第10話 システィナのお願いと『デルヘルム』への帰途 下
「魔法…」と言葉にする。
「え?魔法?」とアサト。
その表情を見たシスティナはちょっと驚いた顔をして見ている。
「え?」と再びアサト。
「う…うん…。なんか、驚いた?」と小さく、そして、頬を赤らめて言葉にする。
「お…驚いたって…」とアサトも照れながら言葉にすると、「なんか…違う言葉を予想していた?」と聞いて来た。
「うん…ホンとはね…やめたいって言うかなって…」と頭を掻きながら言葉にする。
その言葉に、クスクスと笑いながら、「あの時…あんなタンカ切って、辞めるって言えないようぉ」と言葉を返してきた。
それもそうだね。
あの戦いの場で、ここまで奮起させたのはシスティナさんだからね。
「うん。それで?魔法って?」とアサトが聞くと、小さく頷き。
「うん。クレアシアン…彼女、わたしが扱う魔法と種類が違った…」と言い少し考えた表情を見せた。
確かに、システィナがタンカを切った時に言った言葉。
『私とは違う魔法を使っている…。それを見て…、感じて…。怖かったです…、でも、わくわくしました。…だって…。まだ、私の知らない…。いえ、今までのこの魔法の使い方を見直せる…。もしかしたら、わたしも、あの女性と同じ魔法を使う事ができるのかも…いえ、あれだけの圧倒的な力を追い求める事もできるのかも…』と言う言葉。
アサトは魔法の事は知らないが、専門のシスティナがわくわくした魔法となれば…彼女の探求心をくすぐった戦い方。
それを考えていたシスティナなんだ。
「わくわくした魔法?」と聞くアサト。
「うん。それなんだけど…彼女は、呪文を唱えていたと思う…『エル・ドラグア』…って」と言い小さく笑みを見せた。
そう言えば…ナガミチの家の2階を崩壊させた時も…『エル・ドラグア』と発していたような…。
アサトは少し俯いて考えた。
システィナが言う、呪文とは…。
「でね…」とシスティナ。
アサトはシスティナを見る。
「もし…なんだけど」と言うと小さく肩を竦めながら、「もしでいいの…アサト君はこのパーティーのリーダーだから…」と言うと、小さく息を吸い吐き出し。
「その魔法の事…知りたい。時間…とっても構わないかな?」と思い切ったように言葉にした。
その言葉を聞いたアサトは…。
「プ…ふふ…ははははは…」と一度噴き出すと、大きく笑い声をあげて。
「なんだ、システィナさん…そんな事なの?」と言葉にした。
その言葉に、ちょっと頬を膨らましてみるシスティナ。
「ごめんごめん…」とアサト。
「なんだ…って言うのは、言い過ぎだよね。僕は構わない…と言うか、それは見つけなきゃ!」と付け加えると、アサトを見て目を丸くするシスティナ。
彼女も別の答えを考えていた…ような表情だった。
「だって…同じ魔法を使う事ができるのかもなんでしょう?」と言いシスティナを見る。
その言葉に頬を赤らめ肩を竦める。
「そんな自信あるなら…クラウトさんにちゃんと言って、なにかいい…推測?を探してもらおうよ」とクラウトのマネを取り入れて言葉にすると、「あは…それ、クラウトさん?」とシスティナ。
「うん…似てないよネ?」と言いながらメガネのブリッジを上げる真似をして見せた。
そのマネに表情を緩めてシスティナが笑い、「うん…そうする」と答えた。
「…で、二人は、何が可笑しいのかな?」と言いながらクラウトが入って来た。
そのクラウトを見て、アサトとシスティナが笑い声を殺しながら肩を揺らした。
「お?アサト!元気になったじゃん!」とケイティが入って来るなりアサトのベッドに座る、その後にジェンスとセラが入って来て、しばらく時間をおいてアリッサとタイロンが入って来た。
彼らは防具を脱いできたようである。
タイロンはピチっとした肌着で、アリッサは普段着に着替えていた。
「お昼食べに戻って来たんだ!」とケイティは言いながら、そばに来たセラをベットに誘う。
ケイティに誘われたセラは、アサトのベッドに腰を掛けた。
アサト自体も順調である事を伝え、システィナの提案をも話しあい、今日の午後にもう一度診察してもらって、医者の許可が出たら翌日にでも、『デルヘルム』への帰途に就く事にした。
システィナの提案は、すでにクラウトが了承と言うか、想定していたと言う事で、『ウルラ』にいる、クラウトがお世話になった神官に聞いてみるとの事であった。
ただ、それを知っていれば教えてもらっているはずなので、すでに分かっていてもいい事ではないかと言う事である。
クラウトの…おなじみの推測では、呪文…彼女が発していた魔法は、言葉で魔法を発している事や、セラの召還の儀を考えれば、セラが唱えている印か何かが関わっていて、その発動に呪文を唱える…のではないかと言う事。
そうなれば…それなりの力が必要なのか、それとも特殊な何かが必要なのではないか…、そこには、『
午後に診察を受けたアサトは、薬の処方と無理をしない事で出発を許された。
翌日には『ゲルヘルム』を出て帰途に就く事にした。
修行は体調が戻り次第に再開することにして、ジェンスの修行にはケイティとアリッサが着きあう事にした。
翌日に出発。
順調に旅は進行して、6日後には『ウルラ』に到着した。
アサトの体調は、いい日もあればよくない日もあり、修行らしい修行は、クラウトの気力回復と体調回復の魔法を使って、1日置きに行った。
システィナがやる気になっているのに寝てられない…そんな気持ちであり、それが当たり前のような気であった。
『ウルラ』に着くとクラウトがお世話になった神官に話を聞くが、クラウトの言う通り、知らないようであり、賢者ならわかるかもと言っていた。
あの時の賢者は、すでに旅立っているようであり、この地方の賢者もどこで信仰を伝えているかわからないと言う事であった。
翌日、再び『デルヘルム』へ向けて出発をした。
7日目の午後には『アルパイン』の村に着き、そこから少し無理をして進んだ。と言うのも訳があった…。
ほどなく進むと、一行の前に幻想的な風景が広がった。
そこは、夏なのに雪が降ったような真っ白の世界である。
カマヌの森が真っ白な花を咲かせていた。
夕焼けの空の色を吸収したような風景は、もはやこの世ではない幻想的な風景であった。
その風景に一同が声を上げる。
その森を進むと、小高い場所に建物が見える。
『バシャラ』の家である。
今夜の宿泊は、この場所…カマヌの森。
久しぶりにあったバシャラとデシャラは、相変わらず格闘の訓練をしている。
夕食を頂き、グンガの事を話したら、デシャラが大喜びであった。
まだ、誘うつもりって事は話してはいなかったが…。
仲間を紹介して、遠征であった事。
オークプリンスの話し、グンガの事、オーガの話し…と言っても『カオス』の事は内緒である。
リベルにドラゴン。
仲間との出会い、足長蜘蛛などの話しで、夜遅くまで楽しい時間を過ごした。
ケイティやアリッサ、ジェンスにセラも笑顔が絶えなかった。
その夜……。
帰って来た…約束通り…仲間を増やして…。
アサトは月夜に照らされている、カマヌの花の向こうにアルベルトやインシュア…そして、チャ子。
アイゼンにサーシャ、グリフやポドリアン。
そして、レニィとテレニア、アルニアの顔を思い出し、小さく笑みを見せた。
…ホンとに無事で帰って来た…。
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