第4話すれ違い
初めての出勤の朝彼が迎えに来てくれた。
「おはよう凛」「初出勤やな」
「うん。おはよう」「緊張して…」
「大丈夫?リラックスな」
「うん」
私達は駅に向かって歩いた。
無事初出勤を終えた事を彼に報告する。
≪何とか終わったよ≫
≪お疲れさん≫≪俺はもう少し遅くなりそう≫
≪分かった。先に家帰ってる≫
≪終わったらメール入れる≫
≪うん≫
仕事を終えた彼と一緒にご飯を食べながら今日の出来事を話す。
もちろん私の家で。
今ではそれが当たり前になっていた。
彼を玄関で見送る時は少し寂しかった。
少しずつ仕事にも慣れた。
でも、その分彼と会う時間は減っていった。
歓送迎会や先輩たちとの付き合い、はじめはしょうがないと思いながらも
彼とゆっくりと過ごす時間が無くなっている事に不安を感じるようになっていた。
≪今日もまだ帰れそうにないよ…≫
≪そうか。俺もう終わったし先帰るな≫
≪うん…ごめん≫
そんなすれ違いの日々が続いた。
久しぶりの彼との休日。
ゆっくりと時間が流れていく。
「なんか変わった?」
「えっ、いつもと一緒だよ」
「感じ変わった気がした」「今からどっか行く?」
「ゆっくりしたいかな…」
久しぶりに一緒に居るのになんだかお互いぎこちなくて距離を感じずにはいられなかった。
その日は一日ただ一緒に過ごした。ホントにただ一緒に…
また相変わらずの忙しい日々が始まり彼とはすれ違ってばかりだった。
≪凛。今日は終わりそうか?≫
≪もうちょっとかな≫
≪先帰るで≫
私は返事すら出来ずにいた。
やっと仕事を任されるようになりそれだけでいっぱいになっていた。
そうやって過ごしている間に彼も仕事が忙しくなり、話しをする事もないままただ時間だけが過ぎていった。
お互いの仕事も落ち着き以前のように過ごせるようになったのに、私達は出来てしまった隙間を埋められずにいた。
「凛。俺と居て楽しいか?」
彼からの突然の言葉。
私は返事が出来なかった。
その先に続く言葉を私は聞きたくなかった。
お互い黙ったまま、ただ時間だけが流れた。
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