第2話ふたり
しばらく話してそんな毎日を過ごしながら、今日あった出来事やお互いの話をするようになった。
バイトの帰り道、周りの景色さえ違うように思えていた。
ある日、私は体調を崩し学校もバイトも休んだ。
数日は動けず家の中でただ布団にくるまりじっとしていた。
夜になりチャイムの音が聞こえる。
ゆっくりと玄関までいきのぞいてみると、そこには彼の姿が見えたのだ。
私は急いでドアを開けた。
ボロボロの格好をしているのも忘れていた。
「どうしたんですか?」
「体調崩してるって聞いて」「遅くなってごめん。これ」
彼は飲み物や食べ物、色んなものを買い込んで会いに来てくれたのだ。
「ちゃんと食べてるか?」「俺なんか作ろっか?」
「大丈夫です。だいぶ良くなったし」
「とりあえず、あったかいもんでも飲み」
彼は買ってきたココアと小さな紙きれをを差し
「これ、俺の連絡先」
「えっ…」
「なんかあったらちゃんと連絡しておいで」「そしたらこんなに遅くならんですむやん」「心配したんやで」
「はい」
私は顔を赤くしながらうなづいた。
体調も戻りいつものようにルーティーンをこなしていく。
ただ、帰り道だけは彼との距離が近くなったような気がしていた。
ある日突然彼からのメール。
≪明日はバイト?もしバイトなかったら学校の帰り会わへん?≫
私は驚いた。
≪4時くらいになるかな?いいの?≫
≪ええよ。改札前で待ってる≫
彼に会うのはバイトの帰りのたこ焼き屋。それ以外で彼と待ち合わせなんて…
夜にメールのやり取りや、電話をするようにはなっていたけど、待ち合わせをして2人で会う約束をするのは初めてだった。
次の日、学校が終わり駅に着き改札を出るとそこには彼の姿があった。
「おかえり」
「うん。ただいま」
「今から買い物付き合って」
「買い物?」
「ちょっと選んで欲しい物あってさ」
「私でいいんですか?」
「いや、凛ちゃんでないとあかんねん」
「あっ、はい」
彼は私の手を握り歩きだした。
彼に触れる事が始めてだった私はドキドキして苦しいくらいだった。
繋いだ手は離さないまましばらく話もしないまま歩いていた。
「着いた。ここで選んで欲しんやけどええかな?」
「はい。ここですか?」
着いたのは小さいけどとても素敵なアクセサリーショップだった。
誰かにプレゼントするんだと思いながら少し寂しい気持ちになっていた。
店内に入り彼と話をしながらプレゼントを選んだ。
「凛ちゃんが欲しいって思うものでいええよ」「凛ちゃんの直感で」
「私の好みでいいんですか?」
「ええよ。」
私は可愛いけどちょっと個性的なネックレスを選んだ。
店を出た私達は当てもなくしばらく歩いていた。
「ご飯食べよか?」
「お腹空きましたね」
「とりあえず、ファミレスでもええかな?」
「もちろんです。ゆっくり出来るし好きですよ」
「良かった。俺、堅苦しいのとかオシャレな店苦手やねん」
「私もです」
近くのファミレスに入りご飯を食べながらいつものように会話をして過ごした。
「今日も健店出てるけど、今日は寄らんと送っていく」
「寄らなくていいんですか?」
「毎日あいつの顔見に行ってる訳やないしな」
ファミレスを出ていつもの帰り道、彼はどんどん口数が減りただ並んで歩いている時時間が長くなっていた。
家の前の公園まで来た時、急に彼は立ち止った。
「どうしたんですか?」
「あのさ、凛ちゃん」
「俺凛ちゃんの事が好きや。俺と付き合ってくれへん?」
そう言いながら彼はさっき私が選んだプレゼントを差し出した。
「これ、私にですか?」
「そう。だから選んで欲しかってん」「受け取ってくれるか?」
「もちろんです。嬉しいです」
私はびっくりと、嬉しさと、色んな感情が入り交じって零れる涙を止める事が出来なかった。
「でさ、俺と付き合ってくれる?」
「はい。私も亮大さんが好きです」
彼は私を優しく抱き寄せキスをした。
彼のキスはとても優しいキスだった。
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