第7話 約束された少女の旅たちと… 上
「アズサは…すごい人だったわ…」と言うと小さく笑みを見せる。
「誰だ!この女!」とケンゾウが柄を握っている手に力を込め、「…誰?…誰?」とユリコがシノブらを見ながら言葉にした。
「…か…かあさんを…殺した…の…?」とシノブが押し殺した言葉を吐き出す。
その言葉にケンゾウとユリコが目を見開き、「シノブ!ババァ…それに乗ってないのか?」とシノブを見て聞いて来た。
その近くでユリコもシノブを見る。
「ウン…それに…ポッセアさんも…」とシノブがクレアシアンを睨みながら返す。
「あぁ?なんだ。あの親父もかぁ?」と言い俯くと、「それで…おんな。ババァと仮にも師匠の親父をどうした…」と、ケンゾウは目に力を込めながら顔を上げてクレアシアンを見た。
「…そうね…」と言い、シノブから視線を動かして一同を見る。
再び、視線をシノブに持って来ると、「死んだわ…」と言い小さく首を傾げる。
「…え…マジで…」とユリコが言葉にすると、引いていた矢に力が無くなり、その場に落とし、隣のケンゾウは、こめかみに大きな青筋を立てはじめる。
冷静に見ているシノブとスクラット、そして、ジリアにグラッシィ、フードを少し上げたリンデル導師の瞳は細くなっている。
「…でも…」と言い、そばにいるエルフらを見ながら、「わたしが殺したわけじゃないわぁ…」と言い、近くにいたエルフの子供の頭を撫で始めた。
「…なら…」と背中の向こうにいるケンゾウが言葉にする。
「ん?…狼よ…狼男・ウルフ族」と言い、ニコニコしているエルフの子供を抱き上げて膝に乗せた。
その子供の母親はただ見ているだけである。
「大丈夫よ…ちゃんと返すからぁ、ちょっと抱かせてぇ」と、そのエルフの母親に微笑みながら言葉をかけた。
「…あなたのおかあさんのお願いで…わたしが…焼いたの…」と言い、倒れている針葉樹の向こう側へと視線を移した。
その視線をシノブが追うように振り返り、辺りを見渡し、再び、クレアシアンへと姿勢を変えた。
一同もシノブと同じ行動をとる。
「とりあえず…ウルフ族は殲滅したわぁ…でも…」と言い、シノブの傍にいるフードのモノを見る。
「あなた達は…これからどうするつもり?」と言い、膝に置いている子供の頬に手を当てる。
「…うむ…」とリンデル導師。
「なんなら…わたしがぁ…」と言葉にした時。
「ナガ…ナガミチさんの意思の名前は!」とシノブが聞いた。
「…あらぁ?」とクレアシアン。
「…その人の名前…教えて!」と強い口調でクレアシアンに聞く。
「…そうねぇ~」と妖艶に微笑み、子供を自分の方に向けてあやし始めながら「…知らないわぁ…」と言葉にした。
その言葉にシノブが立ち上がり、「…なら…伝えて」と言葉にする。
そのシノブを少し驚いた表情で見たクレアシアンは、小さく微笑みながら子供をエルフの母親に返すと立ち上がり、荷台に座っているエルフの間を抜けてシノブの前に立った。
頭一つ小さいシノブは、クレアシアンを見上げる。
シノブの視線を捉えるクレアシアンは、笑みを見せながら「…その眼…アズサにそっくりね」と言葉にした。
「…わたしは…シノブ!わたしは、彼に会う!彼と出会い、この地にいるバンパイアを討伐して…この地をスクラットらに返す!そして…」と言うと、右手をクレアシアンに向け、はじいたように人差し指をその鼻元に突きつけて視線を鋭くすると…。
「あなたを討伐する!」と力強く言葉にした。
「あらぁ」とシノブの言葉に驚いた表情を再び見せ、顎に右手の人指し指をあてると小さく何度か弾いた姿をとりながら、考える素振りをみせて、「…いいわぁ…。あの坊やに伝えてあげる…。シノブがあなたに会いたい、そして、一緒にわたしを討伐したいってね…」と言い、シノブの後ろにいるリンデル導師に視線を向けた。
「…あなたは…この子らをどう導くつもり?もう、あなたはこの子らを守る事しかできない…それが契約。戦力にならないあなたは…?」と言い興味深々の視線を向ける。
その視線をフードの奥で見ながら、「まずは…、エルフらを、ドラゴンの女王が解放した『エルシカ』の街を経て、エルフの街に返す。そして…」と金色の瞳をクレアシアンに向け。
「…フリーカ王国、『モガッディ』で待つ!」と言葉にすると、再び小さく考えるクレアシアン。
「…そう言う事ね。なら…コウエル導師も…」と言いながらリンデル導師の金色に輝く瞳を見た。
その視線に無言で答えるリンデル導師。
少しだけ視線を交わえた二人。
「…まぁ…いいわ。そこにある、古の神殿でしょうぉ?」とクレアシアン。
その問いに頷くリンデル導師。
その行動を見るとシノブを見て、「おねぇさんは、ちゃんと約束は守るわぁ…」と小さく笑みを見せてから、「そう言えば…、シノブちゃんは…処女?」と聞いて来た。
いきなりの問いに頬を赤らめて視線を外す。
「フフフフ…そうなのね。可愛いわぁ…ちなみに…坊やもまだ…女を知らないみたい…」と言い小さく指で印を描くと、ゆっくり浮き始めるクレアシアン。
「二人とも…可愛いわぁ…、それじゃぁ…おねぇ~さん。待ってるわぁ…」と言うと、やんわりとした煙が現れ、その煙に溶け込み、そして、姿を消した。
消えて行ったシノブに「シノブ…」とリンデル導師が言葉をかける。
その場に集まり始めるシノブの仲間達。
「ウン。このパーティは、私がリーダー。でも、かあさん言っていた。私の真の力は、サブアタッカーだって…。」とリンデル導師を見てからスクラットに視線を移した。
「ナガミチさんの意思は、わたしと同じ一子相伝の職業。その人と共に戦ってこそ進化を発揮するって言ってた。」その言葉に、「…アズサとナガミチのように戦えと…」とスクラット。
その言葉に頷くシノブ。
「…だから…わたしは、その人を探す。」と言い、一同を見る。
「妖刀持ちが2人…。あの時の戦いを思い出せば…。…確かに、この組み合わせがいいのかも…」とリンデル導師が言葉にする。
そして、前方にいる3台の馬車をみるとシノブに視線を移し、「まずは、この者らを送り届けよう…ラグールの街。エルフの国へ」と言葉にした。
その言葉にシノブは、荷馬車にいるエルフを見てから、小さく頷いた。
そして…。
…行くわ、ナガミチさんの意思。待っている…そして、待っていて…
…わたしはシノブ、職業、クノイチと言う一子相伝の職業を持つ者…
…そして、かあさん、必ず…わたしは…
見上げた空は、まだ暗く、綿の雪がゆらゆらを舞い降りていた…。
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