そうなんだ…」とサーシャ。
「…ッチ」とアルベルト。
「そうか…」と深々とソファーに背中を預けたアイゼンが言葉にする。
ゆっくり目を開き、その3人を見て、「でも…」と言いアサトを見る。
「…1対1で戦ったのはアサトだけで、『オークプリンス』の側近ガックバムを討伐したのも…アサトです」と言うと、アイゼンは小さく笑みを見せ。
「…1対1で負けても、価値のある負け方…か」と言いアサトを見る。
「価値あるかはわかりませんけど…」と言いながら頭を掻いた。
「だけど…」とタイロン。
一同はタイロンを見る。
「あぁ…傍で見ていたが…、ガックバムでもあんなにきれいに斬った…と言うか、その巨体があんなに簡単に、そして、きれいに斬れるとは思わなかった…。…俺も正直…わくわくした」と頷きながら言葉にする。
「私の仲間は、そのガックバムに拉致をされました。私が狩ろうと思っていたんですが…、あんな勝ち方で狩られれば…ホンとにあの時は涙が溢れそうになりました」とアリッサが付け加えた。
「わたしも…遠くから見ていましたが、クラウトさんが言っていた、あれが僕らのリーダーで、アタッカーだと言う言葉に、全身の毛が総立ちになりそうな感じでした」とシスティナが言葉を付け加えた。
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