第5話ふたりは…

あれからどれくらいの時間が過ぎたのだろう?

はっきりとした別れの言葉はないまま会う事はもちろん、

連絡をとる事すら無くなっていた。


毎日の仕事に追われる毎日を過ごしていた私は、久しぶりに

駅前のたこ焼き屋に立ち寄り先輩と話をした。

「凛、元気ないやん」

「ん?あ、仕事忙しいし…」

「亮大とも会ってないんやろ?」

「そうだね…どれくらいになるかな…」

「あいつ、最近ここにも来なくなったしな」

「まあ、私も来れてなかったけどね」


私は家と職場を行き来する毎日。

彼と出会う前、学生の頃のような毎日を過ごしていた。

たまに職場の人達と食事に出かける事はあっても、毎日ルーティーンのように

変わらない毎日を送っている。

仕事を始めて一年。

ようやく仕事にも慣れ、追われる日々からは解放された。


仕事が早く終わった私は学生の頃のように駅前のたこ焼き屋で時間を過ごしていた。

「お、久しぶりやん涼太」

「おう」「凛。久しぶりやな」

「うん。元気だった?」

突然の再会だった。

気まずいような、ドキドキしているような、なんとも言えないような気持ちを

持ちながらも私達は一緒に時間を過ごした。


「亮大。久しぶりやろ?送ってけよ」

「大丈夫だよ」

「いや、送ってくよ」

「うん」

久しぶりの帰り道。私達は何を話していいのかもわからずただ歩いた。

微妙な距離を保ったまま、ただ歩いていた。


「送ってくれてありがとう」

「あ、うん。」「なあ凛」

「ん?」

私は少しドキドキした。

「俺…」

彼は言葉を詰まらせた。

「俺、やっぱり凛が好きや」

「離れて、会えなくなってよう分かったんや」

「ずっと俺の傍に居ってくれへんか?」

嬉しかった。ただ、ただ嬉しかった。

「私も亮大と一緒に居たい」「ずっと、亮大と一緒に居たい」

「凛。俺と結婚してください」

「はい」



突然の出逢いから2年目の春。

私達は結婚する事を決めた。

同じ年の冬、私達は結婚し今は新しい命の誕生を楽しみに過ごしている。


出会いも、再会も、幸せも

いつものあの場所から始まった。

変わらない日常に出逢いは突然、幸せは突然やってきたのだ。

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いつもの場所から 大田誠翔 @oota-akito

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